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【判決詳報】香川県のゲーム条例は「違憲とは言えない」高松地裁 原告がコメント「大変残念です」

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 子どものネットやゲームの依存対策として利用時間の目安などを定めた香川県の条例は「憲法違反だ」として高松市出身の大学生らが県に損害賠償を求めた裁判です。高松地裁は「条例は憲法には反していない」として原告の訴えを退ける判決を言い渡しました。

「ゲームは1日60分まで」…当時の高校生が提訴

 この裁判は、香川県議会が制定し、2020年4月に全国で初めて施行された香川県ネット・ゲーム依存症対策条例、通称「ゲーム条例」を巡るものです。

 条例は「子どものゲームの利用は1日60分まで」などを目安として家庭でルールを作り、保護者に守らせる努力義務を課しています。罰則はありません。

 2020年9月、当時、高松市の高校3年生だった渉さん(19)と母親が「条例は憲法違反」だとして県にあわせて160万円の損害賠償を求め提訴しました。

(訴えを起こした/渉さん[当時高校3年])
「ゲームの時間っていうのは各家庭がしっかりと決めるべきであって、行政が決めるべきではない」

 裁判で原告側は、ネット・ゲーム依存症の定義や時間制限を設けることの「科学的根拠」が不明確であること、条例が渉さんや母親の自己決定権や幸福追求権などの基本的人権を侵害していることなどを主張しました。

 一方、被告の香川県側は「ネットやゲームの使用時間を制限、遮断することが依存の予防や治療の一つの方法であることは専門家によって繰り返し指摘されている」などとして条例の合理性を主張。

 また、「利用時間については家庭内の話し合いの際の目安を定めた努力目標であり、条例は香川県民の利益を何ら侵害していない」として訴えを退けるよう求めていました。

高松地裁「憲法に違反するとは言えない」

(記者リポート)
「裁判では条例制定の根拠があるか、そして、原告側の基本的人権が侵害されたかどうかが争点になっていました。判決は原告側の主張をいずれも認めませんでした」

 30日の判決で、高松地裁の天野智子裁判長は「医学的知見が確立したとは言えないまでも、過度のネット・ゲームの使用が弊害を引き起こす可能性は否定できず、条例が立法手段として相当でないとは言えない」と指摘。

 また、条例は原告らに具体的な権利の制約を課すものではないとし、原告側が主張した家庭でゲームやスマホの利用を自由に決める権利や、eスポーツを楽しむ権利は、趣味や嗜好の問題に留まり、「基本的人権として直接保障の対象とされるものとは言えない」としました。その上で、「憲法に違反すると言うことはできない」として原告の訴えを退けました。

判決を受け、原告と被告がコメント

 この裁判では2022年3月、原告側の代理人弁護士が辞任し、4月に原告が「訴えの取り下げ書」を提出しましたが、県が同意しませんでした。

 原告の渉さんは、体調不良のため30日は出廷できなかったとし、「主張が認められず大変残念です。控訴の有無や内容については関係各所と相談して検討します」とメールでコメントしました。

 また、香川県の浜田知事は「県の主張が認められたものと認識している。引き続き、県民をネット・ゲーム依存から守るという条例の趣旨について一層の理解促進に努めるとともにその対策に積極的に取り組んでまいります」とコメントしています。

 また、香川県の代理人弁護士は取材に対し、「画期的、先駆的な判決であり今後全国で同じような訴訟が起きたときに、一つの大きな指針になるだろう」と話しました。

裁判の意義・判決をどう見る?

 小学6年生の息子と判決を傍聴した女性は――。

(判決を傍聴した小6男子の保護者は―)
「県側がそういうルールを作った、それに反論した高校生がいらっしゃるということで、全国のニュースになったということなので、それまで放置されてたようなゲームの依存症の話とかそういったことが問題視されてるということで、気にかけてはいました」

 また、この条例に反対する香川県弁護士会の会長声明の作成にも携わった弁護士は――。

(香川県弁護士会/馬場基尚 弁護士)
「今の時点でこのような判決が出ることはもっともかなと思うところもありますが、これから10年先、20年先、30年先のことを考えると、新しい文化とか、これから発展させていかなければならないものを、このような形で立法・行政が制約するっていうのは、私はよくない前例を残しているなと。30年先の香川県民がこの条例をどう評価するか長生きして見てみたい」

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