香川県に住む製薬会社の社員が勤務先の不正を国に公益通報した後、「仕事を干された」として会社に損害賠償を求めた裁判です。10月3日、高松地裁で本人尋問などが行われ、弁論が終結しました。
訴えを起こしているのは、東京に本社を置く外資系製薬会社の社員、小林まるさん(仮名)です。
小林さんは2017年、勤務先の会社が難病の治療薬で不適切なプロモーション活動を行っている実態を厚生労働省に「公益通報」しました。厚労省は会社に対し「薬剤の使用上の注意」の改訂などを指示しました。
訴えによると、小林さんはその後、配置転換となり、1人だけの部署で「ほぼ仕事がない状態」に置かれたと言います。
(製薬会社勤務/小林まるさん[仮名] 2024年1月)
「例えばエクセルに数字を打ち込む。私の経験や知識を生かせるような仕事ではなくて単純作業がほんの少しだけ。本当につらいです」
小林さんは2024年1月、「仕事干しはパワーハラスメントに該当する」などとして会社に対し、精神的損害300万円の賠償を求める訴えを起こしました。
裁判は非公開で書面のやりとりが行われてきましたが、10月3日、初めて公開の法廷で口頭弁論が開かれました。
被告の製薬会社側は全面的に争う姿勢を示し、原告の業務量が少ない状態にある理由として、上司の指示に反抗的な態度を示していることや母親の介護への配慮を求めていることなどを挙げています。
一方、原告側は「上司の指示に従い、前向きに業務に取り組んでいる。介護の事情に過度な配慮は求めていない」などと反論しました。
本人尋問で小林さんは「専門職として採用されたのに仕事がない状態で、自尊心が傷つけられている」などと訴えました。
弁論はこれで終結し、今後、双方が最終準備書面を提出。判決は2026年3月13日に言い渡されることになりました。
(原告 製薬会社勤務/小林まるさん[仮名])
「社員に仕事を与えるかどうかというのは会社の裁量という考え方と、仕事干しというのはパワハラだという考えと、2つの考えがありますので。公益通報した人が仕事を干されてキャリアを失うことを認めていいのかどうかというのは裁判官には考えていただいて、適切な判決を出していただきたいと思います」