「2週間」と期限を区切っていたトランプ大統領が何故こんなにも早いタイミングで空爆を決断したのか。アメリカ軍による初めてのイラン本土への攻撃に至った背景とは。 ■国民向け演説 「軍事的に大成功」 アメリカ軍による攻撃とみられる映像です。イラン中部、核施設があるイスファハン。画面が赤く光った後… 爆発音が複数回鳴り響きました。 トレードマークの赤い帽子をかぶるトランプ大統領。ホワイトハウスの作戦指令室でアメリカ軍のイラン攻撃を指揮しました。バンス副大統領やルビオ国務長官の姿もあります。 事態が動いたのは、日本時間の午前9時前… (CNN)「速報です。トランプ大統領は先ほどSNSで、アメリカ軍がイランの核施設爆撃に成功したと発表しました」 トランプ大統領は自身のSNSに「イランの3つの核施設への攻撃に成功した」そして大文字で「今こそ平和の時だ!」と投稿しました。 日本時間の午前11時、トランプ大統領がホワイトハウスから国民に向けて演説しました。 (トランプ大統領)「Thank you very much. 先ほど米国軍は、イランの3つの主要な核施設に対し、大規模かつ精密な攻撃を実行した。フォルドゥ、ナタンズ、そしてイスファハンだ。破壊をもたらす計画が進められていたことで誰もがこの施設名を長年耳にしてきたはずだ。我々の目的はイランの核濃縮能力を破壊し、世界最大のテロ支援国家が引き起こす核の脅威を阻止することだった。今夜、今回の攻撃が軍事的成功を収めたと全世界に伝えよう。イランの主要な核濃縮施設は完全かつ徹底的に破壊された。中東の“暴れん坊”イランは直ちに和平を選ぶべきだ。さもなくば、次の攻撃は強力でこっちの手間も楽に済む。」 ■B2爆撃機“バンカーバスター”投下 アメリカが攻撃したのはフォルドゥ、ナタンズ、イスファハンの3カ所の核施設。ニューヨーク・タイムズによれば、アメリカ空軍のB2爆撃機6機がフォルドゥの核施設をバンカーバスター12発で攻撃。そして、ナタンズの核施設にもバンカーバスター2発が落とされました。 さらに、アメリカ海軍の潜水艦が30発のトマホーク巡航ミサイルを発射。ナタンズとイスファハンの核施設を攻撃したといいます。13日にイランへの大規模攻撃を開始し、アメリカに支援を求めていたイスラエルのネタニヤフ首相は…。 (ネタニヤフ首相)「トランプ大統領、おめでとうございます。圧倒的な正義の力でイランの核施設を狙うという大英断は歴史を変えるだろう。トランプ大統領と私はたびたび“力による平和”を唱えてきた。力があってこそ平和が成り立つのだ。今夜アメリカはそれを強大な力で示した。」 ■イラン声明「米軍基地と兵は標的」 これに対し、イランの国営テレビは… (イラン国営テレビ)「イランはこの地域にあるすべてのアメリカ軍基地と、駐留する4~5万人のアメリカ軍関係者を正当な標的とみなしている」 「中の様子はどうなっている?負傷者はいるのか?」 イスラエル軍は、イランから弾道ミサイルの発射を確認したとして、国民にシェルターなどへの避難を呼びかけました。 アメリカによる核施設攻撃への報復として20発以上の弾道ミサイルが発射され、一部がテルアビブや北部のハイファに着弾し被害も出ています。これまでに少なくとも86人がけがをしたといいます。 イランのアラグチ外相は23日にモスクワでプーチン大統領と協議するとしています。 (イラン アラグチ外相)「我々はアメリカ軍による核施設への侵略行為に見舞われました。平和利用目的の核施設に対するアメリカ軍の残忍な侵略行為を最も強い言葉で非難します。」 イランへの攻撃をめぐり、20日、「2週間以内に判断を下す」としていたトランプ大統領。 (トランプ大統領)「彼らに一定の時間を与えている。2週間が最大だろう」 しかし、その次の日には空爆を開始しました。いったい何があったのでしょうか? ■「だまし討ち」 国防総省 元高官が分析 第1次トランプ政権のとき、国防総省で中東政策を担当していた、グラント・ラムリー氏。 (第1次トランプ政権で中東政策を担当 グラント・ラムリー氏)「だまし討ち的な要素もあったのではないかと。トランプ大統領の理想的なシナリオは、この攻撃が圧倒的な成功を収めること。たとえ恒久的でなくとも、イランの核施設を長期的に後退させ、それによって目標が達成されること。そして、イランの報復に対して十分な防御をすることができ、今後、数日間の米兵に対するリスクや犠牲を最小限に抑えることです。トランプ大統領はこの局面で『軍事力こそが唯一の確実な手段』と判断しました。」 さらにラムリー氏は、決断の背景に、側近議員らの後押しがあったと話します。 (第1次トランプ政権で中東政策を担当 グラント・ラムリー氏)「(イランへの攻撃は)支持者からの反発が多くありました。その駆け引きはありましたが、大統領周辺の人々は繰り返し、『彼(トランプ)のイランに対する直感はいつも正しい』と言っていました。彼(トランプ大統領)も自分の決断が支持されると思っていました。トランプ大統領とその政権は(これの攻撃を)『核拡散防止の勝利』として描こうとするでしょう。」 ■放射性物質の拡散懸念 専門家は? 攻撃を受けたフォルドゥの核施設近くでは黒煙が上がっていました。 (撮影者)「フォルドゥ核施設の周辺で唯一みられるのは、防空システムと思われる煙です。」 イスラエル軍の攻撃では破壊できないと言われていたのが、山岳地帯の地下80mから90mにあるとされるフォルドゥのウラン濃縮施設。 アメリカメディアによると攻撃に使われたのは、地中60mまで貫通できる最新鋭のバンカーバスター「GBU57」でした。 アメリカ軍は核施設にこれを12発投下。ニューヨーク・タイムズは政府関係者の話として「初期の被害評価では施設は使用不能になった」と伝えています。 イランの核開発に詳しい一橋大学の秋山教授は… (一橋大学 秋山信将教授)「使えるか使えないかということでいえば、基本的には、中に人が入るとか資材を搬入するとか、あるいは電源が供給できないということになれば、そこは全く使えないので、使用不能にするという意味でいうと、すでにイスラエルの攻撃によって一定程度目標は達成されていたと。アメリカしか持っていない大型のバンカーバスターを使ったというのは非常にその象徴的な意味合いが強いんじゃないかなという気がしますね。」 イランメディアでは、攻撃を受けた3つの施設では、濃縮ウランを事前に別の場所に移していたと報じています。 ■イランに警告 「和平なければ 別標的も」 国連のグテーレス事務総長は声明を発表し、「アメリカに対してさらなる軍事行動を控えるように求め、緊張緩和に向けた外交努力を強化するよう強く促す」「軍事的な解決策はない。前進する唯一の道は外交だ」と訴えました。 日本政府はイランにいる日本人とその家族、合わせて87人を退避させていますが、今も約200人が滞在しているため、石破総理は安全確保に向けた措置を指示しました。 (石破茂総理大臣)「我が国としては、事態を早期に沈静化することが、まずは何よりも重要であると考えております。同時にイランの核開発は阻止されなければなりません。」 Q.今回の米軍の攻撃を支持する? 「これはこれから政府内できちんと議論をいたします」 トランプ大統領はイランに対してこう警告しています。 (トランプ大統領)「イランは和平に応じるか、この8日間を遙かに超える悲劇の2択だ。攻撃目標は今も数多く残っている。早急に和平が実現しなければ、我々は精密さ・スピード・技量をもって別の標的を狙っていく。そのほとんどを数分で排除可能だ」 CNNは、トランプ大統領は今回の攻撃でイラン側が交渉に戻ることを期待していて、追加攻撃は計画されていないと報じました。 イランの最高指導者ハメネイ師について、ニューヨーク・タイムズは21日、後継者候補3人をすでに選出したと伝えています。暗殺による国内の動揺を防ぐ狙いとみられています。 CBSによると、アメリカ政府が21日にイランと接触し、今回の攻撃がアメリカの計画のすべてで、イランの体制変換を図るものではないと伝えたということです。 6月22日『有働Times』より
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