岡山県瀬戸内市の国立ハンセン病療養所長島愛生園の入所者が残した随筆や俳句などを読み継いでいこうという取り組みが行われています。作品からは、喜怒哀楽やユーモアなど入所者の素顔が感じられます。
岡山県奈義町で開かれた「愛生を読む会」です。参加者がもくもくと読んでいるのは、国立ハンセン病療養所長島愛生園の機関紙「愛生」です。
長島愛生園は1930年に開園し翌年から「愛生」を発行、現在840号に及んでいます。冊子には、国の誤った政策により強制隔離されていた入所者や、関係者の随筆、俳句などが紹介されています。
(参加者は―)
「こんな近くの島で、こんな生活がされてきたんだと思うと……」
「何かを残すことは大変なことなんですけど、とても意味があるなと」
2年前に「読む会」を立ち上げた鑓屋翔子さんです。長島愛生園にある喫茶店「さざなみハウス」で店長をしている鑓屋さんは、店に寄贈された「愛生」を読んだとき、入所者の意外な一面に触れたといいます。
(「愛生を読む会」を立ち上げ/鑓屋翔子さん)
「病気のことを自分たちが共感できる言葉で書いているものもあれば、その病気を上手にユニークな言葉に置き替えて、くすっと笑えるようなジョークに置き替えられたり、人間らしいところというか、親近感というか。隔離という言葉から少し離れたような日常があったりするんだなあと」
鑓屋さんは入所者の日常や喜怒哀楽、ユーモアなど、語られることが少ない素顔を後世に伝えたいと考えています。
入所者が詠んだ俳句を紹介します。
(記者)
「『枇杷二つ 盗みし肩に 毛虫這う』。園内にあった枇杷がおいしそうだなと失敬したところ、肩に毛虫がはっていたという、苦笑いしている顔が浮かんできそうです」
その他、職員が書いた入所者の体力づくりに関する文章なども掲載されています。
「読む会」は、長島愛生園の喫茶店「さざなみハウス」や岡山県各地で月に1回ほど開かれています。(問い合わせ先:「さざなみハウス」080-2923-0871)