人生の目標や夢が変わるきっかけにはどんなものがあるでしょうか。
真庭市には、移住をきっかけに自分自身の「書きたいもの」に変化が起きたライターの男性がいます。
大阪出身ライターが真庭にやってきた理由
真庭市の地域おこし協力隊の元隊員で、真庭市交流定住センターに勤めているライターの甲田智之さん(35)。
市の移住定住ポータルサイトで、暮らしの魅力を伝えるインタビュー記事などを執筆しています。
生まれも育ちも大阪の甲田さん。
京都の大学を卒業し、広告代理店や宝飾卸の会社などに勤めたあと、地元大阪で夢だったライターとして独立し、主に自分史の代筆などを手掛けていました。
なぜ真庭市にやってきたのかというと…
(甲田智之さん)
「婚活です(笑)。最初に真庭に来たのは」
29歳のとき、湯原温泉の旅館で開かれた婚活パーティーに知人の紹介で参加し、そこで出会った女性と意気投合。31歳で結婚し、妻の実家がある真庭市に移り住みました。
(甲田智之さん)
「奥さんからつながった地元の人たちがすごく良くしてくれて、来るときにはある程度いろんな人たちつながっていたので。移住という感覚ではなくて、普通の引っ越しみたいな」
人と人がつながっていく
市内のイベントなどに一緒に出かけると、妻の知り合いを通してどんどん人の輪が広がっていったという甲田さん。
店を訪れても、客と店主の関係ではなく、人と人との付き合いをみんながしてくれることに驚いたそうです。
(甲田智之さん)
「知っている人じゃなくてもつながっていく感じがありました。あれは本当に不思議な感覚で、人と人がどんどんつながっていく場所だなと」
そんな真庭の人々と交流を深める中で、甲田さんがライターとして「書きたいもの」には、ある変化が起きました。
(甲田智之さん)
「人生っていうのは何か大きな出来事があってドラマチックだと思っていたんですけど、そういう切り口ではないドラマチックさもあるんだなと思って」
何気ない生活から垣間見えるストーリー
甲田さんは、元々エンタメ小説の作家を夢見ていました。
大阪時代に自分史の代筆を手掛けていたのは、偉業や功績などのいわゆる「すごいこと」に人の魅力を感じていたからです。
しかし、真庭で取材する人たちの多くは、偉業や功績ではなく、祭りや地名の由来など、自分たちが住む地域のことを、あたかも自分自身のことにように話していたそうです。甲田さんはそんな真庭の人たちを見て「土地と人の結びつき」を強く感じました。そして次第に、何気ない生活から垣間見える、その人にしかないストーリーを文字にしたいと考えるようになりました。
(甲田智之さん)
「その人の生活や、その人の考えの背景にある、それを育んだ土地柄とか、そういうものを取材して文章にして、伝えていきたいなと」
地域の文化財から物語を作る
その取組みの1つが、地域の文化財とそこに関わる人たちの物語を伝えていくことです。
かつての勝山藩主の別邸を題材にした小説「三浦邸の物語」では、建物や家主たちが歩んできた歴史を紹介しながら、建物を今も守り続けている地元の人たちにもスポットを当てています。その文章には、甲田さんが伝えたいメッセージが込められています。
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(以下、文中より抜粋)
三浦邸という建物を見てほしい、とは思わない。
歴史的な価値があるのは、そこではない。「いまでも三浦邸を守っている人がいる」ということだ。「いまでも義次さんを、殿さま、と呼ぶ人がいる」ということだ。
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移住してきた自分だからこそ見つけられる地域の物語。甲田さんは、それを魅力だと気付いていない地元の人たちにも、もっと知ってもらいたいと考えています。
(甲田さん)
「暮らしを垣間見たり触れたり、話を聞いたりするだけで、あったかくなるんですよね。
そんな小さくてキラキラしたものをすくいとっていきたいと思っています」
「三浦邸の物語」など甲田さんが執筆した記事は、真庭市の移住定住ポータルサイト「COCO真庭」で見ることができます。