瀬戸内国際芸術祭の秋会期の会場となる香川県観音寺市の伊吹島には、亡くなった島の人の思いをつなごうと奮闘する人たちがいます。
観音寺港からフェリーで約25分の伊吹島。
港から徒歩10分ほどの海辺の一角にたくさんの木材が運び込まれ、島内外のボランティアら30人近くが、観光客をもてなすための「大きな椅子」の製作に励みました。
(せとうち伊吹島元気隊/篠原幸喜さん)
「大きな椅子めがけてやってくる人もいるので、あまりにもこれではだめだということで、作りたいなと思って」
以前までこの場所にあった、「大きな椅子」。これを作ったのが、「亀善人」の愛称で親しまれていた島民の三好洋市さんです。
(三好洋市さん・2022年5月)
「2013年の夏会期の時は見ての通り日影がないもので、できるだけ日よけを作りたいと、ちょっとしたおもてなしの気分でやってみました」
島を元気にしたいとたくさんのおもてなしを続けていた三好さん。「大きな椅子」は製作から10年以上が経ち、老朽化のため作り直しを計画していた最中、三好さんは2024年の夏にがんのため70歳でこの世を去りました。
三好さんの思いを継ごうと、島の活性化を目指す「せとうち伊吹島元気隊」のメンバーらが立ち上がり、2代目の「大きな椅子」の製作に取り掛かりました。
(せとうち伊吹島元気隊/篠原幸喜さん)
「観光資源になっているので、きれいにまた作りたいなと思ってボランティアで来てもらった」
指揮を執るのは、三好洋市さんの息子で、建設関係の仕事に長く携わる三好基晴さんです。
(「亀善人」の息子/三好基晴さん)
「親父はその時暇やったやろうけんな。親父が勝手にしよったんやろうけど、みんなが何回か見て『いいな』と思ってくれとったけんお客さんもよく来てくれよったみたいでまぁいいんじゃない」
「亀善人」の思いを受け継ぐために、今回は元の椅子よりも縦・横ともに50cm大きくし、より多くの人が座れるようなものを作ります。
2日間で高さ4mに及ぶ椅子の組み立てが完了し、瀬戸芸の秋会期に向けて補強や塗装などを重ねていきます。
(せとうち伊吹島元気隊/篠原幸喜さん)
「メンテナンスちゃんとして20年くらいはちゃんとここにあってほしい。その間に島が元気に、少なくとも今よりかはにぎやかになってくれたらいいと思って、島おこしのシンボルみたいな感じになったらいいなと」