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【特集】世界で唯一の「天体望遠鏡博物館」 使われなくなった望遠鏡の歴史と思いを未来へ 香川・さぬき市

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 9月12日は、「宇宙の日」です。宇宙飛行士の毛利衛さんが宇宙へ飛び立ったことを記念して定められました。
 そんな宇宙へと思いをはせる天文愛好家らがつくった、世界で唯一と言われる「天体望遠鏡専門の博物館」が香川県さぬき市にあります。ここには、全国各地からさまざまな望遠鏡が送られてきます。一つ一つの望遠鏡に刻まれた歴史や持ち主の思い……博物館はそれらを未来につなごうとしています。

 手作りの望遠鏡で夜空を眺める人たち。

(小学生は―)
「なんか無限に続いているような感じがして、暗ければ暗いほどきれいで明かりがなくたって見える」
「あんまりはっきりは見えなかったけど、やっぱりきれいだなって」

(中学生は―)
「空ってすごい広いんだなって思って。私は受験生なので、緊張とかもしているんですけど、たまには空にあるたくさんの星を見て、気持ちを落ち着かせたりするのもいいかなと思いました」

 この日は少し雲が出ていましたが、晴れた日には南の空に無数の星たちを見ることができます。

(天体望遠鏡博物館/白川博樹さん)
「ちょうど校舎が東西にありまして、向こう側が北なんです。北というのは高松の方向。すごい光がまぶしい高松とか瀬戸内海地方を背にして南側を向いて星が見れると。ここの地からミルキーウェイ・天の川などがきれいに見える。そういうことも、この場所の選定の大きな要因の一つでした」

 さぬき市の南部、多和地区にある「天体望遠鏡博物館」は世界で唯一の天体望遠鏡専門の博物館と言われています。

 オープンしたのは2016年の3月。天文愛好家らが国の補助金などを活用して閉校した小学校の校舎を整備しました。

 営業は土日が中心で100人ほどのボランティアで運営しています。多くの人に天文に興味を持ってもらおうと毎月、「望遠鏡を手作りする教室」や「夜空の観測会」といったイベントを開いています。

 また、「天文」の力で地域を元気にする試みも。今は小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウから回収した粒子のレプリカを展示しています。

 この日、博物館に1台のトラックがやってきました。積んでいるのは、口径50cmの大型の天体望遠鏡。一点モノで、総重量は3t近くあるとみられています。

(天体望遠鏡博物館/森好平さん)
「当時としては、かなり口径の大きい最大級の望遠鏡だったかなというふうに思います」

 この望遠鏡は1988年にオープンし、2021年3月に閉館した山梨県北杜市の自然休暇村にあったものです。閉館とともに廃棄される予定でしたが、休暇村を運営していた東京都の羽村市が「役立ててほしい」と天体望遠鏡博物館に譲り渡しました。

(天体望遠鏡博物館/森好平さん)
「古い望遠鏡も、非常にいい望遠鏡なんですが、使われなくなって眠ってしまったり、廃棄されたりするんですが、そういうものを、うちの博物館としては収集いたしまして、それを活用していきたい。それが、天文教育の普及に役立てばいい」

 天体望遠鏡博物館は、その名の通り、かつて使われていた天体望遠鏡を保存・展示し次の世代に歴史や文化を伝えようとしています。大型のものが年に2台ほど、小さいものも含めると毎年50台ほどが全国から送られてきます。時代の変化とともに使われなくなったものも少なくありません。

(天体望遠鏡博物館/白川博樹さん)
「昔は、月とかを学校で先生が見せたりする、そういう授業があったんですけど、それが今は、星座の動きとか、望遠鏡を使って見なくてもいいような授業しかないので、使われなくなったと。昔、そういう時代に買った望遠鏡が、そのまま使われずに置いてある。だんだん朽ちていって、ただ捨てるのは忍びないと。そういうことで私どもの方に来る」

 2016年のオープン時には約100台だった望遠鏡は、今では400台ほどになりました。中には、歴史的に貴重なものもあります。

(天体望遠鏡博物館/白川博樹さん)
「これは、イギリスのカルバーっていう方が作った望遠鏡です。(大きさは)当時東洋一と言われていました」

 この望遠鏡は、1890年ごろに作られ1929年に輸入されました。京都大学の天文台で使われていて、日本で最初の大型望遠鏡と言われています。

(天体望遠鏡博物館/白川博樹さん)
「アマチュア天文家育成のための一番の功労者の先生が使っていたということで、ご本尊のような形で古い方は見に来る人もいる」

 こちらは、1996年に「新しい彗星」を発見したアマチュア天文家の百武裕司さんが使っていた大型の双眼鏡です。彗星は百武彗星と名付けられ天文学に新たな知見をもたらしたと言われています。百武さんの死後、妻の昭子さんから寄贈されました。

(百武昭子さん)
「今、彗星の写真を見せていただいて、すごいなぁ。ここに寄贈するのがもったいなくなったくらい(笑)そのくらい懐かしいし、主人の魂の入った双眼鏡で、いろんな方に見てもらえることは光栄」

 届けられた望遠鏡には、それぞれに歴史と思いが詰まっています。天体望遠鏡博物館では、望遠鏡とともにメッセージを寄せてもらうようにしています。

(寄せられたメッセージ)
「半世紀前の天体望遠鏡がまた誰かのお役に立てれば幸いです」
「94歳で天国に旅立った祖父が愛用していたもの。祖父の思い出が詰まった望遠鏡みなさんで楽しんでいただけるとうれしいです」

 山間の小学校跡に作られた天体望遠鏡博物館は、きれいな星空の下で、全国から集まった人々の思いや歴史の輝きを未来へと引き継いでいきます。

(天体望遠鏡博物館/白川博樹さん)
「日本の貴重な文化遺産であるとともに、それぞれの人びとの思いもある望遠鏡に関して、思い・文化ともに保存していきたい。そして、後世につないで、昔はこんな人がいて、こんな文化があったんだということを残して、また、未来に向けてそれを利用して若い人を育てる、そういうような施設になったらいいなと思っています」

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