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勤務先の不正を公益通報後に「仕事を干された…」製薬会社の社員が会社を提訴 高松地裁

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 香川県に住む外資系製薬会社の社員が勤務先の不正を国に公益通報した後、「仕事を干された」として会社に損害賠償を求める裁判を起こしました。通報した労働者を守る「公益通報者保護法」の問題点も訴えています。

(勤務する製薬会社を提訴/小林まるさん[仮名])
「やりがいを持って働いていたのが、急に何もすることがなくて。だからといって私の性格もあるんですけども、遊ぶわけにもいかないので待機している」

 患者の数が少ない「希少疾病」に特化した外資系製薬会社に勤務する小林まるさん(仮名・50代)。自宅がある香川を拠点に、四国近辺の医療機関に向けて自社の製品の安全性や有効性を伝える営業職、MR(医薬情報担当者)として2013年から働いていました。

 小林さんは2017年、会社が扱う指定難病の治療薬について、本来は認められていない「適応外」の患者にも使用するよう促す不適切なプロモーション活動を行っている実態を厚生労働省に「公益通報」しました。
 上司やアメリカの親会社にも訴えたものの、改善されなかったためです。

 厚労省は翌年、製薬会社のプロモーション資材に誤解が生じる可能性があるとして内容の削除や訂正などを文書で通知し、2019年2月には薬剤の使用上の注意の改訂も指示しました。

 その直後、小林さんは配置転換を言い渡され、MR職を離れることに……。さらに2020年には小林さん1人だけの部署が新設され、自宅で「ほぼ仕事がない状態」に置かれたと言います。

(勤務する製薬会社を提訴/小林まるさん[仮名])
「(業務記録を見せながら)2020年3月に私が作業したのは1日あたり37分、ということです。例えばエクセルに数字を打ち込む。私の経験や知識を生かせるような仕事ではなくて単純作業がほんの少しだけ。本当につらいです。なんとかメンタルな病気にならないように踏みとどまろうと思って、いろんなことをしているような状態です」

配置転換の無効を求める訴えは…

 小林さんは、2019年、配置転換の無効を求める訴えを東京地裁に起こしました。

 裁判で被告の製薬会社側は「部署の設置や配置換えは会社の業務効率化や小林さんの実績、適性を考慮したものだ」と主張。

 裁判所は、小林さんの業務量が少なかったのは「上司が適切な業務指示を行わなかったことなどが要因」とする一方、「内部通報に対する報復だと認めるに足りる証拠はない」と原告側の訴えを退けました。(原告の控訴、上告も棄却され、敗訴が確定)

「公益通報者保護法」の問題点も…

 企業や組織の不正を内部から通報した労働者を守ろうと2006年に施行、2022年改正された「公益通報者保護法」。法律では、通報したことを理由に企業側が解雇や降格など従業員に不利益な取り扱いをすることを禁じています。
 しかし、小林さんに対する「仕事干し」は公益通報の報復だとは認められませんでした。

(勤務する製薬会社を提訴/小林まるさん[仮名])
「それは本当に悪魔の証明に近いと思います。会社が『あなたは公益通報をしたから追い出し部屋行きですよ』と言わない限り、労働者には立証のしようがないと思っています」

製薬会社を相手に新たな裁判

 小林さんは、16日午前、会社を相手取って高松地裁に新たな裁判を起こしました。
 会社が小林さんを1人だけの部署に配置し、ほとんど仕事を与えていないのは「人間関係からの切り離し」と「過小な要求」というパワーハラスメントに該当する、などとして精神的損害として300万円の賠償を求めています。

 製薬会社側はKSBの取材に対し、「訴状が届き次第、精査の上対応いたします」としています。

 オンラインで会見した原告の代理人弁護士は「この訴訟を通じて、公益通報者保護法の問題点を広く知ってもらいたい」と話します。

(原告側の代理人/安原幸彦 弁護士)
「公益通報に応じたことが(原告が仕事を干された)根底的な原因だというあたりを追及していきたいと思いますし裁判所がきちんと見抜いて指摘してもらえることを期待しています」

(勤務する製薬会社を提訴/小林まるさん[仮名])
「もし私が辞めてしまったら結局、『会社の不正を止めようなんてしたら、本人が会社を追われるんだよ』って他の社員から見えると思うんです。それは避けたいので、私は石にかじりついてもこのつらい状況を耐えていくんだと思っています」

 小林さんは「公益通報者保護法」を改正し、通報した人が勤務先から不利益を受けた場合、状況証拠から通報の報復だと推認する規定を設けるよう求め、オンラインで署名活動も行っています。

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