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【特集】右目のわずかな視力を頼りに送る大学生活 20歳女性の「工夫」と周囲の「支援」 香川

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 香川県善通寺市の大学に目に障害がある女性が通っています。彼女は自分自身の工夫に加えて周囲の支援を受けながら学生生活を送っています。

右目のわずかな視力を頼りに送る大学生活

 四国学院大学社会福祉学部2年の山本華さん(20)。大学内の寮で暮らしています。

(四国学院大学 社会福祉学部2年/山本華さん)
「左目はもう全く、光しか感じていないです。視力はもうゼロです。なので、ほぼ見えていない。右目は、色の判別はできるんですけど輪郭はぼやけていて、人の顔の表情とかはどれだけ近づいてもわからない」

 この日の朝食はパンでした。

(四国学院大学 社会福祉学部2年/山本華さん)
「きょうだったらイチゴ味にしたんですけど、オレンジとピンクとか似て見えることがあるので、たまに間違えることはある」

 飲み物は、決まってウーロン茶。理由は「ボタンの位置を覚えているから」です。

(四国学院大学 社会福祉学部2年/山本華さん)
「ほかの種類の飲み物何があるか、そもそもわかってないんですけど、時間があるときとかは、たまには『他の飲み物を飲んでみたいな』っていうことはあるんですけど、周りの人に聞く時間もないし、聞くのも時間かかって申し訳ないなっていうので、ついいつも通りのっていうので選択してしまいます」

 朝食後、いつものように食器を返そうとしますが、あいにくこの日はシャワーシンクが故障していました。しかし、山本さんに貼り紙の文字は読めません。

(四国学院大学 社会福祉学部2年/山本華さん)
「すいません。流すところがちょっと流せなかったんですけど、上に置いちゃったんですけど、大丈夫ですか? 食べ終わった食器……」

(調理員さん)
「そのまま置いてくださって結構です。ありがとうございます」

大学入学当初は盲学校との違いに戸惑い

 山本さんは高松市出身。0歳のころから両目の視力が落ちていき、幼いころに手術を繰り返しましたが回復しませんでした。

 小学校と中学校は地元の学校、その後、盲学校に進みました。盲学校の授業は少人数で、生徒一人一人の見え方に合わせて行われていました。

(盲学校の卒業式でのスピーチ 2021年3月/山本華さん)
「これまで私たち卒業生を支えてくださった皆さん、本当にありがとうございます」

 そして、2021年4月に四国学院大学に入学。入学当初は、盲学校との違いに戸惑うこともありました。

(四国学院大学 社会福祉学部2年/山本華さん)
「結構つらかったのは、人数の差が大きかったことですね。どうやって周りと人間関係の輪を広げたらいいのかなっていうのがすごく不安でした。大丈夫かな、変なところで気を使わせたり、迷惑かけたりせんかなっていうブレーキじゃないですけど、不安は絶対ついてはきます」

進学先に四国学院大学を選んだ理由の一つは…

 授業の前、山本さんは文学部2年の大野亜里沙さんと合流しました。2人は1年生の時からの友人です。授業中、山本さんは聞くことに集中し、大野さんが代わりにノートを取ります。

 これは「アテンダント・サービス」といって、体や目に障害がある学生のために四国学院大学が行っている支援です。障害がある学生が希望すれば、ノートの代筆や学内での移動などをサポートしてもらうことができます。

 サポートする学生には大学から1時間につき1000円前後が支払われます。

(山本さんのアテンダントを担当/大野亜里沙さん)
「自分の方が、アテンダントだからと意識せずに、なるべく友達としての関係性のままで維持したいなと思っているので、あまり(友人としての関係と)変わりはないかもしれないです」

 授業によってはタブレットを使うこともあります。

 ホワイトボードの文字は読めないので、事前に教員から、授業で使うプリントのデータをもらい、見やすいように白と黒を反転させて、タブレットで確認します。

 山本さんが進学先に四国学院大学を選んだのは、視覚障害者への支援が充実していることが理由の一つでした。2021年2月に完成した大学の寮には、障害者向けの部屋があります。緊急時に大きな音と光を発する警報機や、ナースコールなどが備わっています。

 山本さんは、この部屋で、タブレットやパソコン拡大読書器を使いながら、授業の復習や課題に取り組んでいます。

 全国障害学生支援センターが全国の大学にアンケートした結果、回答した381校のうち点字や拡大文字など視覚障害者のための教科書を用意しているのは15%。視覚障害者に向けた支援態勢づくりは十分ではないということです。

似た境遇の人がいることが支えに

 大学入学後、少しずつ友達が増えていった山本さんは「初めての挑戦」もしました。

(四国学院大学 社会福祉学部2年/山本華さん)
「今年の4月も友達の車に乗せてもらって映画を一緒に見に行ったんですよ。それも今までからしたら考えられないほど、絶対なかったなっていうことだったので。一歩目を踏み出す行動力みたいなものが、だいぶ踏み出しやすくなったんじゃないかなっていうのは、すごく思います」

 ちなみに山本さんは大学の吹奏楽団に入っています。今週末には大学祭で演奏する予定です。

(四国学院大学 社会福祉学部2年/山本華さん)
「そぼろがちゃんと引き立ってて。卵のいいパンチがきいてます」

 山本さんは月に1回ほど、大学、そして盲学校の1年後輩にあたる山川祐樹さんと夕食を食べます。似た境遇の人がいることが、お互いの支えになっているようです。

(四国学院大学 社会福祉学部1年/山川祐樹さん)
「初めは、自分と同じような状態の人が身近におるということだけでも、結構ありがたい存在なので、すごい助かってます」

(四国学院大学 社会福祉学部2年/山本華さん)
「ありがとう。私もすごく心の支えになってます」

 今、福祉について学んでいる山本さんは、「将来、自分と同じような視覚に障害がある人の手助けをしたい」と考えています。

(四国学院大学 社会福祉学部2年/山本華さん)
「大学に来て、いろんなところに出掛けられるようになったし、いろんな人と会話できるようになったし、ずっと積み重ねて積み重ねて、いろんな人のサポートがあったからこそ今があるので、関わってきた人たち全員に、ちょっとずつ恩返しできたらなっていうのはありますね。恩返ししながら、視覚障害者の人たちにも恩返しの意味も込めて、サポートできたらなという感じが理想です」

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