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【解説】JR西日本の赤字路線…今後の在り方は 100円の収入に約4000円の経費が必要な路線も

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 4月、JR西日本が利用者が特に少ない「赤字路線」とその収支を公表しました。岡山支社管内では3つの路線が公表の対象でした。中には100円の収入のために4000円近くの経費が必要な路線もありました。

 公表した背景には何があるのでしょうか。

JR西日本 岡山支社の「赤字路線」は3路線の6区間

 4月11日、JR西日本が発表したのは利用者が特に少ない「赤字路線」。岡山支社の管内で名前が挙がったのは芸備線、因美線、姫新線の3つの路線の6つの区間でした。

 2018年度から2020年度の平均の赤字額は、芸備線の備中神代と東城の区間が1億8000万円、因美線の東津山―智頭間が3億9000万円、姫新線の上月と津山の間は4億3000万円でした。

 100円の運賃収入を得るために費用がいくら必要かを示す「営業係数」。芸備線の備中神代と東城間は2018年度から2020年度の平均で、この営業係数が「3994」でした。つまり、3994円かけてようやく100円得られる計算です。

赤字路線の公表は「現状を理解してもらうため」

 2020年度の利用者が1987年と比べて90%以上減った区間もありました。

 JR西日本は「人口減少や少子高齢化、道路整備などローカル線を取り巻く環境が大きく変化している」としています。JR西日本が赤字路線の収支を公表したことを受けて、利用者からは「赤字路線の廃止ありきではないか」という声もあがりました。

 しかし、JR西日本の長谷川社長は、公表はあくまでも現状を理解してもらうためだと強調しました。

(JR西日本/長谷川一明 社長)
「全てをこれまで通りというのはなかなか難しい。どういうふうにしていくことが望ましいのか、私ども事業者・自治体・国が三位一体といいますか、一緒になって一人称(自分ごと)で一緒に考えていきたい」

 今回の公表について岡山県の伊原木知事は……。

(岡山県/伊原木隆太 知事)
「今ある路線というのが地域住民にとって非常に大事な生活路線なので、できる限り利便性を維持していただきたい」

地域の特性にあった公共交通の在り方を考える

 4月13日の会見で長谷川社長は、自治体や地域住民と話し合いながら地域の特性にあった公共交通の在り方を考えたいとして、「鉄道の転換」も方法の一つとしました。

 では、どのような転換方法があるのか。地域交通に詳しい専門家は……。

(ノートルダム清心女子大学 人間生活学部/大東正虎 教授)
「今までは鉄道で行けたところがタクシーで行かなければならないとなると、料金が高くなってしまいます。その分は自治体の方で補助するとか、バスを走らせるとか、タクシーのチケット制度を活用するとか、さまざまな方法を使って公共交通を維持する方法を考えていかないといけない」

「LRT」導入に向けた協議は中断…背景にあるのはコスト面

 この他「鉄道の転換」の一つとして考えられるのが「LRT」、次世代型の路面電車です。床が低いため乗り降りしやすく、騒音や振動が少ないのが特徴です。

 このLRTについて、岡山県では導入に向けた協議が進められていました。それが岡山駅と総社駅を結ぶJR吉備線です。

 沿線の岡山市と総社市、JR西日本の3者で2018年に吉備線のLRT化について合意し、約10年後の実現を目指して協議を進めてきました。

 しかし、2021年2月に協議の中断を発表しました。背景にあるのがコスト面です。

 試算によると、新しい駅の設置などに掛かる費用は約240億円で、3者が国の補助を活用しつつ負担する予定でした。しかし、新型コロナの影響でそれぞれの財政状況が悪化し、協議は中止されました。この新型コロナによってJRはさらに厳しい状況に立たされています。

新型コロナの影響で新幹線の利用者も減少

 JR岡山駅に到着した「新幹線」。新幹線の収益は在来線の赤字をカバーしてきたものの一つです。しかし、その新幹線も新型コロナの影響で利用者が落ち込んでいます。

 山陽新幹線の2022年2月の利用者数は新型コロナの感染拡大前、2019年の同じ月の35.1%でした。

 利用者数が回復しない中、JR西日本はコスト削減を図ろうと3月、ダイヤを改正。岡山支社の管内では岡山駅を発着する列車を56本減らしました。

 JR四国も運行の効率化を図るとして、3月のダイヤ改正で快速マリンライナーの最終列車を繰り上げるなどしました。

 更なるコスト削減として、今後どのようなことが行われる可能性があるのでしょうか。

(ノートルダム清心女子大学 人間生活学部/大東正虎 教授)
「少人化が考えられますね。自動改札を設けることで人手が必要ないという場合もありますので、そういったことは考えられます」

 大東教授が指摘するのは駅の「無人化」です。岡山支社の管内では4月1日時点で154駅中、約8割に当たる127駅が無人駅です。今後の「無人化」について岡山支社は、「現時点で具体的に決まっているものはない」としています。

一人一人が「鉄道」の在り方を考えて

 人口減少や新型コロナなどで厳しい状況に置かれている鉄道。そんな中で、一人一人が「鉄道」の在り方を考えてほしいと大東教授は指摘します。

(ノートルダム清心女子大学 人間生活学部/大東正虎 教授)
「地域に住まれる方自身がどういう公共交通を必要としていて、その中でJRをどれくらい必要としているのか。あまり使っていなかったのであればどういう原因で使われなかったのか、地域の中でJRを位置付けていく。それが必要かと思います」

 さまざまな観点から、地域の皆さんがまずは将来像を描く必要がありそうです。

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