寝たきりの母親を介護の末、殺害したとして息子が罪に問われている裁判。9日は訪問診療を行っていた医師が出廷し、自宅での2人の様子を証言しました。
■親子の暮らしは?訪問診療医が出廷
前原英邦被告(61)初公判(3日)から 「母を殺したのは私です。ですが、母から頼まれてしたことです」
おととし8月、寝たきりだった当時92歳の母親の首をひもで絞めて殺害した罪に問われている前原被告の裁判員裁判。
先週、開かれた初公判で検察側は「経済的困窮から重度の認知症がある母親を殺害した」と主張。これに対して弁護側は殺人罪ではなく、同意殺人罪が成立すると主張。検察側と争っています。
今月9日の審理には事件が起きるまでの3年間、毎月2回訪問診療を行っていた医師が出廷。1人で母親を介護していた被告の壮絶な実態について証言しました。
■92歳母を1人で介護“壮絶な実態”
介護していた寝たきりの母親を殺害した罪に問われている前原被告の裁判員裁判。
訪問診療の医師(医師歴36年)検察側の証人尋問 「食事、排泄(はいせつ)ケア、たんの吸引…お1人で要介護5の方をよく介助されていて、大変だなと思いました」
2019年、母親が脳梗塞(こうそく)を患い、最も重い「要介護5」と認定されたことから前原被告は料理人の仕事を辞め、母親の年金を頼りに介護に専念していました。
事件直前、母親は体力的に衰弱し、会話もほとんどなくなっていたといいます。
訪問診療の医師(医師歴36年)検察側の証人尋問 「もう、いわゆる終末期の状態と判断していました。半年以内でお亡くなりになるんじゃないか、そんな状況だったと思います」
医師が終末期と見ていることを前原被告は知っていたのか、そう裁判員から問われると…。
訪問診療の医師(医師歴36年) 「具体的に話してはいません。ただし、息子さんもそう感じていると思っていました」
事件当日、前原被告がスマートフォンに残したメモです。
前原英邦被告 「生きる苦しみ限界、母を送ります。母を残して死ぬことはできませんでした。これから私も死にます」
母親の首を絞めた後、大量の睡眠薬などを飲んだ前原被告。一命は取りとめました。
検察側は生活費が底をつき、次の年金支給日まで生活ができないと思い、無理心中を図ったと指摘しています。
母親から殺害を依頼されたのか。次回は12日、前原被告への質問が行われます。