太平洋戦争の末期、太平洋の島国・パラオから命からがら帰還した倉敷市の田邉泉さん、89歳。自らの体験を基にして書いた小説(2019年出版)が日本自費出版文化賞のシルバー特別賞に輝きました。
日本自費出版文化賞は、自費出版に光を当て活性化を促進しようとするもので、今回は、小説部門やエッセー部門など7つの部門に合わせて805点の応募がありました。
田邉さんの小説「命の一升瓶 パラオからの引揚船」は、1944年7月までパラオで生活していた日本人の家族が北九州の門司港へ引き揚げるまでの72日間を描いた作品です。当時8歳だった自身の記憶と亡き父の残した日記を基に執筆しました。
田邉さんの小説は、一次審査と二次審査を通過し72点の入選候補作品に選出。そして、9月1日に最終選考の結果が発表され、入選候補作品の著者の中で最も高齢の人に授与される「シルバー特別賞」を受賞しました。
田邉さんは「最終選考の候補に残っただけでも驚きですが、シルバー特別賞をいただけてとてもうれしいです。父の日記を見ながら書いたので、父と一緒に受賞できたような気持ち。今もパラオから帰還した時の体験について講演していますが、語り継いでいくことが大事だと思うので、この本をもとにしながら『戦争は悪』『平和がいいに決まっている』と話していきたい」とコメントしています。