岡山県の旧落合町・福田地区では毎年、年末になると干柿を使ったお菓子、巻柿が作られています。地域の人が手作りする冬の郷土の菓子を取材しました。
岡山県の旧落合町・福田地区(真庭市福田)です。風に揺れる枯れススキ。夜のとばりが下り、冬木立を月が照らします。
この時期、地域の伝統的な菓子「巻柿」作りに忙しいのは初岡人志さん(62)、明美さん(62)夫妻です。それぞれ、勤めの仕事があるため菓子作りは主に週末です。
巻柿。重ねた干柿に柚子を散らして巻いた郷土の菓子。
切り口がボタンの花に見えるため、別名「牡丹柿」とも呼ばれています。
(記者)
「柿の重みでずっしりきます」
初岡さんは年末になると毎年、近所の人たちと150~160本の巻柿を作っています。1本の巻柿には15~16個の干柿が使われます。
一つずつ切り開いて種をほじり出す根気のいる手仕事。材料の干柿を作るため、歩留まりも含めると毎年3000~4000個の柿をむくそうです。
巻柿は新年の最初のお茶会・初釜のお茶受けにされる他、この地区では「歳取り柿」といって正月に食べる習慣があります。
巻柿の材料は干柿と柚子だけ。甘味料などは一切使いません。
時間が経つとじわじわ柚子が溶け、甘酸っぱい味と香りが柿に染み込みます。出来上がったものは約1週間寝かせ、最後にわらで巻くと完成です。
食べ頃は更に1週間以上経ってから。
初岡さんは「味は天気、自然が決めるもの」と語ります。
(初岡人志さん)
「自然のあるがまま。柿があるままの状態を使ってるのでそれだけです」
(初岡明美さん)
「柿をむいて干柿になっていって、自然に粉が吹いてくるのを見ていると、仕事ではなく楽しみに変わっているような感じ」
近所の人を中心に販売しています。
※1本2500円(税込み)
年末恒例の菓子作りは、地域の人との交流の場にもなっています。