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【解説】去年相次いだ鳥インフルエンザ 業者「鶏肉の供給回復はまだ」警戒強める

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 去年、岡山・香川で相次いで発生した鳥インフルエンザ。今年も忍び寄る見えない敵に関係者は警戒を強めています。

 昨年度、全国の養鶏場では鳥インフルエンザが52件が発生し、過去最悪の約987万羽が殺処分されました。

 このうち香川県では去年11月から12月にかけて三豊市を中心に合わせて13件が発生し約180万羽を殺処分。発生が集中したエリアでは鶏肉や卵が出荷できない状態が長く続きました。

鶏肉業者の嘆き「親鳥の供給回復まだ」

 あれから1年。鶏肉の販売業者は「鶏肉の供給不足はいまだ回復していない」と話し警戒を強めています。

 鶏肉の小売りや卸しを手掛ける高松市の「サクマ」です。明治時代から続く老舗も去年、大きな打撃を受けました。

(サクマ/佐久間博司 専務)
「特に鶏肉の中でも『親鳥』のもも肉が供給量がものすごく下がってしまって、売る商品がないという状態が続きました。まだ回復は完全にはし切ってはいない状況です」

 香川県内の養鶏業者によると、鶏肉として出荷されるニワトリのうち「若鳥」は生育日数が40日から100日なのに対し、「親鳥」は少なくとも600日、2年近く生育に時間がかかるということです。

 そのため大規模な殺処分によって減った「親鳥」の出荷量が元の状態まで回復するにはより長い時間が必要になります。

(サクマ/佐久間博司 専務)
「骨付き鳥っていうのもすごく人気なメニューの一つでございますので、他県と比べると影響は大きかったですね」

 鳥インフルエンザの発生から半年ほど経った今年5月から7月には、香川県産の鶏肉の供給が3分の1にまで減りました。それだけに、業者は、今一層警戒感を強めています。

(サクマ/佐久間博司 専務)
「今年また鳥インフルエンザが再発してしまうと、販売するものがなくなってしまうという状態が発生してしまうかと思われます」

県も警戒強める 対策急ぐ「埋却地の確保」

(香川県畜産課/大谷徳寿 課長)
「(対策を)やってもやっても足りないという状況でございます」

 香川県は10月、県内全ての養鶏場に消石灰を配り、小動物などの侵入を防ぐネットなどの設備に不備が無いか立ち入り検査を行いました。

 加えて、対策を急いでいるのが殺処分したニワトリの死体を埋める埋却地の確保です。

(香川県畜産課/大谷徳寿 課長)
「昨年度の場合は埋却地が決まらずに防疫措置が長引いたという事例もありましたので、まん延防止をするために迅速に防疫措置をするということで、出来る限り早く死骸を処分するという形にしたいので、各農場に埋却地の確保をお願いしております」

 鳥インフルエンザを発生させないことはもちろんですが、もしも発生した場合はいち早く「埋却」などの防疫措置を終わらせることが、さらなる発生を防ぐことにつながります。

 国は殺処分したニワトリは原則として現地または近くで埋却するよう求めていますが、香川県によると県内178の養鶏場のうち3割ほどが「埋却地としての基準」を満たしていません。

 国の基準では1万羽を埋める場合、縦7m・横10m・深さ4mの広さが必要だとしています。

 これもどこでもいいわけではなく「水源の影響がない」「3年以上発掘されない」などの条件があります。

 去年、香川県では40万羽以上を殺処分した養鶏場もあり、数が多くなればなるほど場所の確保も難しくなります。

 そしてこの国の基準が明文化されたのは2011年です。

 香川県養鶏協会の志渡節雄会長は「基準が示される前に養鶏業を始めたために、埋却地の確保が難しい業者も少なくない。国や県と協力して対策を急ぐ必要がある」とコメントしています。

鳥インフル 2種類の型を確認 「全国どこにでもリスク」

 そんな中、今シーズンも秋田県、鹿児島県、兵庫県であわせて4件の鳥インフルエンザが発生しています。

 しかも、そのウイルスが1種類ではないんです。

 鹿児島県では今月2つの養鶏場で鳥インフルエンザが発生しました。しかし、1例目は「H5N1亜型」2例目は「H5N8亜型」とウイルスの型は異なりました。

(鹿児島大学 共同獣医学部/小澤真 准教授)
「より多様なウイルスがいろんなルートで日本国内に侵入している可能性を示唆している」

 鹿児島大学の小澤真准教授はさまざまな感染ルートが想定されるとしながらも、まずは基本的な対策を徹底してほしいと呼び掛けています

(鹿児島大学 共同獣医学部/小澤真 准教授)
「種類が増えたから現場としてどういう対応が求められるか、1種類しかないからこれで大丈夫だ、っていう話とは全然違っていて、あくまで高病原性鳥インフルエンザがいるかいないかでいうと、今シーズンもどうも国内にいっぱい来ていそうなので相応の対策をしていきましょうと。全国どこでも同じくらいリスクがあると思って備えていただくっていうのが求められる」

 小澤准教授は「鳥インフルエンザに感染した鳥の鶏肉や卵が食卓に上ることはない。鶏肉を食べることによる感染や体への悪影響はない」と消費者には冷静な対応を求めています。

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