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【特集】中1で起立性調節障害、20歳で発達障害と診断 不登校だった男性の支えと新たな目標 香川

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 文部科学省によると、2021年度、全国の小中学校で不登校だった児童・生徒は、過去最多の約24万5000人でした。香川県高松市の22歳の男性は、中学1年生のときに不登校になりましたが、今、支援を受けながら目標に向かって歩みを進めています。

 学び直しの機会を設けようと、高松市が8月から2週に1回開いている夜間教室です。この教室に通う宮本凌輔さん、22歳。授業は午後6時からですが、いつも早めに来て、先生に勉強を見てもらっています。

(宮本凌輔さん)
「少しずつ高卒認定の全ての科目を取得するっていうところから、そこから自分のやりたい仕事に向けての資格の取得だったりとかというのに少しずつ取り組んでいけたら」

(宮本凌輔さん)
「写真はないですね多分。探してはみたんですけど、どれも小学校までで止まってて」

 異変があったのは、地元の中学校で勉強と部活に励んでいた1年生の2学期のことでした。

(宮本凌輔さん)
「急なめまいと立ちくらみが、自分の体の中でバタンと倒れてしまって、その時は救急車で搬送されて、先生に言われたのは起立性調節障害じゃないかって」

 起立性調節障害は、自律神経の不調によるもので「朝起きられない」「立ちくらみがする」「失神」「倦怠感」などの症状があります。

 日本小児心身医学会によると、思春期に発症することが多く、症状が軽いものも合わせると中学生の1割ほどにみられます。また、不登校となっている子どもたちの3割から4割ほどが起立性調節障害だとみられています。

 宮本さんは、倒れた日を境に不登校になりました。

(宮本凌輔さん)
「学校に行かないといけないというのはわかっているんですけど、体がついてこない悔しさだったりとか。家にいる自分に罪悪感を常に抱えている状態で、自分の存在に対して疑問を抱くというか、逃げたい逃げたい楽になりたいみたいなのはあって、家族とぶつかったりというのもありましたし」

(母/佐知子さん)
「最初はなぜ行けないのかなっていう気持ちが先立って。学校に行くのが正しいというか、一般的な道筋を言うとパニックになることが多くて」

 宮本さんは不登校の子どもを支援する教室に通いながら中学校を卒業。高校に入学しましたが、人間関係で悩み、1学期のうちに退学しました。その後、複数のアルバイトを経験するも長続きせず、20歳の時、「発達障害」と診断されました。

(「不登校新聞」代表/石井志昂さん)
「不登校にひきこもり、本当に心配だと思うんですけど、それって人には必要な時があって、ひきこもっている時、不登校の時、それを休息の時期として迎えられれば、その後いろんな形で羽ばたいていくことができます」

 10月、三豊市で不登校やひきこもりをテーマにした講演会が開かれました。文部科学省は、全国の小中学校での不登校の児童・生徒が2021年度は24万4940人にのぼったと発表しました。前の年度から約5万人増え過去最多となりました。

(「不登校新聞」代表/石井志昂さん)
「学校に行ったら、ずっと行き続けなくてはいけない、卒業するまで頑張らなくてはいけない、ということではなくて、いったん、不登校だったり、ひきこもりだったり、転職だったり、退職だったり、そういったことをいろいろしながら、紆余曲折を経ても生きていけるんだと思える社会が望まれている」

 高松市の宮本さんは2022年1月から、障害者の就労支援や不登校・ひきこもりの相談などを行う「hito.toco」に通っています。ここでは、就職に向けて自分の適性を把握したり、ビジネスで求められるスキルを学んだりしています。

(hito.toco/髙橋ゆうこ さん)
「最初はどこに障害があるのかとかがわからないくらい何にも問題がないように見えたんですけど、いざ振り返りで、『きょうどうだった?』って聞くと、『途中からやっていることがわからなくて、ついていけなかった』と仰ってました」

 通い始めたとき、宮本さんは集団での行動に慣れず周囲に気を張りすぎたり、スケジュールを詰め込みすぎたりしてしまう傾向がありました。今はその点を意識しながら作業に取り組んでいます。

(hito.toco/髙橋ゆうこ さん)
「『行動の疲れ』と『気疲れ』と両方あって、それがたまりにたまると、しんどい状況に陥ってしまうというのが彼の特性なのかなと思うので、いかにパンパンにならないようにしていくかっていう、コントロールをしていくのが彼の課題かな」

(宮本凌輔さん)
「最初は来るので精一杯で、通うのがしんどかった時期もあったんですけど、だんだん通うのに慣れてきて、自分の中でも目標が決まって、それに向かって頑張っていく中で、働きたいという意欲も高まってきた」

 宮本さんが目指しているのは「福祉関係」の仕事です。

(宮本凌輔さん)
「人に『ありがとう』じゃないですけど、人に何かできる仕事に就きたいなと思っていて。自分も自分と同じような悩む子に寄り添える職に就きたいと思ったり」

 「就職」に向けて歩みを進める中、宮本さんはYouTubeで自身の歌を配信しています。歌は中学生で不登校になったときに始めました。

(宮本凌輔さん)
「音楽があるから、まだ逃げないで治療というか、自分と向き合おうと思えたのかなと思います」

(母/佐知子さん)
「やっぱり親の思いと子の思いっていうのは全然違うんですよね。見守ってあげたり、できないことができるようになるために、親とか周りの人が支えていけるような環境づくりができたらいいのかな」

 宮本さんは、今は「就職」という目標に向かって自ら学び、トレーニングを続けています。「不登校」など、さまざまな困難を経験したことで気付けたこともありました。

(宮本凌輔さん)
「当時は本当に苦しかったんですけど、それでも寄り添ってくれる周りの優しさだったりとか、自分に与えてもらった分、いろんな人に返していけるようにというのは、これから心掛けて生きていきたい」

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