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【解説】岡山・倉敷市などが「宿泊税」導入を検討 制度設計のカギは

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 岡山県有数の観光地の一つ「倉敷美観地区」です。コロナ禍が明けて観光客も増加傾向にある中、倉敷市が検討しているのが「宿泊税」の導入です。導入されれば岡山県で初めてとなりますが、その狙いとは?

(松木梨菜リポート)
「倉敷市に訪れる観光客のうち6割以上が倉敷美観地区を訪れています」

 倉敷市の主な観光地の観光客数は、2023年は合計で約461万6000人と前の年より4割近く増えました。宿泊した人は約91万9000人で、こちらは2割以上の増加です。

(倉敷市観光課/佐伯直哉さん)
「コロナ前とほとんど変わりない、それを超える勢いで観光客の方、戻ってきていただいていると認識しています」 

 観光客増加の一方で、トイレの改修など観光地の整備については必ずしも十分とは言えません。

全国12の自治体が宿泊税を導入

 こうした状況で倉敷市が導入を検討しているのが「宿泊税」です。

 「宿泊税」はホテルや旅館などの宿泊施設に泊まるときに課税されるもので、自治体が特定の目的のために課す「法定外目的税」に分類されています。

 総務省のまとめによりますと、2025年4月時点で東京都や大阪府、京都市など12の自治体が導入しています。

 東京都の場合、宿泊料金に応じて1人1泊100円または200円を課税していて、2023年度の税収は約44億円でした。

 大阪府の宿泊税は100~300円で、約25億円の税収、京都市は200~1000円の課税で約52億円の税収がありました。

 これらは観光案内機能の充実や、観光スポットを巡るバスの運行など「観光振興」にかかわる事業に使われました。

倉敷市も導入を検討…反応はさまざま

 倉敷市は、導入の是非や導入した場合の税率について考える検討会を2025年度中に設置する方針です。

(倉敷市観光課/佐伯直哉さん)
「宿泊税の使途については今後検討委員会の中で検討していくことだと思うんですが、倉敷市としては持続可能な観光地域を作っていくために使うことが一番なのかと考えております」

 こうした動きに倉敷美観地区近くのホテルは―

(倉敷国際ホテル/山口勝正 社長)
「美観地区の観光のインフラを整備するような原資にしていただけたらいいのではと思いますし、純粋に観光のお客様がまた来ていただいたときにプラスになる。財源ができることで加速すればそれはありがたいなと思っています」

 導入されると「負担する側」になる宿泊客の反応はさまざまです。

(ビジネス宿泊 神奈川から)
「観光客の方が増えていますので、京都とか観光地行くと苦労していると聞きますので、必要に応じてそういったものを取るっていうのは世界的には当たり前なのかなと思っています」

(観光客 徳島から)
「取られない方がいいかなと思いますね。きれいが守られるならいいかもしれないけど、観光に来るにはちょっとなって感じですね。(宿泊税が)あるのとないのとで迷っていたらない方(都市)に行くかな」

 倉敷市民の意見も分かれています。

(倉敷市民は―)
「使い方がそれ(観光振興)ならいいんかなと思いますけどね。循環している感じがするのでいいなと思います」
「(宿泊税を)取るということは観光客の方に対してもどうなのかなと。減るかもしれないですしね」

宿泊税の導入検討の背景に「税収の減少」

 総務省のまとめでは、「宿泊税」は現在導入している12の自治体に加えて、広島県や松江市など12の自治体が2025年10月から2026年4月にかけて「宿泊税」導入予定です。

 また、24日は香川県の小豆島町・土庄町が宿泊税導入に向けた検討準備会を立ち上げました。

 KSBが岡山・香川の自治体に取材したところ、岡山市や香川県琴平町も「宿泊税」の導入を検討しているということです。

 全国で「宿泊税」導入が検討される背景にあるのが、「高齢化」や「人口減少」による税収の減少です。財政が厳しくなる中で観光振興の事業を進めるための新たな財源として「宿泊税」は期待されています。

専門家「観光客以外の納得感が大切」

 この導入に向けて専門家が「大切」だと訴えるのは、観光客以外の「納得感」です。

(香川大学 経済学部/山崎隆之 教授)
「宿泊税の実態としてどういう人たちから税を徴収するのかっていうことを制度設計の段階では冷静に見極めていただいて。どの人にも便益が得られるような税として組み立てることができればバランスがいいんじゃないかなと思います」

 山崎教授が「使い道」の例にあげるのは、「観光客」だけでなく「ビジネス客」「帰省客」にも恩恵がある移動手段への投入です。

(香川大学 経済学部/山崎隆之 教授)
「駅から空港までシャトルバスの運行にかかわる停留所の整備とか、車体の更新などの一部に宿泊税が補助として使われるような仕組みになっていれば、ある程度目的が観光ではない人も便益を受けられるというような作り方にはできるかなと」

 人口減少が進む中、「観光地」をどう維持して人を呼び込むかは全国的な課題です。

 「宿泊税」導入はその解決に向けた一つの選択肢だと感じますが、導入には使い道の明確化や丁寧な説明が大切だと思います。いずれにしろ「また来たい」と思ってもらう「良い循環」を作れるかが観光地としての生き残りのカギになりそうです。

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