香川県のネット・ゲーム依存症対策条例をめぐる裁判です。高松市の高校生と母親が条例は「憲法違反」だとして県を相手取って起こした裁判の審理が始まりました。被告の県側は「争う姿勢」を示しました。
注目の裁判…傍聴は抽選に
(記者リポート)
「全国的な注目を集めた条例の裁判とあって、傍聴のための整理券が配られています。36席の傍聴券を求めて多くの人が列を作っています」
平日の午前にもかかわらず、40人が整理券を受け取り、抽選が行われました。高松地裁の民事裁判で傍聴の抽選が行われたは今年度初めてです。
( 傍聴に訪れた人[IT関係の会社員])
「僕も1人の親ですので、これによって香川県の考え方だったりとか、ましてや1人の少年が悩んで裁判という形で(行動を起こしたので)その行方を見守りたいなという思いで傍聴に来ました」
( 傍聴に訪れた人[放課後児童クラブの児童支援員])
「(注目点は)裁判所がこの条例に対して、どこが違法でどこが合法だという線引きをするところと、何年くらいかかるかですね」
「条例は憲法違反」原告の訴えは…
訴えを起こしているのは、高松市の高校3年生、渉さん(18歳・名字は非公表)と母親です。香川県を相手取って合わせて160万円の損害賠償を求めています。
条例は、子どもをインターネットやゲームの依存症から守るための自治体や保護者などの「責務」を定めたもので、2020年4月に施行されました。
「18歳未満のゲームの利用は平日60分、休日90分を上限とする」などとする家庭でのルールづくりの目安が記されています。
訴状によると、原告側は、ネット・ゲーム依存症の定義や、時間制限を設けることの「科学的根拠」が不明確であること。そして、渉さんや母親の自己決定権などの基本的人権を侵害していることなどが「憲法に違反している」と主張しています。
審理始まる 被告の県側は「争う姿勢」
22日に開かれた第一回口頭弁論で、被告の香川県側は、請求の棄却を求める答弁書を提出し、全面的に争う姿勢を示しました。具体的な反論は追って準備書面を提出するとしました。
その上で、この条例が規定する責務は「努力目標」や「目安」に過ぎないことは明らかであるのに、「原告側が何らかの被害を被ったかのような主張をしている」と指摘。
条例によって受けた不利益などを具体的に明らかにするよう求めました。
議会の「立法不作為」を問う原告に対し…
訴状の中で、原告側は、条例が憲法などに反することが明らかであるのに香川県議会が改正や廃止などを怠っている、いわゆる「立法不作為」が国家賠償法上、違法だと主張しています。
これに対し、天野智子裁判長は「議会が条例を制定したこと自体に問題があるとは問わないのか」と原告側に尋ねました。
(原告側代理人/作花知志 弁護士)
「立法そのものが違法なんじゃないかという言い方もできるんじゃないかと、実は裁判長がサジェスチョン(提案)してくださったような。裁判所としても非常に積極的にこの問題に取り組みたいと、裁判所としてこういう観点からこの問題に光を当てたいとおっしゃってるんだと思うので是非この観点で主張を追加したい」
(原告の高校3年生/渉さん)
「傍聴に来る人少ないだろうなと思ってたんですけど多かったですし。香川県のみならず全国でこの条例に対して問題意識がある方がたくさんいるんだなというのは肌で感じましたね」
次回の審理は、2021年3月15日に開かれる予定です。