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【解説】「通り過ぎる街」から脱却へ 岡山・玉野市の観光戦略 2025年には万博と瀬戸芸“W開催“への期待も

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 9月29日、「瀬戸内国際芸術祭」の秋会期が始まりました。3年前の前回は過去最多の延べ117万人以上が訪れました。一方、2022年は新型コロナウイルスの感染拡大と重なり、春会期と夏会期の来場者数は前回の約6割にとどまりました。

 会場別にみると「春会期」の来場者数が唯一、前年よりも増えたのが岡山県玉野市の宇野港周辺です。秋会期では、外国人観光客にも期待をふくらませています。

瀬戸芸・秋会期で回復目指す 玉野市の観光客誘致策

 玉野市ではJR宇野駅近くの商店街にも瀬戸内国際芸術祭の作品が展示されています。

(瀬戸内国際芸術祭 実行委員会/矢野美夏さん)
「築80年くらいの建物なんですけれど、増改築を繰り返したことで、いろんな歴史の積み上げでしたり、つながりであったり、そういったものを表しています」

 過去の瀬戸内国際芸術祭で玉野市は港周辺に作品が集中していましたが、2022年は春会期から商店街にも3つの作品を展示しています。

 他の会場では午後5時まで、という展示も多い中、島から帰ってきた観光客が巡ることができるように公開時間を午後7時までに設定しました。商店街での展示に向けては、市や地域住民が使われていない病院やビルの持ち主と交渉し実現させました。狙ったのは「回遊性のアップ」です。

(玉野市 産業振興部/大倉明 部長)
「街中の空き家とか、空き地も含めて、こういった場所に作品があると、非常に回遊してもらえるんじゃないかと。通り過ぎる街から少しずつ脱却」

 玉野市はこれまでも国内外の観光客を呼び込もうと、まちづくりを進めてきました。

 1988年。当時、瀬戸大橋の開通に伴う連絡船の廃止と造船不況に悩んでいた玉野市は、宇野港周辺の5.1ヘクタールの土地にテーマパークをつくる「スペイン村」構想を掲げました。しかし、バブル崩壊で資金調達が難しくなり、2005年に土地を売却しました。

 この土地は現在民間企業によって整備が進められていて、2021年7月には「UNO HOTEL」がオープンしました。

 このほか、宇野港周辺では2022年3月にも新しいホテルがオープンしました。街中にもゲストハウスや飲食店などさまざまな施設ができる中で、今後期待するのは「インバウンド」の回復です。

(玉野市 産業振興部/大倉明 部長)
「(春・夏会期は)ほぼインバウンドの方が減った分だけ、来場者が減ったというような実情もあります。インバウンドの方が来られるというのは、もうめちゃくちゃ期待しています」

 岡山県の外国人旅行者の宿泊者数は、2011年度以降は大きく伸びていましたが、2020年度からは新型コロナの影響で激しく落ち込んでいます。それでも、最近は水際対策が徐々に緩和されていて、政府は10月11日以降、外国人の個人旅行を認めるほか、これまで5万人としてきた1日当たりの入国者数の上限を撤廃することを決めました。

 ホテルも瀬戸芸の秋会期で外国人観光客を迎える準備を進めています。

(UNO HOTELを運営 宇野港土地/片山徹 シニアマネージャー)
「外国語対応ができるよう、スタッフ教育に力を入れています。海外の方から予約できるサイトと契約をしたり、いろんな方面から予約しやすい環境を整備している状況です」

 「秋会期」は「春」「夏」以上にインバウンド需要が期待される中、関係者がより注目しているのが「2025年」です。

 瀬戸内国際芸術祭は3年に1度開かれているので、次回も開催されれば、「2025年」が予想されます。

 さらに2025年には、4月から大阪・関西万博が開かれます。「万博」と「瀬戸芸」のダブル開催となれば、より多くの外国人観光客が期待されます。この2025年を見据えた動きも出てきています。

万博と瀬戸芸のW開催なるか 2025年への期待感

(RE-SORT/木村麻子 代表理事)
「2025年という、本当に世界中の方々が瀬戸内に訪れるというチャンスの時を迎える目前に来ている」

 2022年4月に高松市で設立された一般社団法人「RE-SORT」は、2025年に海外の要人や旅行者を瀬戸内エリアでもてなすために、世界の基準に合った「食」のガイドブック制作を始めています。

(RE-SORT/木村麻子 代表理事)
「今年はこの魚をぜひ食べましょう、この魚はもう少し育てましょう、もう少し残しましょう、そういった魚のガイドが今、世界各国で取り入れられていて、その瀬戸内版というものも必要だと思っていまして。手掛けていけたらいいなと」

 玉野市も万博と瀬戸芸のW開催には大きな期待を寄せています。

(玉野市 産業振興部/大倉明 部長)
「2025年の大阪・関西万博は、日本全体としても大きな起爆剤になります。瀬戸内国際芸術祭が開催されれば、我々もその大きな起爆剤に乗っかって、民間の方たちも一緒になって、もっともっとにぎわいが生まれるように頑張っていきたいなと」

 一方、観光人類学に詳しいノートルダム清心女子大学の小野真由美准教授は、1つのイベントに依存する危うさを指摘します。

(観光人類学に詳しい ノートルダム清心女子大学/小野真由美 准教授)
「一要素だけに依存するような観光は、サステナブル(持続可能)じゃないので、国内の観光需要がインバウンドを活性化するためにも、要になってくる部分があると思う」

 さらに、国内の需要喚起のためにも、地元の人がより地元の良さを実感し、発信することが大切だと考えています。

(観光人類学に詳しい ノートルダム清心女子大学/小野真由美 准教授)
「来た人たちが地元の人たちが、やはりここで豊かに暮らしていることをやはり見ること、それがやはり観光、岡山を発信する上で非常に重要。この観光地が素晴らしかったということに非常につながるし、また来たいって思うんだと思う」

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