香川県をデザインしたと言われる和田邦坊が今、注目を集めています。創刊75周年の雑誌『暮しの手帖』の最新号に邦坊の特集が掲載されています。
戦後まもなく創刊された広告のない生活雑誌『暮しの手帖』。最新号には8ページにわたり和田邦坊の特集が掲載されています。国内外で活躍している香川県在住の画家・山口一郎さんが邦坊ゆかりの地を旅するという内容です。
山口さんが訪ねたのは、邦坊が店の構えからきつねうどんの油揚げの大きさまでプロデュースしたといわれる「うどん本陣 山田家」。そして、邦坊が和菓子のパッケージのデザインをした「名物かまど」「灸まん」などを扱う老舗の菓子店などです。
(画家/山口一郎さん)
「それぞれのお店の雰囲気を察知して、そこで一番いい方法でやる。それもどれも捨てがたいというのにびっくりしました」
和田邦坊は香川県琴平町出身で大正から昭和にかけ東京で風刺漫画家や小説家として活躍。地元に帰ってからはお菓子のパッケージなど多くのデザインを手掛けました。
香川県庁に残る、邦坊が描いた横幅8mの「讃岐の松」など邦坊ゆかりの場所を旅した山口さんは、13年前に画家の猪熊弦一郎を慕って香川にやって来ました。そして邦坊の絵に出会い、魅力を感じたということです。
(画家/山口一郎さん)
「大胆な線ですね。てっきり邦坊さんは悩まずにのびのびと描いている線に思えたので、やっぱり皆さん悩まれて描いていると聞いて人間なんだなと」
今回掲載された邦坊特集。実は「暮しの手帳」の北川史織編集長が自ら企画したそうです。
(暮しの手帖/北川史織 編集長)
「(絵が)力強くて可愛くてユーモアがあって最近の画家の方にないようなすごく温かみがある良さを感じた。絵は素晴らしいということが一つと、邦坊さんがマルチな方というか、小説を書いて、コピーも作れていろいろな店のブランディングというかプロデュースもした。世代はほんの少し10歳ぐらい違うけど(暮しの手帖創業者)花森安治のことも思い浮かべ、いつか特集してみたいと」
8月7日、高松市の書店では「暮しの手帖」への掲載を記念したイベントも開かれました。邦坊の足跡を訪ねた山口さんと邦坊の作品のほとんどを収蔵している灸まん美術館の学芸員、西谷美紀さんが邦坊の魅力などについて語りました。
定員の20人はすぐに満席に。集まったファンは熱心に聴いたり質問したりしていました。
(高知県からのファンは―)
「作品と人柄」
「(絵が)モダンでデザインされている感じで、こんな人が四国にいたということでびっくりして」
「暮しの手帖に載るという誉れがうれしくて高知から来ました」
(灸まん美術館 学芸員/西谷美紀さん)
「皆さんが知っている歴史ある雑誌に掲載されたということは美術館としてうれしかった。これまでコッコツ積み重ねて来た成果が一つの形になったった」
北川編集長は今回1ページ目に掲載したポスターが素晴らしいと語りました。
(暮しの手帖/北川史織 編集長)
「これこそ今リバイバルで、もう一度香川県の観光ポスターに使ったらどんなにいいかな」
時が経っても色あせず、さらに広がる和田邦坊の魅力。北川編集長はこのポスターを自分の部屋に飾っているそうです。