床が低いため乗り降りしやすく、騒音や振動が少ないのが特徴の次世代型の路面電車「LRT」。
岡山市と総社市、JR西日本は、岡山駅と総社駅を結ぶJR吉備線をLRTにする計画を進めていましたが、一旦、中断すると発表しました。
(岡山市/大森雅夫 市長)
「コロナ禍による3者の財政、財務状況を踏まえ、LRT化基本計画策定を中断する」
岡山市と総社市、JR西日本が会見を開き、協議を中断する理由や経緯を説明しました。
利便性の向上に向けたJR吉備線のLRT化について、3者は2018年4月に正式合意し、協議を進めてきました。
試算によると、新しい駅の設置などに掛かる費用は約240億円で、岡山市が約70億円、JR西日本が58億円、総社市が21億円を負担し、残りは国の補助で賄うとしていました。
しかし、新型コロナによる財政の悪化を受け、計画の一時中断について3者で合意しました。
新型コロナ対策費などが財政を圧迫
JR西日本では、2020年4月から12月の売上高は前の年の4割程度に落ち込み、第三四半期までの連結の純利益で1618億円の赤字です。岡山市と総社市も、新型コロナ対策費や税収の減少が財政を圧迫しています。
(総社市/片岡聡一 市長)
「中断もやむなし。LRTまで回らない」
(JR西日本/平島道孝 岡山支社長)
「どのタイミングで協議を再開するか話し合いたい」
JR吉備線の現状は
(記者リポート)
「現在JR吉備線は1時間に1本から2本、ほぼ平行して走る路線バスは、1日に走る便数が少なく、使いづらいのが現状です」
(利用客は―)
「私は車の免許がないので、なんか足が欲しいんですけど」
(住民は―)
「1時間に1本とか2本とかは難しいですよね。生きてるうちに(LRTに)なれば使いたいです」
LRT化の実現に向けては、沿線の12の連合町内会が、高齢者の足の確保や周辺地域の活性化のために早期実現を岡山市に要望してきました。
(西辛川町内会[岡山市]/二嶋崇夫 会長)
「我慢できるところは我慢して、将来的に止まるわけではないので、もうちょっと先を楽しみにしている」
今回の中断で周辺地域に新たな課題が浮かびました。
(西辛川町内会[岡山市]/二嶋崇夫 会長)
「高齢者の足の確保が一番。できれば、高齢者が電話すればそこにお願いするデマンドタクシーのようなものの負担を市がやっていただくとか」
そもそもLRT化構想とは?
新型コロナによる財政難で中断となったLRT化構想について改めて説明します。
現在ある10の駅に加え、新しい駅を8カ所設置し、運行本数を増やすことで利用者の利便性の向上を図ろうとしていました。
3者は2018年4月に正式合意し、約10年後の実現を目指して協議してきました。
そして2020年3月までに、新しい駅の場所などを盛り込んだ「基本計画」をまとめる予定でしたが、新型コロナにより対面協議ができなかったことなどから策定が遅れていました。
3者は新型コロナ終息後の協議の再開に前向きな姿勢を示していますが、具体的な時期は見通せていません。
実現が大幅に遅れることが予想されるJR吉備線のLRT化、協議の再開が待たれます。