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【解説】「なぜ値上げ?」JR四国 経営改善のカギは『非鉄道事業』

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 5月20日、JR四国が全ての路線の運賃を値上げします。初乗り運賃は現在の170円から190円に、高松ー岡山間は今の1550円から1660円になります。定期や特急料金を含めた全体の値上げ率は12.8%です。消費税率の引き上げに伴うものを除くと、JR四国の値上げは1996年以来、27年ぶりです。

JR四国 値上げの背景は?

(JR四国/西牧世博 社長[2022年5月])
「地域の基幹的公共交通機関としての役割を果たし続けていくためには、お客様にもご負担をお願いせざるを得ない」

 2022年5月、値上げの方針を発表した西牧社長は、その理由に「厳しい経営環境に加え、新型コロナの影響で大きな打撃を受けたこと」をあげました。

 JR四国の2020年度の鉄道収入は2019年度のほぼ半分、過去最低の約119億円でした。

 利用者の減少など新型コロナ禍で厳しい経営を強いられましたが、地域の公共交通に詳しい青山学院大学の福井義高教授は、別の要因も指摘します。

(青山学院大学/福井義高 教授)
「コロナ前にもっと値上げしておかないといけなかった。JR四国の運賃は安すぎるわけです」

 福井教授のまとめによると、乗車距離あたりの運賃を四国の鉄道事業者同士で比べた場合、JR四国はことでんや伊予鉄道の6割ほどと大幅に安い運賃でした。

(青山学院大学/福井義高 教授)
「ことでんとか伊予鉄道も経営が苦しいのに、それより安い運賃で、それより輸送密度が低いJR四国がやっているのがそもそも持続可能性がないことをしていたと」

 JR四国の鉄道事業は1987年に国鉄分割民営化で発足して以降、黒字になったことがありません。

 福井教授はその要因の一つに「四国4県の人口」をあげます。2021年10月の四国4県合わせた人口は約366万人。これは福岡県の人口にも及びません。

(JR四国/西牧世博 社長)
「鉄道は大量高速輸送が基本でありまして『大量』でないとなかなか事業としては厳しいところがありまして、四国の場合は人口減少もありますし、高齢化もあって」

 2020年3月、JR四国は経営不振を理由に国土交通省から行政指導を受けました。

 JR四国は、2025年度までの5年間に国から1000億円あまりの支援を受けます。2031年度以降は、国の支援がなくても自立した持続可能な経営が求められています。

 JR四国は、5月20日の値上げによって2023年度から2025年度の3年間の平均で約18億円の増収を見込んでいます。それでも鉄道事業の赤字は避けられない見通しです。

経営改善のカギは「非鉄道」

 鉄道事業の黒字化が見込めない中、JR四国の経営改善のカギを握るのは鉄道以外の事業いわゆる「非鉄道事業」です。

 JR四国が2021年3月に発表した中期経営計画では、2025年度の鉄道収入の目標を新型コロナ禍前とほとんど変わらない数字に設定しました。

 一方、非鉄道事業については「最大限の収益拡大」を掲げ、2025年度には13億円の経常利益を目指しています。

 5月10日に発表した2022年度の連結決算では、経常利益は3800万円でした。

 JR四国が生き残りのために重視するのは「人の数に左右されない分野」です。

(記者リポート)
「JR高松駅に隣接する駅ビルです。2024年3月に開業予定で、建物の形はほとんどできあがっています」

 JR高松駅の北側に建設中の「TAKAMATSU ORNE(オルネ)」は非鉄道事業の目玉となる大型プロジェクトです。

 4階建ての商業棟にスーパーや飲食店、美容院やエステなど約70店を誘致する計画で、年間の売り上げは60億円を見込んでいます。

 また、分譲マンションの開発やホテル事業の拡大も計画しています。

 2023年3月には、商業ビルなど不動産事業との親和性が高いとして、高松市の警備会社「東京セフティ」を買収しました。

(JR四国/西牧世博 社長)
「私どもの事業については多くが人の数に頼っているところがありまして、鉄道事業についてはこれから多くを期待できないものですから、今後は人の数に左右されない分野に注力したいな、ということです」

 5月10日にJR四国が発表した2022年度の連結決算では、物品販売業やホテル業、不動産業などの非鉄道事業が全て増収増益で黒字でした。また、鉄道事業も増収で赤字幅が縮小しました。

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