9月29日に始まる瀬戸内国際芸術祭の秋会期では4つの島が会場に加わります。香川県観音寺市の伊吹島もその一つです。瀬戸芸に合わせて島を盛り上げようと、準備が進められています。
「イリコの島」として知られる観音寺市の伊吹島。観音寺港の沖約10kmにあるこの島には、2022年4月時点で426人が暮らしています。
造船所の跡地では、サウジアラビアのアーティスト、マナル・アルドワイヤンさんが作品の準備を進めていました。作品名は「浜辺の歌」。サウジアラビアに伝わる船乗りの無事を祈るための儀式を表現しました。
伊吹島の竹やイリコ漁で使っていた網を使い、9月17日には島民たちと一緒に祈りを捧げました。
(「浜辺の歌」を制作/マナル・アルドワイヤンさん)
「伊吹島の人たちがこの作品を“自分事”として捉えてくれると、島民たちも私が何を考えているのか、より深く分かってくれるような気がする。『浜辺の歌』は、サウジアラビアから伊吹島へのラブレターみたいなもの」
9月29日からの秋会期、伊吹島では4つの新作を含む8つの作品が展示される予定です。
瀬戸芸に向けて準備を行うのは、アーティストだけではありません。この日、観音寺総合高校の生徒は「お弁当」の試作品を作っていました。
観音寺総合高校では、旅行会社と協力して秋会期に合わせて作品を巡るツアーを企画しています。行われるのは10月29日と11月5日の2日間。このツアーで提供されるお弁当は生徒が作ります。
提供される「三観の宝弁当」は、伊吹島のイリコを使った「いりこめし」や島民から提案があった鰆の味噌柚庵焼きなど、地元の食材を生かして彩り豊かに仕上げました。
(観音寺総合高校2年/大林達起さん)
「お金を払ってもらって食べてもらうので、そういうことろでは、普段よりももっと気を付けて作らないといけないなという思いはありました。伊吹島でお弁当を楽しんでもらって、そこで何か伊吹島のイメージを、ちょっとでも明るくできたらいいなと思っています」
瀬戸芸の秋会期に向けて機械科の生徒たちもあるものを作ります。それが1枚の鉄の板を変形させた「いす」です。この「いす」は、伊吹島に設置する予定で瀬戸芸の公式ガイドブックでも紹介されるということです。
生徒たちは制作にあたって、秋会期に伊吹島で作品を展示する建築家ユニット「KASA」に協力を依頼しました。そして、一緒に島を歩いて作品を展示する場所を決めたりデザインを考えたりしました。
(観音寺総合高校3年/岩田琉聖さん)
「まさか瀬戸芸に関われると思っていなかったのでうれしいです。芸術家の人の考えと僕たちの考えは違うので、椅子だったりデザインを考えるのが大変でした」
そうして出来上がった「いす」は、正面からは「太陽」、横からは「月」に見えるようにデザインしました。
(観音寺総合高校3年/合田風太さん)
「太陽は昇っていって、沈んだ後は月が出てくるというサイクルを、伊吹島の方とかもずっとサイクルのように続いていけばいいなという願いを込めています。過疎化が進んでいるんですけど、その過疎化で終わるんじゃなくて、そのまま続いていってほしいなという願いはあります」
観音寺市によると、伊吹島の人口は1987年には「1575人」でしたが、その後、急激に過疎高齢化が進みました。2022年4月時点の島民426人の半数以上は65歳を超えています。
(50代の元島民は―)
「島自体に働き口があまりないので、漁師以外ないというか、だんだん人数も減ってきて。ちょっとさみしいですね」
3年前の瀬戸内国際芸術祭の秋会期では、延べ1万8000人以上が訪れました。一方、この3年で島民は1割以上減りました。
そんな中、島を盛り上げようと、一部の島民たちは「伊吹島元気隊」を結成し、活動しています。3年に1度、多くの人が島を訪れる機会を島の活性化につなげるために、島民も、アーティストも、地域の高校生も、さまざまな人が準備を進めています。
瀬戸内国際芸術祭の秋会期は9月29日に始まります。