香川県ネット・ゲーム依存症対策条例、通称「ゲーム条例」が施行されてから2022年4月で丸2年が経ちました。
「ゲームは1日60分まで」という時間の目安が盛り込まれ、全国的な注目を集めたこの条例。施行から2年の「見直し」の行方は……。
検討の開始を促す陳情は賛成多数で「不採択」
2021年11月、高松市のITエンジニアの男性2人がゲーム条例の内容について再検討するよう香川県議会に陳情しました。
条例は県議会が議員提案し、2020年4月、全国で初めて施行されました。「子どものゲームの利用時間を1日60分まで」とする家庭でのルールづくりの目安や不透明な制定過程に疑問の声が上がっています。
この条例には、「付則」として「施行後2年を目途として、施行状況等を勘案し、検討が加えられる」という、いわゆる「見直し条項」があります。
陳情は、施行2年を前に議会に検討の開始を促すものでしたが、採決の結果、賛成多数で「不採択」となりました。
２月定例県議会で「ネット・ゲーム依存対策」関連の質問なし
年が変わって2022年2月、県は2022年度の一般会計当初予算案に「ネット・ゲーム依存対策事業費」として1072万円を計上しました。
当初予算案を審議する2月定例県議会。本会議での代表質問や一般質問、常任委員会の場で、ネット・ゲーム依存対策に関する質問は全く出ませんでした。
そして、4月、県議会議長が交代。高城宗幸新議長に、施行から2年が経った条例の見直しについて質問しました。
（香川県議会／高城宗幸 議長）
「今現在としては見直す必要はないのかなと感じております」
（新議長と副議長の就任会見：記者の質問）
「条例を作ったから終わりということではないですよね？」
（香川県議会／高城宗幸 議長）
「少なくともいい条例だと思っていますから、これからも教育委員会等に働きかけながらどういうふうに前に進めていくか考えていきたいとは思ってます」
地方自治に詳しい専門家は「自ら『たが』をはめたはずなのに」
条例の付則に「施行後2年を目途に検討を加える」とあるのに、いまだ具体的な動きは見えず……。地方自治に詳しい香川大学法学部の三野靖教授に聞きました。
Q.（付則の）効力というのは特にはないんですか？
（香川大学 法学部／三野靖 教授）
「いや、それはありますよ。条例に書いてあるから、それは重いですよ。ただ、それは絶対的な拘束力があるかというと、一種の努力義務的なものだろうと思います。ただし、これは議会提案条例です。『見直し条項』を自ら入れたんですね、議会は。ということは、自らに『たが』をはめたはずなのに、いつの間にかその『たが』を外しちゃってる。必ず見直さなきゃいけないというものではないです。ただし、見直し作業が必要かどうかぐらいは検討しなきゃいけないんじゃないでしょうかね」
「5つの視点」で条例の見直し 神奈川県の取り組み
この「条例の見直し」について、先進的な取り組みを行っているのが神奈川県です。
神奈川県では、条例のうち県民の権利を制限、または義務を課すものなどは「見直し規程」を設けて、定期的な見直しを義務付けています。
見直しは条例を所管する部局がそれぞれ行いますが、「今でも必要な条例か」「今の内容で課題が解決できるか」「効率的と言えるか」「県政の基本的な方針に適合しているか」「憲法や法令に抵触していないか」という「5つの視点」を定めています。
そして、見直しの結果、廃止や改正、運用の改善が必要かどうかを判断。検討の結果はホームページで公表しています。
2021年度は、8つの条例について見直しの検討を行い、このうち3つについて改正や運用の改善を検討することになりました。
（香川大学 法学部／三野靖 教授）
「仮に2年前に香川県でゲーム条例を作る必要性が仮にあったとしても、では2年間でどう変わっているのか（神奈川県のように）きちんと視点をメルクマール（指標）として出してやっておくということは、それはやっぱり条例が恣意（しい）的に運用されない」
検討結果の公表について香川県の浜田知事は
（知事会見：記者の質問）
「施行状況検討の結果を県民に対して公表していくという考えはありますか？」
（香川県／浜田恵造 知事）
「神奈川の事例というのを詳しく承知しておりませんので、今後、また拝見してみたいと思いますけども、今回は条例の中に規定もあるということも踏まえて、ご理解をいただけるような対応で進めていくことになろうかと思います」
KSBでは、ゲーム条例の施行から2年間の成果や課題を検証する特別番組を、28日午前10時30分から放送します。
