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【解説】岡山市が開発制度見直し 背景は? 専門家「これまでがおかしかった」不動産関係者からは不安の声

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 岡山市の開発に関して解説していきます。岡山市は、「市街化調整区域」に新たに家を建てるための条例を、2年後の2026年に廃止する方針を決めました。その理由とは?

市長が廃止を口にした「50戸連たん制度」とは

(岡山市/大森雅夫 市長)
「50戸連たんを続けることによって、市街化区域の中の人口減少が続いていくということはできるだけ避けていかなくてはならない、ということで今回苦渋の決断をさせていただいた」

 この日、岡山市の大森雅夫市長が口にしたのが、いわゆる「50戸連たん制度」の廃止です。

 岡山市は計画的なまちづくりのために、市内を「市街化区域」と「市街化調整区域」というエリアに分けています。市全体に占める面積は「市街化区域」が13.2%、「市街化調整区域」が61%です。

 この「市街化区域」では、再開発など優先的に市街化を進める一方、「市街化調整区域」は住宅などの建設を制限します。

 ただし、岡山市は条例によって、一定の条件を満たせば「市街化調整区域」での新たな住宅建設を認めていました。それが「50戸連たん制度」です。

 「50戸連たん制度」は、それぞれ55m以内にある建物が50戸以上連なっている区域に限って、新しい住宅の開発を認めるものです。

 この制度に基づいて、岡山市は2001年度から2022年度までに合わせて8168件の住宅の新築を許可しています。
 特に、「市街化区域」に隣接する「市街化調整区域」で新しい住宅が増えました。これによって起こったのが「人口密度の低下」です。

「人口密度の低下」で病院や店舗が成り立たない懸念

(岡山市都市計画課/難波雅彦 課長)
「今ある市街地拠点と言われるところも、人口密度が下がってきて、住民生活にとって必要な病院だとか、店舗などが成り立たなくなっていってしまうというような懸念がある」

 岡山市の「市街化区域」のうち、特に「岡南」や「西大寺」は周辺部の開発が進み、人口密度が下がってきています。

 都市計画の専門家は、生活の利便性を高めるためには「人口密度を保つこと」が重要だと考えています。

(岡山大学/氏原岳人 准教授)
「本当は、もっと住みやすくするためにというのが実は一番なんです。いろいろなスーパーを実はみんな使い分けているケースが多くて、選択ができることが住みやすい街につながっている。そして選択ができることに対しては、一定の密度が必要」

 氏原准教授の研究によると、スーパーマーケットの充実度が「暮らしやすさ」に関係するという結果が出ています。
 例えば、品揃え、価格の安さ、距離の近さなどに応じた、複数の選択肢があると「より暮らしやすい」と感じるということです。
 この複数のスーパーマーケットが成り立つためには、岡山市の場合、1ha当たり50人以上の人口密度が必要だということです。

 また、市街化調整区域での再開発が進むと、人口密度の低下以外にもデメリットがあります。

(岡山市都市計画課/難波雅彦 課長)
「道路等が開発によって調整区域にたくさん造られていくと、将来的にその道路を維持管理していくという、そういった非効率な公共投資が今後どんどん出てくるということで、そういうのも大きな課題かなというふうに考えております」

 岡山市は、「コンパクトシティ」を掲げてまちづくりを進めています。これは、各地に「拠点」を設け、拠点同士を鉄道やバスなどの交通網で結ぶものです。
 中心部の「都心」のほか、「北長瀬」「浜・原尾島」「西大寺」「岡南」の4地域を商業施設や拠点的な病院を誘導する「都市拠点」に、庭瀬や一宮、瀬戸など13地域を「地域拠点」に設定しています。
 この拠点を維持するためにも、ある程度の「人口密度」が必要ですが、氏原准教授は「50戸連たん制度」が「コンパクトシティ」の推進に逆行していたと考えています。

(岡山大学/氏原岳人 准教授)
「これまでがおかしかった。ブレーキとアクセルを同時に踏んでたっていう状況。将来的な都市像として、どういうものを目指しているか、そしてそれが市民にとってどういうメリットがあるか、説明していく必要がある」

条例廃止に不動産関係者からは不安の声

 岡山市の人口は、2020年の約72万人をピークに減少していて、2045年には約69万人になると推計されています。

 都市機能を維持するために廃止を決めた「50戸連たん制度」ですが、不動産関係者からは不安の声が上がっています。

 岡山県宅地建物取引業協会には、岡山県の不動産業者の約7割が加盟しています。

(岡山県宅地建物取引業協会/住田典聡 副会長)
「ある程度、行政の施策の中でやむを得ないっていうことは理解しつつも、岡山市の発展がちょっと抑制されるような気がしております」

 懸念しているのは、家を建てられる場所が限られることで、その土地の地価が上がることです。これに加えて、資材の高騰などで、住宅自体の価格も上がってきています。

 国土交通省によりますと、戸建て住宅の価格は、10年前より2割近く値上がりしています。

(岡山県宅地建物取引業協会/住田典聡 副会長)
「どうにか土地を提供して、どうにか家を建ててもらいたいなという思いはあるが、400万円の所得に足りない人が本当に多く、3500万円でもギリギリの人が昔から多かった。それが4500万になると、ローンが組めないから」

 このほか、市街化調整区域で土地の用途が限られると、「耕作放棄地」が増える可能性ことも考えられるということです。

(岡山県宅地建物取引業協会/住田典聡 副会長)
「一番困るのが相続の問題。もうそのまま農家を承継してくださいということなんですが、もうなかなかちょっと相続ではそこが難しいので、耕作放棄地っていうのが、おそらくこの先もっともっともっと増えるんではなかろうかなというのが、ちょっと不安はありますね」

 岡山市の「50戸連たん制度」は2026年4月に廃止される見通しです。
 「市街化調整区域」での宅地開発は、これまでより制限されますが、中山間部など過疎地域に限っては、開発の条件を今より緩和するなどして、コミュニティの維持を図るとしています。

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