防災の話題を伝える「こつこつ防災」です。東日本大震災をきっかけに開発された新しい発想による天井を紹介します。長年培ったテントの技術が生かされています。
2011年の東日本大震災では、体育館や商業施設などで天井ボードが落下する被害が相次ぎました。日本建設業連合会によると、その数は約2000件にも上りました。
そこで、開発されたのがテントなどに用いる軽くて丈夫な「膜材料」を活用した「新発想」の天井「マクテン」です。手掛けているのは岡山県津山市の「マクライフ」です。
(マクライフ/牛垣希彩さん)
「まずは軽いという事。重いものを一切使用しないというのが一番の特徴の天井です。万が一落下してきても、やわらかいシートが落ちてくるだけですし、強いシートですので、落下物を受け止めて、下の人を守るという役割を果たす天井システムです」
従来の天井は、屋根裏からつり下げた器具に天井ボードを取り付けています。地震がおきた時には、揺れて、破損や落下の危険があります。
「マクテン」の場合は、壁に設置した独自の金具に「膜材料」のシートを取り付け、引っ張って設置します。シートは軽くやわらかい素材なので、万が一落下してもけがをしにくい天井です。
(マクライフ/牛垣希彩さん)
「ガラス繊維が織り込まれた不燃材のシートになっています。1m×1mの1㎡が640gと軽量でして、(一般的な天井ボードの)40分の1ぐらいの重量の天井です。溶着の技術であったり、膜材特有の伸び率みたいなところも、シートを長年扱ってきたノウハウっていうのは必ず生きてきているシステムだと思います」
「マクテン」を考案したのは、牛垣和弘社長です。
(マクライフ/牛垣和弘 社長)
「東日本大震災の(状況を)見た時に、落ちてくることもある程度頭に入れながら、天井とかも復旧した方がいいんじゃないかと。そしたら、軽くてやわらかい膜材とかで天井を作ったらっていうことで、開発に入ったという事です」
「つる」から「引っ張る」天井へ。「マクテン」は約2年かけて、素材や取り付け金具の開発に取り組みました。
2022年の「岡山イノベーションコンテスト」では「新しい発想」が評価されグランプリを受賞。建築基準法に基づく天井脱落対策にも対応し、公共施設での施工も増えています。
(マクライフ/牛垣希彩さん)
「これって世の中にこれから必要だよねって、共感の声をたくさんいただきますので、まずは知っていただくこと。そして、何かあった時に、マクテンがあってよかったなと思っていただけるように、岡山県から発信して、全国に広げていきたいと思っています」