8月30日に投開票した岡山県の新庄村長選挙。その選挙に女性から男性に性別を変更したトランスジェンダーの当事者が挑みました。立候補の理由、そして訴えたこととは。
岡山県北西部にある人口700人あまりの新庄村。標高1000m級の山々に囲まれ、土地の9割が森林に覆われています。
この村の村長選に立候補したのは、臼井崇来人さん、52歳。自然にほれ込んで2010年に移住し、キウイに似た村の特産品「サルナシ」を栽培しています。
立候補を決めた理由には、村の自然に対する思いがありました。
(臼井崇来人さん)
「新庄村のこの豊かな自然が、次の代に孫の代に100年200年続いていってほしい。この自然と人間の距離がちょっと離れているんじゃないかとか、自然のこと忘れちゃってる? みたいなことを思うので、もっとわれわれの持っているリソースを上手に活用させていただいて、豊かになる暮らしを作っていきたいなと」
選挙活動を傍らで支えるのは妻の幸さんです。2人が法律で夫婦として認められたのは2024年3月。
崇来人さんは以前、戸籍上の性別が「女性」だったため、2016年に岡山家裁津山支部に「男性」への性別変更を申し立てるも認められず。再び申し立てを行い、2024年2月にようやく変更が認められました。
自分らしく生きる――。崇来人さんは、社会の制度の中で苦しんだかつての自分自身と村の現状に重なるところがあると考えています。
(臼井崇来人さん)
「固定観念って何だろうみたいな、自分らしく生きてたらよかっただけなんだっていうのに気が付いたのが自分自身にあって。新庄村も同じで、本当は村としてはもっと力強く、こんな姿があるんじゃないかっていうイメージをきっと皆さん心に持っているんだけれども、現状の社会システムとか社会の流れに飲まれているような気がちょっとして、自然とともに生きる暮らしって、ありきたりで別に派手でも何でもないけど、地味だけど、すごく大事だったんだなって、きっとあとから時代がついてくるんじゃないかなと思ってるんですよね」
今回の選挙戦で崇来人さんが掲げたのは「一人ひとりがいきいき暮らせる村に」。
選挙期間中は選挙カーで村内を走り、村民の思いを聞きつつ支持を訴えました。
そして迎えた投開票。
(村内放送)
「臼井崇来人、30票」
(臼井崇来人さん)
「30票……」
崇来人さんは落選。332票を獲得した前副村長が当選しました。
(臼井崇来人さん)
「新しい扉はなかなか重かったなと。社会とか村とか、自分が生きている時代というのは、どんなやり方でも変えていける。自然と人間の共生関係。共存できる暮らしの在り方というのを考えたかったので、個人としてやれることをこれからも探していきたい」