組織の不正を内部から通報した人を守る「公益通報者保護法」について政府が見直しを進めています。「勤務先の不正を通報した後、仕事を干された」として裁判を起こしている香川県の女性が国に通報者の保護を強めるよう求める署名を送りました。
香川県に住む外資系製薬会社の社員、小林まるさん(仮名)は18日、消費者担当大臣と消費者庁長官に宛てた署名を郵送しました。
署名は公益通報者保護法を改正し、通報者の保護を強化することを求めるもので、2月16日までにオンライン署名サイトで約2万5000人分が集まりました。
(国に署名を郵送/小林まるさん[仮名])
「これだけ多くの署名をいただけるということは、公益通報者が悲惨な目にあってるということに、多くの方が心を痛めているということでもあると思う」
兵庫県知事を巡る告発文書問題で注目が高まった公益通報者保護制度。消費者庁の有識者検討会が見直しを議論し、2024年12月に報告書をまとめました。
報告書では、不正を通報した人を事業者側が解雇や懲戒処分した場合、刑事罰を科すことを求めています。
一方で、配置転換や嫌がらせは客観的な判断が難しいなどとして刑事罰の対象に含まれませんでした。
小林さんは勤務先の不正を厚生労働省に通報した後、1人だけの部署に配置され、約5年間にわたり、自宅でほぼ仕事がない状態に置かれています。
そして、2024年1月、この「仕事外し」はパワーハラスメントに該当するなどとして損害賠償を求め、会社を提訴。
会社側は「業務が少ないのは原告のコミュニケーション上の問題などが原因で、内部通報を理由とした不利益な扱いではない」などとして争っています。
署名の投函後、オンラインで記者会見をした小林さんと代理人の弁護士は「刑事罰の対象を解雇などに限定する改正では不十分だ」と訴えました。
(「公益通報後の仕事干し」で提訴/小林まるさん[仮名])
「(自分が)解雇だったら、辛い目に遭っているというのがもっと理解されるのに。裁判所にも分かってもらえるのにと何度も何度も考えました」
(小林さんの訴訟の代理人/竹村和也 弁護士)
「配置転換であったり仕事外し、一般の労働契約関係で会社に裁量が高いと言われているところでそういう報復的な対応をしてくることが多いので、そこにメスを入れないと真の労働者保護というのは実現できないんではないかなと考えています」
政府は今の国会に公益通報者保護法の改正案提出を目指していて、小林さんは国会議員への請願なども検討しています。
(「公益通報後の仕事干し」で提訴/小林まるさん[仮名])
「公益通報者が命やキャリアを失わない社会にしていきたいと思っています」