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【解説】全国最後の導入 香川県のドクターヘリ運用開始へ 見えた期待と課題

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 今回は「ドクターヘリ」について解説します。
 全国の状況を見てみると3月31日に東京都が導入したことで、香川県以外の46都道府県ではすでにドクターヘリが運用されています。そんな香川県でも4月18日に運用が始まります。全国最後の運用開始に向けて訓練も行われています。

香川県のドクターヘリ運用開始へ 訓練も

 この日、小豆島にやってきたのは香川県が導入予定のドクターヘリ。

 乗っているのは香川大学医学部付属病院の医師と看護師です。

(松木梨菜リポート)
「小豆島の池田港です。こちらでは新生児用の保育器を運ぶことができるのか確認しています」

 訓練には小豆島中央病院の医師や看護師、地元の消防なども参加しました。

(香川大学医学部付属病院 救命救急センター/切詰和孝 助教)
「予定よりも早い段階で出てきて(生まれて)呼吸状態が安定していないですとか、そういう未熟児さんだったりとか、機能が備わってない患者さんを連れて行くのを想定していますね」

 訓練では、小豆島中央病院で実際に使っている保育器を載せようとしますが、機内は狭く、なかなかうまくいきません。さまざまな機器の位置を調整して、なんとか載せることができました。

 ドクターヘリには救急医療に必要な機器や医薬品が装備されていて、専門の医師と看護師が搭乗します。

(小豆島中央病院 小児科/新居広一郎 医長)
「新生児の搬送は成人の搬送と異なって、保育器であったり、特殊な人工呼吸器やモニタリングシステムを必要としていることと、専門医の同乗が必要だということで、重要な訓練が出来ているのではないか」

(香川大学医学部付属病院 救命救急センター/切詰和孝 助教)
「保育器の大きさとか仕様が、全然各病院違うんですね。持っていらっしゃる病院にそれぞれ行って、載せ方を協議して決めて、皆さんと共有してやっていくって感じですかね」

全国で最後の導入となった理由は?

 全国で最後の導入となった香川県。その理由の1つが香川が47都道府県で最も「コンパクト」だということです。

 2006年、香川県は救急車の出動要請から患者を病院に運ぶまでの時間が平均で25.2分と全国で最速でした(※香川県調べ)。しかし、その後、この時間は長くなる傾向で2020年には36.7分と全国12位に。

 県によると患者の高齢化により現場での意思の疎通などに時間がかかるようになったということです。

 また、多くの離島がある香川県ではこれまで島から救急患者を搬送する場合、県の「防災ヘリ」を出動させていました。

 この「防災ヘリ」の出動回数は年々増加傾向です。2013年度には54回でしたが、2020年度には99回とほぼ2倍になりました。

(香川県 医務国保課/小松裕宜さん)
「本来の訓練時間とかの確保にも支障をきたすような状況になっておりますので、導入を検討するに至ったところです」

 県はドクターヘリの導入に向けて2019年に検討委員会を立ち上げ、県内の医療機関や消防などと協議を重ねてきました。2020年1月に委員会で「導入が必要」との報告書がまとまり、14日まで各所と準備を進めてきました。

 香川県のドクターヘリは香川大学医学部付属病院と香川県立中央病院を基地病院として運用します。

 ドクターヘリは1週間交代でそれぞれの病院にスタンバイします。運航時間は、原則として午前8時半から午後5時半または日没まで。「消防からの要請」を受けて出動します。

 運航業務は「四国航空」に委託。初年度の運航事業費として県は約2億4450万円を計上しています。

ドクターヘリ導入への「期待」は?

(香川県立中央病院 救命救急センター/佐々木和浩 部長)
「端(県境)からだと1時間ぐらいかかったんですよね、陸路で、救急車で。それが10分、15分以内で必ずここに連れてこられるのも一つのメリットだと思いますし。現場で医療者が医療介入ができると」

(香川大学医学部付属病院 救命救急センター/黒田泰弘 センター長)
「救命センターで行われている救急外来の治療がその場で行えるわけなんです。死なないようにするんではなくて、死なないようにするのは当たり前で、大事なことは元の生活に戻れるっていうのが大事ですよね」

 ドクターヘリ導入でどれほど変わるのか。

 まず「搬送時間の短縮」が期待されていて、救急要請から治療開始まで平均で14分とされています。これは救急車で搬送した場合と比べて27.2分短いとされています。

 また、救急車と比べて亡くなる人を39%、重症・後遺症も13%減らせると推計されています。

 香川県は、ドクターヘリが1年間に243件出動すると見込んでいて、導入によって命を救われるは11人、後遺症などが軽減される患者は17人と推計しています。

課題は「人の確保」…『オール香川』で解決なるか

 導入への期待がある一方で課題もあります。それがフライトドクターの確保です。

 ドクターヘリの運用に向けて香川県は独自にフライトドクターに「認定証」を渡しています。

(香川県 医務国保課/小松裕宜さん)
「香川大学医学部付属病院と香川県立中央病院がそれぞれフライトドクターの選考基準を設けておりまして」

 例えば医師として5年以上の臨床経験があることや国の研修プログラムを受けていること、家族の同意があることなどが選考基準で、病院の推薦を受けて県が任命します。

 香川県によると現時点で認定したフライトドクターは香川大学病院に5人、県立中央病院に7人。12人は救急の専門医か経験者です。

(香川大学医学部付属病院 救命救急センター/黒田泰弘 センター長)
「課題は『人』のことだと思います。皆さん日々の業務に加えてこれ(ドクターヘリ搭乗)が加わるわけなんで、負担というか、『オール香川』ですることで、そういうのを1個1個問題点を浮き彫りにして、情報共有して解決していけるのではないかと思いますね」

 今後、フライトドクターに関しては県内の他の医療機関からも募りたいとしています。

(香川県立中央病院 救命救急センター/佐々木和浩 部長)
「ある程度、外傷の患者さんの(治療)経験があるドクター、ナース、それからショックや脳卒中の初期治療が理解できているナース、ドクターが選考基準になってくるんですけれども、将来的には基地病院以外のドクターやナースにも参加していただいて、全県でドクターヘリ事業を運用していきたいと思っています」

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