交渉決裂となったトランプ氏とゼレンスキー氏。ゼレンスキー氏は会談前、挑発に乗らないよう忠告を受けていたといいます。2人の口論は突発か、それともトランプ氏の策略か…。そして今後2人は顔を合せて停戦交渉を進める事は出来るのでしょうか。
■決裂翌日に イギリス首相は支持表明
(佐藤裕樹記者)「ゼレンスキー大統領がイギリス首相官邸に到着しました。沿道からは歓声もあがっています。予定よりも1日前倒しでの会談となります」 スターマー首相との会談は当初2日に行われる予定でした。トランプ大統領との会談が決裂したことでゼレンスキー大統領の到着が早まり、1日前倒しになったとみられます。会談したスターマー首相は、「イギリスは全面的にウクライナを支持する」と強調しました。ゼレンスキー大統領はSNSに沿道に集まった人々の映像を投稿。「意味のある温かい会談だった」とコメントしています。イギリスの公共放送BBCは「前日の訪米とは対照的なものになった」と伝えています。 (トランプ大統領)「あのバカな大統領(バイデン氏)が3500億ドルも支援した」 (ゼレンスキー大統領)「あなたたちが投票した大統領だ」 (トランプ大統領)「君の兵隊は勇敢だがアメリカの軍隊を頼っている。もしウクライナが米軍の装備を持っていなかったらこの戦争は2週間で終わっていただろう」 (ゼレンスキー大統領)「プーチン大統領からそう聞いたのですね」 前代未聞の激しい口論。首脳会談はなぜ決裂したのでしょうか?
■「挑発乗るな」会談前に忠告
実はこの時、すでにフラグが立っていたのかもしれません。 (トランプ大統領)「ずいぶん良い格好しているね」 (ゼレンスキー大統領)「ええこれを着ないと。お元気ですか、大統領」 (トランプ大統領)「きょうはずいぶん良い格好をしているよ」 その言葉。額面通りに受け取るわけにはいかないようです。 (米メディア「アクシオス」)「ゼレンスキー大統領がスーツを着ていなかった。これはトランプ大統領をいらだたせた要因として、些細だが見逃すことができない」 現地メディアによれば、トランプ大統領側が「ホワイトハウス訪問時にミリタリースタイルの服装はやめた方がいい」と伝えていたといいます。記者からはこんな質問も飛びました。 (記者)「なぜスーツを着ないのですか?アメリカで最も権威のある執務室でなぜスーツの着用を拒むのですか?スーツを持っていますか?」 (ゼレンスキー大統領)「ええ、持っています。」 (記者)「あなたの礼を欠いた行動に多くの米国民が疑問を感じています」 (ゼレンスキー大統領)「この戦争が終わったら着ます。おそらくあなたのスーツと同じかもっと良いものを」 ゼレンスキー大統領を揶揄するような質問をしたのは、トランプ大統領よりの保守系メディアです。このあたりから、場の空気が変わり始めます。 (トランプ大統領)「君の服が好きだ」 (ゼレンスキー大統領)「本当ですか?」 (トランプ大統領)「すてきな格好をしている」 (ゼレンスキー大統領)「真面目な質問には答えます」 そして、会談開始から約40分後。口論のきっかけはバンス副大統領の発言でした。 (バンス副大統領)「この4年間、アメリカではプーチンを厳しく非難する大統領(バイデン氏)がいた。しかしプーチンがウクライナを侵略して国の大部分を破壊した。“平和と繁栄への道は外交”かもしれない。まさにトランプ大統領がやっていることです」 (ゼレンスキー大統領)「ひとつ聞いてもいいですか?」 (バンス副大統領)「もちろんです」 (ゼレンスキー大統領)「彼(プーチン氏)は2014年ウクライナのクリミアと東部の一部を占領したのです。私はバイデン大統領だけについて話しているのではありません。何年もの間、オバマ大統領、トランプ大統領、次にバイデン大統領、今はトランプ大統領と変わり、私はトランプ大統領が彼(プーチン氏)を止めることを願っていますが2014年以降、誰も彼を止めませんでした。その後、停戦合意を破棄して私たちの国民を殺したんです。捕虜も交換しなかった。私たちは捕虜交換に署名したが彼(プーチン氏)は署名しなかった。あなたが話しているのは“どんな外交”ですか?」 (バンス副大統領)「あなたの国の破壊を終わらせるような外交です。大統領執務室に来てメディアの前で訴えるのは失礼だと思わないですか?この紛争に終止符を打とうとしている大統領に感謝すべきじゃないですか」 (ゼレンスキー大統領)「ウクライナに行って現状を見るべきだ」 (バンス副大統領)「私はニュースを見ています。ウクライナでプロパガンダツアーに連れていくつもりでしょう」 ゼレンスキー氏は事前にこう警告されていたといいます。 (共和党 リンゼー・グラハム上院議員)「ゼレンスキーには『挑発に乗らないように』と言った。トランプは昨夜とても気分が良かったと」 イギリスの「エコノミスト」は「バンス副大統領がゼレンスキー氏に罠を仕掛けた」とみています。
(トランプ大統領)「彼(バンス副大統領)の言うことは正しい。君は今カードを持っていないんだ」 (ゼレンスキー大統領)「私たちはカード遊びなどしていない」 (トランプ大統領)「今はカード(取引)の時間なんだ」 (ゼレンスキー大統領)「私は戦時下の大統領なのです」 (トランプ大統領)「君は何百万人もの人々の命をかけてギャンブルをしているんだ。第3次世界大戦の大博打だ。君がしていることはこの国に対して非常に失礼だ」
■“計画性”疑うメディアも
BBCは、公の場でのこの口論は計画的なものだったと一部で疑われていると伝えています。 (BBC)「仕組まれた、政治的なひったくりのようなものだったのではないか。つまり、ゼレンスキー氏をアメリカの言いなりにさせるか、あるいは次に何が起きても彼のせいにできるような危機をわざと引き起こしたのではないかと」 (民主党 クリス・マーフィ上院議員)「ホワイトハウス内でのトランプ氏とバンス氏、ゼレンスキー大統領のやりとりは奇襲攻撃だった。プーチンの利益になるよう、ゼレンスキー大統領を辱めるために計画された。」 (トランプ大統領)「こういうものが見られるのは米国民にとって良いことだ。とても重要なことだ。しっかり見てもらおう。まずは感謝してほしい」 (ゼレンスキー大統領)「感謝はしていますが…」 (トランプ大統領)「今の君はカードを持っていない。国民が死んでいる。聞くんだ、兵士は不足している。良い話なのに『停戦はしたくない 停戦はしたくない』『戦争は続けたいし、あれもこれもほしい』と言う。今すぐ停戦できるなら停戦をとるべきだ。弾丸を止め兵が殺されないように。」 (ゼレンスキー大統領)「もちろん戦争を止めたい。申し上げたように“安全保障”がほしい」
■口論にロシア「恩知らずな豚」
結局、首脳会談は決裂。ワシントン・ポストは政府高官の話として、トランプ政権がウクライナへの継続的な軍事支援をすべて打ち切ることを検討していていると報じています。 (トランプ大統領)「もう十分だろう。すばらしいテレビショーになるね」 会談の決裂を受け、ロシアからはゼレンスキー氏を批判する声が… (ザハロワ外務省報道官)「(ゼレンスキー氏は)恩をあだで返している。トランプ氏とバンス氏があの卑劣漢を殴らなかったのは自制心の奇跡だ」 (メドベージェフ前大統領)「恩知らずな豚が、豚小屋の主人からしっかりと平手打ちをくらった」
3月2日『有働Times』より
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