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【ルポ】新アリーナの"サザン狂騒曲” 高松の夜の飲食店への波及効果は?

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 高松市に最大1万人収容の新しい県立アリーナ「あなぶきアリーナ香川」が完成し、3月1日、2日の2日間、国民的ロックバンド・サザンオールスターズがこけら落とし公演を行った。
 全国各地から高松を訪れた7000人の観客は、ライブの後、高松の夜をどのように過ごしたのか。飲食店にはどのような影響あったのか。初日の夜の街を取材した。

 午後7時半。ライブが終わり、アリーナから観客が次々と出てきた。興奮気味に感想を伝え合う人、帰りの交通機関の時間を気にしてか足早に通り過ぎる人。様々な人が会場の熱気をまとったまま高松の夜の街へと消えていく。

 アリーナの間近にある駅ビル「高松オルネ」は終演後の観客を目当てに営業時間を延長。駅前広場でも午後8時過ぎまで飲食ブースが営業した。

 アリーナから約500m、最寄りの飲食店街である高松市西の丸町では、ほとんどの店が事前予約で満席。地元産のタコ料理が売りの居酒屋も、午後8時ごろにはサザングッズを身をまとった人で埋まっていた。

 ツアーのロゴが入ったおそろいのジャンバー姿で刺身とお酒を楽しんでいたのは神奈川県から来た50代の夫婦。香川に来たのは約20年ぶりだという。
「前回の旅行では夫婦で栗林公園や観音寺市の銭形砂絵を訪れた。高松ってこんなにきれいな街だったっけ?というのが第一印象」

 全国各地のライブを申し込んだところ「たまたま」高松公演が当たっただけで、当初は特に高松に来たかったというわけではなかったそうだ。

「でも来てみたら街全体で歓迎してくれているので、とにかくうれしいしテンションが上がる。本当に来てよかった。チャンスがあればまた来たい」

 今回のコンサート開催に合わせて、商店街には「サザンオールスターズ・ファンの皆様を歓迎します」という大きな横断幕が掲げられ、BGMもサザンの曲をかけるなど、街を挙げて歓迎ムードが高まっていた。

 そうした期待に応えてくれたのか、ライブ後は一定数の人たちがアリーナから商店街方面へと流れていた。特に香川名物の「骨付鳥」と「うどん」を提供する店には長い行列ができていた。普段の土曜日の夜も人気店には行列ができるが、この日はいつもより長く感じられた。
 首にサザンのタオルを巻いて骨付鳥店に並んでいた男性は「せっかくなので香川の名物を食べたい。ライブの余韻があり、並ぶのは平気です」と笑顔を見せた。

 飲食店側にもライブ帰りの客の受け皿になろうとする動きが目立った。アリーナから1kmほど離れた高松市紺屋町のミュージックバーは「ライブの内容や感想を話してくれたら1ドリンクサービス」とSNSで発信したところ、これを見た人が実際に来店したという。
 中には「名前が『桑田さん』なら1000円引き。桑田佳祐さん本人は無料!」などと、便乗して話題作りを行うしたたかな店も……。

 アリーナから直線距離で1.5㎞ほどの高松市瓦町の居酒屋も、午後10時ごろまでライブ帰りの客でにぎわっていた。千葉県から来たという40代の夫婦に「サザンどうでした?」と聞くと、意外な答えが返ってきた。

「ライブは外れたけど、高松に来ちゃいました…(笑)」

 チケットの申し込みをした時点で高松行きの航空券と宿を予約。その後、チケットは落選したが、そのまま高松へ来たのだという。「香川は海鮮がおいしくて、いまの店が2軒目。せっかくの機会なので香川旅行を楽しみたい」

 一方、高松市亀井町のワインバーでは、サザンの影響はほとんどなかったという。店主は「今回、高松に来た人はライブが主目的なので、一般の観光客よりもうどんや骨付鳥以外の飲食店を探そうというモチベーションが低いのかもしれない」と分析した。

 3月8日(土)9日(日)には屋内型「モンスターバッシュ」ともいわれる第1回「ハローアリーナ」、その後も続々と大型イベントの開催が予定されている。 
 今回、桑田佳祐さんはジョン・レノンの名曲「イマジン」に讃岐弁の歌詞を付けた曲を披露して観客を盛り上げたという。
 顧客の満足度を上げる桑田さんのサービス精神を見習って観光客のニーズをしっかり想像し、未来へ向けて「希望の轍」を描くことができるか。サザンオールスターズによるこけら落とし公演はそんなヒントを与えてくれたのかもしれない。

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