岡山県吉備中央町の浄水場で有害性が指摘されている有機フッ素化合物・PFASが検出されたと町が公表してから2026年10月で丸3年です。
原因とされた使用済みの活性炭を置いていた地元企業は、大手化学メーカーや町などを相手に公害調停を申請し、9月に受理されました。「加害者」と言える企業が公害調停を申し立てた背景と今後の行方を探りました。
加害者側の企業が公害調停を申し立て
(満栄工業/前田貴広 社長[4月])
「我々中小企業がこの問題に立ち向かっていくときに我々の力だけではどうしようもないという中で今回、この公害調停というのを起こさせていただいております」
2026年4月、活性炭の製造や再生などを手掛ける岡山県吉備中央町の「満栄工業」が岡山県公害審査会に公害調停を申請したことを明らかにしました。
この問題は、2020年から3年間、吉備中央町の円城浄水場から国の暫定目標値を超える有機フッ素化合物・PFASが検出されたものです。
原因の究明を行った有識者委員会は「水源近くの資材置き場に置かれていた使用済みの活性炭が発生源と考えるのが妥当」との見解を示しました。
この使用済みの活性炭を置いていたのが満栄工業で、町から水道水源の切り替え費用など1億円を超える損害賠償を請求されています。
(満栄工業/前田貴広 社長[4月])
「吉備中央町の皆さまに不安な気持ちにさせているということに関して非常に申し訳ない気持ちを持っております。その当時というのは全くPFASの存在というものを知らなかったですし、知らされていなかったというのが現状でして」
満栄工業が公害調停の相手にしたのは、大手化学メーカー「ダイキン工業」です。
問題となった使用済みの活性炭は、ダイキン工業から仲介業者を通じて受け入れたものだと主張。
ダイキン工業はPFASの危険性を認識していたのに告知しなかったとして、町からの請求の一部または全部を負担するよう求めています。
(満栄工業/前田健吾 取締役[19日])
「(資材)置き場に置いたもの(活性炭)に原因がひとつあるというところに関しては弊社も本当に責任の大きな部分を負うべきだというふうには感じております。ただ、その上で製造者責任というところは当然問われるべきだと考えておりますので」
また、吉備中央町なども公害調停の相手にしていて、賠償額などに関する協議を求めています。
専門家「非常にまれなケース」
岡山県公害審査会は9月7日に申請を受理しました。総務省によりますと、PFASを巡る企業間の公害調停は全国で初めてです。
公害調停などの制度に詳しい専門家は、今回の申し立ては珍しいケースだと受け止めています。
(東京都立大学 都市環境学部/奥真美 教授)
「被害者がこの制度を使って紛争解決を求める、そういう手段として使われるのが一般的です。なので今回のように加害企業の側が申請をしたというところが非常にまれなケースです」
公害調停は、公害に関する紛争を迅速かつ適切に解決するための手続きです。
弁護士や専門家らでつくる「調停委員会」が、必要に応じて現地調査や資料の収集を行いながら当事者間の話し合いを進めます。
委員会が調停案を示すこともありますが、必ず合意が成立するわけではありません。
(満栄工業/前田健吾 取締役[19日])
「加害者の立場ではありますけれど、受け取っていた活性炭の使用をどういう使用がされたのかという情報も知らされていなかったという意味では、そこは被害者でもあるというのは率直に感じています」
満栄工業とダイキン工業で異なる見解
(宮川周三リポート)
「公害調停の焦点の一つとなりそうなのが使用済みの活性炭がどこからやってきたのかです。満栄工業とダイキン工業で見解が異なっています」
ダイキン工業は「活性炭が当社由来であることを示す事実は確認されていません。調停は非公開の手続きのためコメントは差し控えます」としています。
(東京都立大学 都市環境学部/奥真美 教授)
「誰がこの活性炭を受け渡したのか、どういう経路をたどって、なぜ処理されないままに、なぜそこに放置していたのか、そのあたりがしっかりと解明されるっていうところが具体的な解決策を見出す上でも重要かなと思います」
住民「被害者がいるんだと何としても主張」
PFAS問題に関する住民団体の代表、小倉博司さんです。
住民たちは「被害者の会」を発足させ、公害調停に参加しようとしています。調停委員会が認めれば当事者として参加できます。
(円城浄水場PFAS問題有志の会/小倉博司 代表[14日])
「被害の実態すら話し合われずに企業間の責任のありようだけが話されたのであれば、それは非常に我々にとってみると残念で仕方がないというふうに思いますので。被害者がいるんだということは何としても主張して、被害実態についてもできれば主張していきたいなというふうに思っています」
問題発覚から丸3年。吉備中央町のPFAS問題は新たな局面を迎えます。