岡山県瀬戸内市の国立ハンセン病療養所「邑久光明園」で行われていた入所者の遺体の解剖などについて、園の人権擁護委員会が、「重大な人権侵害があった」とする検証結果をまとめました。
邑久光明園では2年前、1938年から1998年にかけて亡くなった入所者の約7割にあたる1123人分の解剖記録が見つかりました。
これを受け外部の有識者や園の関係者、入所者らによる人権擁護委員会が、「遺体の解剖などについて、適切な同意が得られていたかどうか」について検証を行い、報告書をまとめました。
(人権擁護委員会/近藤剛 委員長)
「入所者からの自由な意思に基づく正当な同意を得たとみなすことはできず、邑久光明園で長年にわたって行われた病理解剖や臓器保存は重大な人権侵害であった」
報告書では、邑久光明園で保存されている「解剖の承諾を示す資料」の数や内容を記載しています。
このうち、入所者本人の承諾を示す「剖検願」はわずか7通、遺族の承諾書は164通しか残っておらず、中には本人の署名がないものや遺族以外の知人・友人などが同意したものもありました。
さらに、解剖に携わった臨床検査技師からは「ハンセン病の研究のために亡くなった入所者の遺体を全て解剖するのが園の方針であった」ことや「医師が承諾をせまっていた」ことなどの証言が得られたということです。
また、ハンセン病の化学療法が普及した1950年代以降も、多くの解剖が続けられました。
報告書には、解剖の現場を目撃した入所者の証言も記されています。
(1964年に入所した女性の証言)
「死んでまでもこんなふうに切り刻まれるのかと。ハンセン病患者は人間じゃないという気持ちがした。自分がみじめだった」
(邑久光明園/青木美憲 園長)
「施設を預かる者として、入所者様、亡くなられた入所者様には深くお詫び申し上げたいと思っています」
報告書では再発防止に向けた提言としてさらなる検証の必要性などに言及しています。この報告書は邑久光明園に提出されるほか、園のホームページでも公開される予定です。