現代アートの祭典・瀬戸内国際芸術祭。3日に開幕する秋会期だけ会場となる島と5つのエリアの見どころを紹介します。かつて塩作りで栄えた港町、香川県の宇多津エリアは今回が初参加です。
「古街」と呼ばれる古い町家が立ち並ぶ地区に山本基さんの「時を紡ぐ」という作品が展示されています。
(記者リポート)
「こちらの空間には網状の模様が広がっています。近くで見てみると白くざらざらとした粒……実は塩で描かれた作品なんです」
瀬戸内海の塩、約70kgを使っています。
ほかの部屋には違う模様が……こちらは「渦」のようです。山本さんによると、渦は「再生のシンボル」です。妻や妹を若くして亡くした自身の辛い記憶を忘れたいと思いながらも、忘却に抗い、記憶に残すことをこの作品に込めました。
シンガポールの作家、ゼン・テーさんは、神社に光を取り込んで水に反射させ、虹を浮かび上がらせる作品を手掛けました。
水を振動させるために流している音は、宇多津町でのフィールドワークで見つけた護摩焚きの太鼓の音です。
壁や天井には、ゼン・テーさんが撮りためた宇多津の景色などをコラージュした写真も飾られています。
(シンガポールの作家/ゼン・テーさん)
「私は作品制作を通じて人々に目を向けてもらいたいのです。時に忘れられ、時に私たちが気付かないようなものも、太陽が地球を照らすことで際立たせるのを」
海のすぐそばにも作品が展示されます。
(記者リポート)
「アクリル板の向こう側には瀬戸内海の島々が映っています。このあたりはアクリル板を通すことによって歪んで見えて、なんだか幻想的に見えます」
水族館の水槽などで使われるアクリル板2枚を組み合わせて翼のように仕立て、庵治石で作った土台の上に置いています。
作家の西澤利高さんによると、アクリル板はあくまでも「額縁」の役割。その先に見える風景の見え方や感じ方が天気や時間、気分によって変化するのを楽しんでほしいということです。
宇多津エリアでは、漁網やチェロなどさまざまなものをイスラエルの死海の塩で結晶化させた作品を含めて4つの新作を楽しめます。