厚生労働省は20日、アメリカ・ファイザー社製のワクチンについて対象を5歳から11歳の子どもに拡大することを正式に承認する見通しです。承認されれば3月以降に接種が始まる見通しです。ただ、現時点で子どもに接種を受けさせるか悩むという保護者の方も多いのではないでしょうか。子どもだからこそ注意しなければならない点もあり、自治体ではいろんなケースを想定して接種できる体制を整えています。
ファイザー社製ワクチンの接種対象拡大を承認へ
厚労省は午後6時から専門家でつくる部会を開いていて、アメリカ・ファイザー社製の5歳から11歳の子どもへの接種を正式に承認する見通しです。各自治体に対し3月以降の接種開始を想定して準備を進めるよう求めています。
これに対し自治体の対応は――。
(松木梨菜リポート)
「岡山市は市内の医療機関にアンケートを行って、対応できるところを募っている最中なんです」
市内約400の医療機関に意向調査を行い、現時点で100を超えるところが接種が可能と回答しています。
岡山市の5歳から11歳の現時点での対象者は約4万4000人。接種券の印刷準備なども進めていますが、これまでの接種と大きく違う点があります。
(岡山市 保健管理課/的場栄子 担当課長)
「お子さんですので動きが多かったりされるので、子どもさんの予防接種に慣れていらっしゃる小児科さん、こちらの方で接種ができるようにお願いしてる」
岡山市にある小児科のクリニックなどで個別接種が受けられるよう調整を行っています。一方で接種する際に注意すべき点もあるといいます。
(岡山市 保健管理課/的場栄子 担当課長)
「大人用のワクチンと子ども用のワクチンは全く違うものになっていますので、交ざって接種事故が起きないように、明らかに日にち時間を分けるようにお願いしています。副反応のことも含めまして、情報が出れば、それを速やかにお伝えしていくような形で接種を進められるようにしていきたいと思っています」
警戒を強める教育現場
(松木梨菜リポート)
「オミクロン株の感染拡大で全国の小中学校などではクラスターが発生しています。教育現場では警戒感を強めています」
岡山市の岡山中央小学校。教室では窓を開け常に空気を入れ替えています。
給食の時間は前を向いて一言も話さず「黙食」しています。さらに感染が広がらないある工夫も始めました。
(岡山中央小学校/小川泰永 校長)
「学校での危機管理を高くして。途中から調子が悪くなるような子が出ているので、健康の異変に担任が気を付けていて、すぐに調子が悪くなったら帰すと、そうすることで学校全体の健康管理が守れるという認識で指導しています」
他国の対応は?
ファイザー社製の接種について2021年12月20日時点では、アメリカとイスラエルでは5~11歳に対して推奨しています。一方、フランスでは重症化リスクのある子どもなどに推奨していたり、ドイツでも基礎疾患がある場合などは推奨。
国によって対応が分かれています。日本の保護者も悩む人が多いかもしれません。
川崎医科大学の中野貴司教授「天秤にかけて判断して」
政府の予防接種ワクチン分科会のメンバーで川崎医科大学の中野貴司教授は判断基準を示しています。
子どもの重症化率や後遺症、日常生活への影響と、ワクチンの有効性や安全性、注意する副反応などを天秤にかけて判断してほしいとしています。
子どもの重症化率は?
その子どもの重症化率ですが5~11歳は大人と比べて低いということです。ただ、通常の風邪と比べると肺炎になり入院する子どももいるので油断しないでほしいと警鐘を鳴らしています。
ワクチンの有効性は?
(川崎医科大学 小児科学/中野貴司 教授)
「これは海外での成績になりますけれども、ワクチンを打った方と打っていない方5~11歳で比べて、ワクチンを打った方は打っていない方々に比べて90%以上、発症、病気になることが予防できています。大人と同等の発症予防効果が確認されています」
「副反応」については?
(川崎医科大学 小児科学/中野貴司 教授)
「全身的な症状として体がだるくなったり熱が出たり、現状でのデータでは子どもさんのデータが大人より副反応の頻度が高いということは今のところはないですね」
海外の複数の国で実施された研究によると、5歳から11歳の子どもの2回目の接種後の副反応として最も多かったのが「接種部位の痛み」で約70%、次いで全身反応として最も多いのが「倦怠感」で約40%、「頭痛」が約30%などとなっています。
(川崎医科大学 小児科学/中野貴司 教授)
「国内でもいろんな議論があることは承知していますし、感染症は予防が大切だということにのっとった上で、適切な判断を下していただければよろしいかなと思います」
5歳から11歳の子どもを持つ保護者は――。
(母親[子ども小3])
「家族で相談して本人とも話をしてから様子を見て打とうかなと思っているんですけど、副反応がどれだけ大きく出るかが一番不安なところではあるんで、現時点では悩んでいますね」
中野教授が接種するにあたって今後の課題として挙げるのは、個別接種とするか集団接種も行うのか・副反応を疑う症状に対する小児救急体制が必要、この2点です。
接種を受けるか否か、中野教授は保護者には子どもの重症化率やワクチンの有効性、副反応などを加味して判断してほしいとしています。