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【特集】世界の赤ちゃんを救う!香川生まれのWHO推奨機器「iCTG」 妊婦と胎児の“遠隔診療”を可能に

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 胎児の心臓の音を聞きながら心拍を測定する医療機器を高松市の会社が開発しました。この機器が今世界に注目されています。

 医療機器「iCTG」が画期的なのは、妊婦と胎児の「遠隔診療」を可能にしたところです。2022年7月にはWHO(世界保健機構)の「推奨機器」に選ばれました。開発したのは、高松市のメロディ・インターナショナル。尾形優子さんが、2015年に創業したベンチャー企業です。

(メロディ・インターナショナル/CEO 尾形優子さん)
「2つのセンサーだけで、おなかの中の赤ちゃんの心拍とお母さんの陣痛(子宮の収縮)を測れるものになっています。例えば病院に行きにくい妊婦さんなんかに使っていただいて、離れた(場所の)医師から診断していただくものになっています」

 超音波を利用して赤ちゃんの心拍と母親のおなかの張りを測定する「分娩監視装置」は、従来、据え置き型でした。iCTGは、それを持ち運びできるようにし、さらに、測定したデータをインターネットを使って送信できるようにしました。

(メロディ・インターナショナル/CEO 尾形優子さん)
「ピンクは、おなかの中の赤ちゃんの心拍をとらえることができるセンサーになっています。赤ちゃんの心臓をとらえたらトクトクトクとかわいい音がしますので、そういったところで止めていただいてベルトで固定します。ブルーのセンサー。こちらはですね、お母さんのおなかの張りが計れるようになっています」

 ピンクとブルー、2つのセンサーで測定したデータをタブレットに飛ばし、タブレットから医師に送信する仕組みです。尾形さんは以前、産婦人科の電子カルテを開発・販売する会社を経営していました。その時に日本の医療の現状を目の当たりにしました。

(メロディ・インターナショナル/CEO 尾形優子さん)
「島とかですね、全国各地にあるそういったところでは、本当に産婦人科医が1人とか、もういないとかいうところもどんどん出てきました。この近くの瀬戸内海でさえですね。島が多くて妊婦さんは(妊娠)後半になると、香川県側の本土に移り住んで病院に通うということをしてるっていうことを聞いて、それはちょっとすごく大変なことだなと」

 日本では出生数の減少に伴い、産婦人科施設数も減少しています。(2006年→2020年 出生数:約109万人→約84万人 産婦人科施設:5946施設→5074施設)そうした中、「通院が難しい妊婦が“遠隔診療”を受けることで、安心して出産できるようにしたい」という思いからiCTGの開発は始まりました。

 このiCTG誕生までには「4つの幸運」がありました。

1つ目の幸運

 超音波を利用した「分娩監視装置」は現在、世界中で使われています。この装置の基本原理を発明した一人が当時、東京大学医学部で働いていた原量宏さんです。

 尾形さんが産婦人科の電子カルテを開発している時に原さんと出会ったこと……これが1つ目の幸運です。

 原さんはその後、香川医科大学に赴任。iCTGの開発を尾形さんと共同で行いました。

(香川大学/原量宏 名誉教授)
「オンライン診療で一番難しいのは胎児ですね。胎児心拍数を安定して検出する方法が実現していなかったし、装置も大きかったから。だから病院へ行かないと胎児が元気かどうかを正確には診断できなかった」

 尾形さんと原さんが出会ったことがiCTG誕生の原点です。

2つ目の幸運

 2つ目の幸運は香川大学とタイのチェンマイ大学が姉妹校だったことです。

 iCTGは完成までに、何度も試作を繰り返しました。こうした試作品をチェンマイ大学の医師たちが実際に使用して、改善点を伝えてくれました。

(メロディ・インターナショナル/CEO 尾形優子さん)
「タイの周産期死亡率って良くなかったんですね、その頃は。なので、現場であるチェンマイ大学の先生が、自分事みたいな形で、私たちと一緒に(開発に)取り組んでいただいたというところが大きいんじゃないかと思っています」

3つ目の幸運

 尾形さんは当初iCTGの製造を県外の医療機器メーカーに依頼しようと考えていました。しかし、「少子化が進む中で採算をとるのは難しい」と引き受けてくれるメーカーはなかなか現れませんでした。

 そうした中、引き受けたのが高松市に本社を置き、エレクトロニクス機器の開発・製造を手掛ける「ファイトロニクス」でした。

(ファイトロニクス/古沢延之 社長)
「自分たちではできないのかなとは思いましたけれども、私が前職で血球、血清とか、そういう医療機器関係をやっていましたので、少しでもお役に立てればなというような気持ちがありましたので、お受けするようにいたしました」

◆4つ目の幸運

 4つ目の幸運は「電波暗室」という設備が身近にあったことです。

 iCTGが医療機器として国の認証を取得するためには、「電波暗室」で他の機器に悪影響を与える電磁波を発していないかなどの検査を行う必要があります。メロディ・インターナショナルが入居する建物の中に、幸運にも大規模な電波暗室がありました。

(メロディ・インターナショナル/CEO 尾形優子さん)
「本当にたまたまだったんです。ここに、そんな世界に通用する電波暗室があるなんて全然知らなかったんです」

 4つの幸運が重なって生まれたiCTGは、2018年5月に医療機器として認証を取得。現在、香川大学医学部付属病院をはじめ、国内の多くの医療機関で導入されています。

(香川大学医学部付属病院/金西賢治 副病院長)
「母体搬送であったりとか、緊急搬送が必要なような症例の搬送の間の胎児の心音であったり、あるいはおなかの張り、子宮の収縮の状態を遠隔でも確認できるので、搬送を受ける側としては、心持ちであったりとか、緊急帝王切開をしなきゃいけないのかとか、そういう準備にかかる時間というのを短縮するっていう意味では有用なんじゃないかなと思います」

 iCTGは、医師や医療施設が限られる開発途上国でも有用性が認められ、タイだけでなくブータンやミャンマーなど8カ国で導入されています。

 そして2022年7月、WHOはiCTGを「推奨機器」に選びました。これまで日本メーカーの医療機器が選ばれたのは4製品のみ。ベンチャー企業が選ばれたのは「快挙」と言えます。

(メロディ・インターナショナル/CEO 尾形優子さん)
「本当にたくさんの赤ちゃんが世界中で亡くなっています。そういうところから世界中のお母さんに使っていただきたいなというふうに思っています」

 香川から生まれたiCTGは、今後、多くの国の赤ちゃんを救う可能性を秘めています。

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