岡山県倉敷市に住む中学生、動かなくなった「あるもの」を大人顔負けの技術で修理してしまうんです。一体何なんでしょうか、気になりますね。
部屋いっぱいに並んだ、たくさんの時計。
(小幡昂輝さん[中2])
「ドイツ製の時計はやっぱりいいですね、格が違います」
持ち主は倉敷市の中学2年生、小幡昂輝さん。おこづかいなどで買い集めたという中古の機械式時計、その数は……。
(小幡昂輝さん)
「ここに出ている分で80、90ぐらい。全部合わせると150ぐらい」
なぜ、こんなにたくさん集めているかというと……。
(小幡昂輝さん)
「これが最初に直した時計で、最初に掛け時計で、分解清掃した時計。インターネットで独学で直した」
小学4年生の頃、祖父から壊れた古時計を譲り受け、「修理」に目覚めたという昂輝さん。
高知県にある時計店の主人、中村昭弘さんに弟子入りし、2年間通い続けました。
(小幡昂輝さん)
「時計の魅力とか、直し方とか、そういうことを学びました」
どんなに古びていても昂輝さんにとっては、たくさんの「学び」を得られる大切な時計。手入れの様子を見せてもらいました。
カメラマン「(分解して)分かるの?どこに何があったか」
昂輝さん「だいたい暗記というか、覚えています。よし、じゃあガタを……」
記者「ガタというのは?」
昂輝さん「(歯車が)横に揺れているじゃないですか。『穴締め』という、穴を叩いて寄せる(小さくする)という作業」
歯車がガタつかないように軸を差す小さな穴「ほぞ穴」の広がりを調整する作業です。
(小幡昂輝さん)
「(穴の大きさを)手先の感覚で探っていかないといけないので、そこが一番厄介」
分解した部品の汚れを丁寧に落とした後、30分ほどで組み立てが完了。壁に掛けると振り子が調子よく時を刻み始めました。
(小幡昂輝さん)
「いいね。あまりずれてなかったです。達成感を感じるために修理をしている。いろんな時計と関わることができる時計店とか、そういう仕事をしたい」
熱心な昂輝さんの様子は、KSBでも放送しているテレビ朝日の番組「博士ちゃん」で紹介され、大きな反響を呼びました。
2024年1月には、同じ倉敷市に住む95歳の男性から連絡が。
(武鑓啓治さん)
「テレビで見ましてな。古い時計を持っているから、何か役に立つことがないかと思って。お友達になりたい」
骨董品が好きで、江戸時代ごろの古い時計を長年集め続けてきたという武鑓さん。中には珍しい仕掛けのものも。
「実際に触ってもいい」ということで、昂輝さんも興味津々です。年の差は80歳以上ですが、時計の話で何やら盛り上がっている様子。
(小幡昂輝さん)
「古い時計の構造を知る、分かるようになることはやっぱりうれしい」
(武鑓啓治さん)
「想像以上にいい子で将来が楽しみ」
時計が結んだ、意外な縁。春休みには武鑓さんの自宅を訪ねました。
(武鑓啓治さん)
「どうぞ、お入りください」
部屋の中には、江戸時代の「和時計」やヨーロッパの「からくり時計」、中国から入ってきた装飾付きの時計など、めったに見られない貴重なものがずらり。
(小幡昂輝さん)
「僕も見たことないですこんなの。公民館で見たのはほんの一部だったんですね。すごいですね」
音を聞いたり、写真を撮ったり、武鑓さんに許可をもらって時計の構造を心ゆくまで観察しました。
武鑓さん「あんたの(学校の)勉強のじゃまになったらいかんけど。勉強のじゃました言うたら申し訳ないからな」
昂輝さん「いや、毎日時計の部屋に行っているので、そこは問題ないと思います」
武鑓さん「そうかそうか、ハハハ」
デジタル化が進み、存在感が薄れつつある「時計」ですが、多くの人に寄り添い、時を刻み続けてきました。
(武鑓啓治さん)
「貴重な存在ですよ。必要なものがあれば持って帰って研究してもらったらいい。古いものを見ておけば古くて新しいものがまた見つかることがあるから」
(小幡昂輝さん)
「本当にいい機会です、ありがとうございます、本当に」
(武鑓啓治さん)
「また来て。おじいさんは365日お休みだから」