若者と選挙について考えます。若者の投票率が低いといわれる中、岡山市の大学では学生たちに選挙制度について知ってもらおうと「期末レポート」を争点に模擬選挙を行いました。この取り組みを通して学生たちが学んだこととは?
また、若者の投票率が下がると、将来、若者の負担が増えるかもしれない……と試算する専門家もいます。
「期末レポート」を争点に大学生が模擬選挙
前回、2019年の参院選で全国の年代別の投票率を見ると、最も高い60代では60%を超えていますが、10代から30代では30%台にとどまっています。
この若い世代に選挙に関心をもってもらおうと岡山市の大学でワークショップが開かれました。
(環太平洋大学/白取耕一郎 講師)
「投票の意味理解しよう。投票制度の在り方も考えてみる。なんで知り合いじゃない人に投票するのってことを考えてほしいです」
岡山市東区の環太平洋大学で開かれた「模擬選挙のワークショップ」には約150人の学生が参加しました。
選挙をより身近に感じてもらおうと模擬選挙では学生が提出する「期末レポート」を争点にします。
(環太平洋大学/白取耕一郎 講師)
「字数と評価方法を聞いております。テンポよく投票していただいて」
「期末レポート」に関して学生たちに最もいいと思う「文字数」と「評価方法」を3つの選択肢から選んでもらうと、文字数は「最も少ないもの」、評価は「最も緩いもの」が圧倒的に一番人気でした。
では、それぞれの候補者がこの「文字数」と「評価方法」に関して異なる選択肢を提示したら――。
(松木梨菜リポート)
「候補者を3人立てて考えていきます。すべての学生の意思をかなえられる候補者はいないという想定です」
(候補者A)
「期末レポートに関してはより厳しくやりがいがあるものに。文字数はもともと1000文字だったのを1万字に。S評価がつくのは全体の1%」
(候補者B)
「期末レポートの内容は今のままでいいと思いますが、評価はシビアにしないと公正ではない」
(候補者C)
「評価はそのままでいいとして。(字数を)2000字にして」
Aは「文字数」は最も多く「評価」は最も厳しく。Bは「文字数」は最も少ないものの「評価」は学生の希望より厳しめ。Cは「評価」は最も緩いものの「文字数」が学生の希望より多めを公約に掲げています。
投票の結果、「B」が半数以上の票を集めて当選しましたが、「文字数」や「評価方法」など個別の投票より票がばらけました。
今回のワークショップの狙いの一つが選挙は「公約」ではなく「候補者」を選ぶもの、ということを学生たちに体感してもらうことです。
(参加した学生[20]は―)
「選挙について知ろうと思いました」
「自分が希望・要望するものと完全に合致するもの(公約)はないので、その中で吟味するのが大事かなと思いました」
(環太平洋大学/白取耕一郎 講師)
「現在の制度は、候補者や政党に投票するという学生にとってはなじみのない仕組みになっているんですけれども、なぜそうなっているのかという意味を分かってほしい」
環太平洋大学は今後も学生に選挙を身近に感じてもらう取り組みを続けて実際の投票行動につなげたいとしています。
若い世代は投票率が1%下がると7万8000円損する?
では若い世代の投票率が低いとどうなるのか。投票率低迷が将来の負担増加につながるかもしれない……と試算している専門家がいます。
東北大学の吉田浩教授は49歳以下を若い世代、50歳以上を高齢世代として、両者の投票率の格差が広がった場合どんな影響があるのか、試算しました。
用いたのは過去26回分の国政選挙の「世代別投票率」や「国債の新規発行額」、「社会保障」の支出状況などのデータです。
吉田教授は、両世代の投票率の差は年々拡大し、将来的な負担となる国債の新規発行額も増加傾向にあると指摘。
そして、若い世代の投票率と新規発行額の関係を分析した結果、若い世代の投票率が1%分下がると、今の若い世代の負担が年間で1人当たり約4万7000円あまり増えると試算しました。
さらに「高齢世代向けの社会保障」と児童手当など、「若い世代向けの社会保障」の支出状況を分析すると、若い世代の投票率が1%分下がると、世代間の格差が年間で1人当たり3万円あまり広がるとしています。
この2つから、「若い世代は、投票率が1%分下がることで1人当たり年間で7万8000円ほど損をする」という試算結果を公表しました。
吉田教授は「投票を棄権することのデメリットを金額で見える化した。コストを意識して投票に行ってほしい」としています。
参院選の投票日は7月10日で、9日までは期日前投票ができます。