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【特集】なぜ技能実習生への暴力は起こるのか 原因と防止策は 岡山市・技能実習生暴行問題

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 技能実習生への暴力について考えます。
 岡山市の建設会社で働いていたベトナム人技能実習生の男性が、職場の日本人従業員から2年間にわたって暴行を受けたと訴えています。暴力はなぜ起きたのか、技能実習生を暴力から守るには何が必要なのかを考えます。

 1月、ベトナム人技能実習生の男性が動画を公開し、職場で暴力を受けたと訴えました。

 動画には、車の荷台に上がっているベトナム人技能実習生の男性と、ほうきを持っている日本人の従業員の姿が撮影されていました。

 男性は2019年10月に岡山市の建設会社で働き始め、暴行は1カ月ほど経った頃に始まり約2年間続いたそうです。現在、男性は広島県福山市の労働組合に保護されています。

(ベトナム人技能実習生の男性)
「仕事中はどんなことも早くしないと怒られるし、物を投げつけられることもありました。指示が分からなくて聞き返しても怒られるので、仕事をすることにとてもストレスを感じていました」

 2020年11月、男性は胸を蹴られて肋骨を3本折る大けがを負いました。意を決して男性は暴力を振るわれたことを監理団体に伝え、「会社を変えてほしい」と頼みました。しかし、聞き入れてもらえなかったということです。

(ベトナム人技能実習生の男性)
「監理団体に相談してしばらくすると、また暴力を振るわれるようになりました」

 技能実習制度では、技能実習生と受け入れ企業の間には、仲介役として、送り出し機関と監理団体が存在します。

 ベトナムから技能実習生として来日するには、日本円で70万円から100万円ほどの「手数料」を、送り出し機関に支払う必要があります。

 男性も約100万円を借金して日本にやって来ていました。そのため、仕事がなくなり借金が返せなくなるのを恐れ、暴力を振るわれても我慢し続けていたということです。

 本来、こうした技能実習生を守るのは監理団体の役割です。あっせんした技能実習生が企業で働き出すと、監理団体には「企業が適正な技能実習を行っているかどうか監査と指導を行い、技能実習生を保護する責務がある」とされています。

(福山ユニオンたんぽぽ/武藤貢 執行委員長)
「ケアをすることが監理団体の仕事なので、暴力も訴えている、去年。その後きちっとしたケアをすれば、十分にこのことは防げた。そういう意味で言うと、暴力の加害責任は会社側にあるが、(監理団体に)監理責任と保護責任は問われる」

 技能実習生が職場で暴行を受けても、監理団体が十分な対応をしないケースは少なくありません。

 2019年12月に神奈川県で撮影された動画には、建設会社で働いていた当時技能実習生だったベトナム人男性が、職場の日本人従業員に引きずられている姿が――。

 男性は職場で暴行を受けていることを監理団体に相談しました。しかし、監理団体が誠実な対応を取ることはなかったそうです。

(ベトナム人男性)
「仕事中に殴られ、休憩時間には仕事で使う接着剤を髪の毛にかけられたり、遊び道具のように扱われました」
Q.そういうことをされた時は、どんな気持ちでいましたか?
「絶望しました」

 男性は暴力に耐えきれず職場から逃げ出し、行き場を失くしたベトナム人の保護を行っているNPO法人「日越ともいき支援会」に保護を求めました。

 日越ともいき支援会でこれまでに保護した700人を超えるベトナム人のうち、約70人が職場で暴力を振るわれた経験があります。

(日越ともいき支援会/吉水慈豊 代表理事)
「暴行されていることを聞くと、日本人として恥ずかしいという気持ちと、腹が立つという気持ちが起きます。技能実習生が日本語が話せなかったり、正しいコミュニケーションが取れなかったりすることで(暴行が)エスカレートしてしまうということが起こっています」

 技能実習生を暴力から守るにはどうすればいいのでしょうか。

 吉水さんは、「企業」と「監理団体」に対して外国人を雇うための適切な知識があるかどうか、現在よりも厳しい審査を設けるべきだと考えています。

(日越ともいき支援会/吉水慈豊 代表理事)
「入管の方も受け入れ企業が(適切な)会社かどうかをきちっと審査をすることが、まずは必要なのではないかなと思います。監理団体も必ず毎年(運転)免許の更新みたいに2時間講習をちゃんと受けて、ルールを守れるかどうかを見極めるシステムを整えることが必要だと思っていますね」

 一方、技能実習生の問題に詳しい専門家は「悪しき伝統」と呼べるような、職場の体質を変える必要があると指摘します。

(神戸大学大学院国際協力研究科/斉藤善久 准教授)
「日本って職人の世界はある程度厳しくてもしょうがないとか、口で言ってわからない場合には暴力を使ってもいいとか、大きな声を出してもいいということを、前提としてみんなある程度は思い込んでいるところがあると思うんですよね。ところがそういうのは外国の人から見ると、実習生たちから見ると異常です。国際的に全然通用しないことをわかる必要がありますよね」

 また、技能実習生を受け入れる前の審査だけでなく、働き出してからの監査も厳しくすべきだと斉藤准教授は指摘します。ただし、実際に行うのは難しいとも考えています。

(神戸大学大学院国際協力研究科/斉藤善久 准教授)
「日本の労働行政とか労働監督行政自体が、日本人に対しても十分には機能してないというのが現状だと思います。ましてや外国人の人たちを今の日本の労働行政がサポートできるかというとかなり悲観的です」

 岡山市の建設会社で暴行を受けたベトナム人技能実習生の男性は、妻と子どもをベトナムに残して日本にやってきました。暴力を受けたことは家族には話していません。

(ベトナム人技能実習生の男性)
「家族が知ったら帰ってきてと言うと思います。でも、まだ借金もあるので帰れません。日本に来る前は、日本人は真面目で優しくていい人ばかりだと思っていました。でも会社で暴力を振るわれて日本人に対してのイメージが変わりました」

 技能実習生を暴力から守るには制度を変えるだけではなく、社会の根本的な部分を改める必要があるのかもしれません。

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