全国の小学6年生と中学3年生を対象に学力などを調べる「全国学力・学習状況調査」。学校の授業以外で平日1時間以上学習した割合は、岡山県の中学3年生が58.5%で、小学6年生の59.2%を0.7ポイント下回りました。一方、全国平均では中学3年生の方が小学6年生より10ポイントほど高く、香川県でも中学3年生の方が上回っています。
全国的にも珍しい、自宅などでの学習時間の逆転現象。岡山県教育委員会はこの状況をどう分析しているのでしょうか。
岡山県の小学6年生と中学3年生の学習時間に「異変」
「全国学力・学習状況調査」は2012年度からコロナ禍を除き、毎年行われているもので、2024年度は4月18日に行われました。
全国で180万人ほどの小中学生が受けていて、岡山県では約1万5000人の小学6年生と約1万4000人の中学3年生が受けました。
学力調査の教科は国語と算数・数学の2教科です。
岡山県の正答率は小6の国語は全国平均を0.3ポイント上回りましたが、算数は1.4ポイント下回りました。一方で、中3の国語は全国平均を0.9ポイント、数学は0.5ポイント上回りました。
(岡山県教育委員会 義務教育課/苅田直樹 課長)
「調査開始の時には本県非常に厳しい状況にありました。その中で学校現場が授業改善に向けて取り組んできた結果が着実に表れてきたと」
学習状況の調査では気になる点も。
授業以外で平日に1時間以上学習する児童生徒の割合は岡山県で中学3年生が58.5%と全国平均を5ポイント以上下回り、さらに県の小学6年生よりも低くなりました。
この結果について岡山県教委は――。
(岡山県教育委員会 義務教育課/苅田直樹 課長)
「小6と中3どっちが勉強しますかっていうと普通、中3って言うんですね、全国的にも当然そちらの方が多いんですが、なぜか本県の場合には逆転現象。謎になっているところ」
授業以外で平日に1時間以上学習する児童生徒の割合について2017年度からの岡山県の推移を見てみると、新型コロナ禍のため部活動の休止が続いた2021年度を除いて、中学3年生が小学6年生の割合を下回る状況が続いています。
子どもの年齢をたどってみてみると、例えば2019年の小6の時には70%を超えていますが、2022年の中3になると約65%に下がっています。なぜこのようなことが起きるのか、取材を進めると2つの要因が見えてきました。キーワードは「スマホ」と「中学受験」です。
要因に「スマホ」と「中学受験」
(岡山県教育委員会 義務教育課/苅田直樹 課長)
「ひょっとすると効率よく宿題を済ませて、ゲームをしたりYouTubeを見たりなんてことが全くないとは言えないんだろうなと。長時間利用の割合は本県は全国より多い」
平日に4時間以上スマホで動画などを見ている割合は岡山県が19.2%で全国平均を1ポイント上回りました。3時間以上、4時間未満の割合も全国平均を0. 5ポイント上回っています。
市町村によっては小中学校で1人につき1台タブレット端末を導入し、授業で活用していて、自宅に持ち帰りOKとしている学校もあります。県教委は自宅での「使い方」が今後の課題だとしています。
岡山市の学習塾に通う中学3年生に聞いてみると……。
(中学3年生)
「(平日)2~3時間ぐらいゲームしてます」
「動画を見たり友だちとゲームをしたりとか」
「少しだけ。クセがついたらやめられないんで、できるだけ抑えています」
岡山県で6カ所の学習塾を経営する「加藤学習塾」の加藤社長は、小学6年生の「変化」が要因の1つだと言います。
(加藤学習塾/加藤杉文 社長)
「(塾に)在籍している6年生の8割ぐらいが受験。2割が受験ではないという。10年前はそこまでいなかったと思います」
加藤社長は私立の中学校の数が増えていることも理由に挙げています。岡山県では2020年に新たな私立中学校が開校したほか、別の私立中学校1校が共学になるなど受け皿が増えています。
学習塾に通う小6とその保護者は――。
(小学6年生)
「受験するって言ってる子はいる」
(小学6年生の保護者)
「増えてはきているのではないかなと、高校の受験をスルーしたい人もいるのかなと、ちょっと前から思ってましたけど」
街でも聞いてみました。
(中1と小4の母親)
「多いと思います。半分ぐらいは受けるんじゃないかなと思います」
(小6と小3の母親)
「増えてますね。私たちが子どもの時とは考えられないぐらい。ほとんど7割8割ぐらいされるんじゃないですかね。とりあえず受けるだけでもっていう感じで」
(加藤学習塾/加藤杉文 社長)
「首都圏みたいなことにはならないと思いますが、それでも例年どんどん受験に対するお問い合わせとか増えていますので、ますます中学受験は活発になると思います」