岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)周産期医療学講座の長尾昌二教授らの研究グループは17日、これまで子宮摘出が必要とされてきたIB2期、IB3期の子宮頸がん患者の子宮を温存する新たな治療法の開発を始めたと発表しました。
同様の試みはヨーロッパで散発的に行われていますが、臨床研究として安全性を担保して実施するのは世界初ということです。
5月27日に学内の倫理審査委員会で承認され、6月1日から研究に参加する患者の募集を開始しました。
研究グループは、手術前に抗がん剤を投与し、体への負担が少ない子宮頚部の円錐切除術ができないかと考えました。10年以上にわたって抗がん剤の探索を行った結果、90%以上の患者に有効な抗がん剤の組み合わせがあることが分かりました。腫瘍を縮小させた後に子宮頚部の円錐切除とリンパ節の切除を行い、子宮を摘出せずにがんの治療を進めます。
募集する患者は10人で、40歳未満、将来妊娠を希望している人が対象です。研究グループでは、8割程度の患者が予定通りの治療を完遂できると見込んでいて、治療終了後、2年間の経過観察ののち、妊娠を許可するということです。そして子宮が温存できた患者、2年以内に再発した患者、妊娠・分娩に至った患者の割合などから、この治療法の有効性と安全性を評価するとしています。
長尾教授は「10年前からの研究がやっと患者に届けられる段階になった。妊娠を希望する患者に希望を届けられるよう頑張りたい」と話しています。