高松市の寺でかつて弘法大師が造ったとされる「大日如来像」を再現するプロジェクトが進んでいます。構想から約10年。2023年、弘法大師・生誕1250年の節目を迎えるのを前に完成が近づいています。
弘法大師が造った大日如来を現代に…! 彫刻家・大森暁生さんに依頼
(彫刻家/大森暁生さん)
「約1200年前に空海が定義した完全版の大日如来というのは530年くらい前に焼失してしまって、以降、現在まで一体もこの世にないそうなんですね。それをよみがえらせようという」
講演で「大日如来」について話しているのは、彫刻家の大森暁生さんです。
三重県のミュージアムでは大森さんの彫刻家デビュー25年を記念した個展が開かれました。
実在するものや、架空のものなどさまざまな生き物をモチーフにした作品が並ぶ中でひときわ注目を集めるのは8頭の獅子像です。
剣をくわえたり、鉾を踏み折ったりとさまざまな姿を見せる獅子。それぞれが仏を護る明王を表しています。
(展示を見た人は―)
「今にも動き出しそうな一体一体がすごい迫力です」
「ただ荒いだけじゃない、荒い格好良さみたいな。それがすごいと思って」
平安時代の初めに真言宗を開いた弘法大師・空海が京都の東寺に造ったと伝わっている大日如来像。
記録によれば8頭の獅子の上に乗るような形で大日如来があり、光背の部分には37の小さな菩薩像があったとされています。
弘法大師が造った大日如来を現代によみがえらせようと大森さんに依頼したのは、四国霊場80番札所、讃岐国分寺の大塚純司住職です。
(讃岐国分寺/大塚純司 住職)
「計画をはじめてからは足かけ10年くらいになるんですけれども、これまでの仏像というのは過去の素晴らしい作品がたくさんありますのでそれに倣った形で造るのが通例なんですけれども、今回、大森暁生先生というね、彫刻家が何かのマネではなく一から創造するという、そういうことを通して生み出された、まさに令和の新しい大日如来ですので」
弘法大師が造った大日如来像を基に大森さんがデザイン
大日如来像は弘法大師が造ったものを基にしながら、デザインなどは大森さんに任せることになりました。
(彫刻家/大森暁生さん)
「通常の自分の作品ですと、図面を描いている時に完成のイメージが完全に細部までかなり出来上がって、そこに向けてこうひたすら突き進むだけなんですけど、今回ほどとにかく完成が見えずにというか、かなり見切り発車でスタートしてしまって、2年目、3年目ぐらいは自分の造る本尊のイメージっていうのは全く持てなかったんです」
工房で働くアシスタントや同じ大学で日本画を教える彩色の専門家、そして讃岐国分寺の大塚住職と何度も話し合いながら仏像造りは進んでいきました。
(彫刻家/大森暁生さん)
「大日如来の核になる部分というか、コンセプトというか主軸は明らかに僕と大塚ご住職の、これは合作だなという思いは完成に近づくほど本当に感じています」
仏像づくりに併せて大日如来を納めるお堂づくり
讃岐国分寺では仏像づくりに併せて大日如来を納めるお堂づくりを考えていました。しかし、これも一筋縄ではいきません。
讃岐国分寺は境内に奈良時代に建てられた国分寺の礎石が残っていて国の特別史跡に指定されています。そのため、新しくお堂を建てたり、今あるお堂の大きさを変えたりすることができません。
そこで大塚住職は、江戸時代中頃に建てられ大師堂や毘沙門堂として使われていた建物を、耐震補強しながら大日如来が納められるよう改修することにしました。
(讃岐国分寺/大塚純司 住職)
「許認可の関係ですごく難しかったところはあるんですけれども、これから仏像だけでなくお堂の方も、それにふさわしい、荘厳と申しますか、仏像と向き合える空間、理想の空間を目指してこれから準備の方も進めていきたいと考えております」
現在、全体の9割近くが完成しているという大日如来像。2022年中には、讃岐国分寺でその姿を見ることができそうです。
讃岐国分寺ではクラウドファンディングで仏像を完成させるための費用を募っています。詳細は讃岐国分寺のホームページでご覧下さい。