トランプ米大統領は、巨額の対米貿易黒字を計上する欧州への批判を強めている。トランプ氏は2月26日、EU(欧州連合)に対して、25%の関税を課す意向を示した。自動車や農作物など幅広い品目を対象とする予定で、近く発表すると明らかにした。トランプ氏は、EUに対する巨額の貿易赤字を問題視していた。米国が、25%の関税を強行すればEUからの報復措置は必至の情勢。EUは26日、「自由で公正な貿易に対する不当な障壁に対しては、断固として直ちに対応する」と表明した。現在、EUは自動車輸入に10%、米国は2.5%の関税を課している。EUに対する米国の貿易赤字額は、2356億ドル(約35.5兆円)と中国に次いで、2番目となる。
バンス米副大統領は2月14日、ドイツ南部ミュンヘンで開催された安全保障会議における演説で、「欧州の指導者らが民主主義の価値観を損ねている。ソーシャルメディア上のヘイトスピーチや誤情報の規制を試みることは共産主義体制のようだ」と述べ、欧州の首脳らを厳しく批判した。また、トランプ政権で要職に就く実業家のイーロン・マスク氏が、欧州主要国への政権批判を展開し、各国が反発をみせている。マスク氏は去年12月、ショルツ首相を批判。反移民政策を掲げる極右政党、「AfD(ドイツのための選択肢)」の共同代表と今年1月に対談し、2月の総選挙での支持を表明した。マスク氏は、スターマー英首相に対しても、検事総長時代に児童性的虐待事件への対応が不十分だったと批判。英経済紙「フィナンシャル・タイムズ」は、「マスク氏が首相退陣を画策」と報じた。マスク氏が経営する電気自動車メーカー、米テスラの欧州販売が急減している。今年1月、ドイツの販売台数は1227台で、2021年7月以来の低水準となった。フランスは、販売台数が63%減で2022年8月以来の悪化となった。また、英国では、登録台数が初めて中国のEVメーカーのBYDを下回った。
トランプ米大統領は2月27日、メキシコとカナダに対する25%の関税措置を予定通り、3月4日に発動させることを明らかにした。また、トランプ氏は、2月4日に発動した中国に対する10%の追加関税に加え、新たに10%を上乗せした措置を、3月4日に実施すると表明した。トランプ氏は、致死性の高い合成麻薬「フェンタニル」が、カナダとメキシコから米国に流入していることが、関税措置の重要な理由の一つと強調してきた。また、トランプ氏は、「フェンタニル」を含む違法薬物の流入が続いている現状についても、中国が対応を十分に行っていないことを懸念していた。
トランプ氏による関税措置の対象となったカナダでは、国民の間に反米感情が広がっている。カナダ・メキシコへの25%の関税は、2月1日に発表されたが、カナダ・メキシコが国境警備の強化を表明したため、トランプ氏は、関税発動を3月4日に延期していた。その間、カナダ国民にも、米国製品の購入回避や米国旅行をキャンセルするなどの動きがみられ、カナダ・オンタリオ州では米国製の酒類が、無期限に店頭から撤去された。また、2月15日には、カナダ・モントリオールで開催された北米プロアイスホッケー(NHL)4カ国対抗戦の試合で、米国代表がカナダ代表を3-1で下し、敵地での勝利を収めた。試合では、開始から9秒で、3度の乱闘が勃発する大混乱の展開となったことを、仏AFPが報じた。2月20日に行われた決勝では、カナダ代表が米国代表に勝利し、優勝を仕留めた。
★ゲスト:廣瀬陽子(慶應義塾大学教授)、小谷哲男(明海大学教授)、鶴岡路人(慶應義塾大学准教授) ★アンカー:末延吉正(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)