岡山大学とNTTは16日、世界で初めてトポロジーの原理を利用したギガヘルツ超音波回路を実現したと発表しました。スマートフォンなどに用いられている超音波フィルタの小型・高性能化につながることが期待されるということです。研究成果は16日から富山市で開催している国際学会「Metamaterials, Photonic Crystals and Plasmonics」で発表されました。
5Gなど通信技術の発展に伴い、スマートフォンなどの無線通信端末においては、無数に飛び交う電波の混信を避けるため、信号を精密に抽出する「超音波フィルタ」が重要な役割を果たしています。「超音波フィルタ」とは、電波を周波数の高い超音波に変換し、欲しい周波数帯だけを取り出して電波に戻す装置で、高性能スマホには100個近くが搭載されています。
岡山大とNTTは、超音波フィルタを「小型化」するために、1つのデバイスで複数の周波数帯を抽出できるフィルタの開発に取り組みました。その際、波の方向を少しずつ変える必要がありましたが、数学理論のトポロジーの原理を用いた回路を設計することで、波の向きを変えても反射しないようにし、従来の100分の1以下の小型化に成功しました。
岡山大とNTTは、今回の実験でギガヘルツ超音波を空間的に制御する要素技術を確立したとしていて、岡山大学環境生命自然科学学域の鶴田健二教授は「大学院生・企業研究者との緊密な連携から生まれた成果。2016年のノーベル賞で注目された基礎研究が波及して、身近な電子機器の高性能化につながる可能性を示した」とコメントしています。