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【解説】2年後に「マイナ保険証」不安の声も 関係機関が指摘する課題とは

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 「マイナ保険証」について考えます。政府は2024年の秋に健康保険証を廃止し、マイナンバーカードとの一体化を目指すとしています。私たちにとって利便性は高まりそうですが、医療機関などからは不安の声も上がっています。

関係機関が指摘する課題とは

(松木梨菜リポート)
「こちらのクリニックの受付にあるのが、マイナンバーカードを読み取る機械です。顔認証か暗証番号を入力することで受付が完了します」

 岡山市北区にある「せとうちクリニック」は2021年春にマイナ保険証を読み取る機械を設置しました。

(せとうちクリニック/白石彰彦 理事長)
「薬歴に関してお薬手帳の代わりといいますか、薬歴の情報が入ってきますから、当てになると思います」

 「マイナ保険証」になれば健康保険証とお薬手帳、診察券を1枚で兼ねることができます。このほか、転職や結婚、引っ越しをしても継続して使えることなどもメリットとしてあげられています。

 一方で――。

(せとうちクリニック/白石彰彦 理事長)
「月に1人いるかいないかぐらいな。非常に利用は低調でございます」

 マイナンバーカード自体の9月時点の普及率は、岡山県が48.2%、香川県が47.7%と半数にも届いていません。健康保険証と一体化した「マイナ保険証」として使っている人はさらに限られます。

 街の人たちの間でもマイナ保険証に対しては温度差があるようです。

(マイナンバーカード所有 20代)
「財布に保険証とマイナンバーといっぱい入っているので、一緒になるなら楽かなと」

(マイナンバーカード未所有 70代)
「今、別に不自由しているわけじゃないから、今のままでいいかなと。24年までにやればいいかな」

 利用が広がっていない中、医療機関側はあと2年で「マイナ保険証」に切り替わることに不安を感じています。

(せとうちクリニック/白石彰彦 理事長)
「マイナ保険証でないと医療機関を受診できない。保険診療できないとすると不便じゃないかと思いますから、医療機関の立場としては両方使えるようにしていただいて」

 岡山市中区の薬局も読み取り機を導入していますが、こちらでも利用は低調です。

(赤松薬局/赤松昌夫 社長)
「この間セットが完了したところです。私や家内が一生懸命使っています」

 経営する薬剤師の男性は、ケアマネージャーでもあります。在宅療養している患者の自宅に薬を持っていくケースもあります。その場合、患者の保険証を借りて薬局で手続きすることもあるそうですが……。

(赤松薬局/赤松昌夫 社長)
「このサイズの機械を持っていくわけにはいかないので、マイナ保険証をお預かりして帰るとなると。(利用者は)お嫌な話だと思うんです。個人情報なので、私個人としても嫌な話だと思います」

 さまざまな個人情報が詰まっているだけに、扱う側も神経をとがらせているようです。ちなみに、過去に処方された薬や特定検診などの情報を、医療機関や薬局が閲覧するためには患者側の同意が必要です。

専門家「情報を整理して管理することが『社会保障費』の削減につながる」

 個人情報が一つに集まることを不安視する声もありますが、さまざまな情報を整理して管理することが「社会保障費」の削減につながるという専門家もいます。

(医療経営の専門家)
「ますます高齢化が進む中で、社会保障費も当然膨らんでいく。社会保障の無駄な部分をできるだけカットすることで持続できるようにしたいと。重複受診とか重複処方がいわれているんですけど」

 重複受診とは、一つの病気で複数の医療機関を同じ時期に受診することを指し、「はしご受診」とも呼ばれます。これは治療方針を選択するために、主治医以外の意見を聞く「セカンドオピニオン」とは異なります。

 必要以上の薬を処方される可能性があるほか、医療費も多くかかってしまいます。

(医療経営の専門家)
「デジタル化してしまえばチェックが入る。重複診療であるとか、診療自体に制限がかかる。行政サービスの効率化、無駄を省くという意味では避けては通れないことだと思います」

 国はマイナンバーカードの普及に向けて「マイナポイント」を付与しています。マイナンバーカードを新たに取得した人には最大5000円分、健康保険証としての利用申し込みをすれば最大7500円分がもらえるというものです。そんな中、総務省は19日、マイナンバーカードの全国の普及率が50%を超えたと発表しました。

 ただし、国民の側も医療機関の側もまだ十分に活用する体制が整っているとは言えません。

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