香川県三木町は今、「イチゴ」で町を盛り上げようと取り組みを進めています。毎年のように新しくイチゴ農家になる人がいますが、中にはちょっと変わった経歴の持ち主もいます。
1月に高松市で開かれたイベント、「三木町いちごの日」。会場では香川県オリジナル品種の「さぬきひめ」やイチゴのスイーツが販売され多くの人が訪れました。
三木町のイチゴの出荷量は香川県の自治体で最多! 中でも「女峰」の出荷量は全国で一番です。
2022年からアニメ「それが声優!」のキャラクター「萌咲いちご」が町のいちご大使を務めています。
(神奈川県から来場)
「やっぱり萌咲いちごを目当てに……」
ちなみに「萌咲いちご」は香川県出身でイチゴが大好きな新人声優……だということです。
三木町のイチゴ農家、河野大輔さん(42)。約2000平方メートルの畑で香川県オリジナル品種の「さぬきひめ」を育てています。イチゴ農家になって、もうすぐ4年が経ちます。
(イチゴ農家/河野大輔さん)
「1年目、2年目はあんまり人も雇ってなくて、毎日の出荷まで持っていくのが大変だったので、本当に今年から初めて楽しいと思った。『イチゴと言ったら春だろ』と、春の特集に持ってこようとするんですけど、本当に見てほしいのは今の時期だと思います。今がおいしいと思います、絶対」
河野さんは中学・高校時代を三木町で過ごしました。大学を卒業後、23歳で上京。
お笑い芸人として、M-1王者の錦鯉やR-1王者のハリウッドザコシショウらと同じ舞台に上がったこともあります。しかし2017年に芸人を引退、その年の10月に三木町に帰ってきました。
(イチゴ農家/河野大輔さん)
「そもそも地元愛がすごいある人ではないんですけど、『この景色でやりたいな』っていうのはありました。『三木町でやるんやったら、ブドウじゃなくてイチゴやったら?』という声があって……」
イチゴ農家になることを決めた河野さんは、先輩農家のもとで研修するなどし、2019年3月に独立しました。
1月時点の三木町の人口は約2万6000人(2023年1月時点)。ほかの地方と同じように人口減少対策が課題です。そんな中でも、毎年のようにイチゴ農家を希望する移住者がいるそうです。
(三木町/伊藤良春 町長)
「三木町でイチゴを作りたいという方は、絶え間なくと言いますか、継続的にでてきているのは、ありがたい。その要因っていうのはやっぱり、ちゃんと指導してくれる先輩たちが、非常に丁寧にお迎えしていると。イチゴを作る伝統的な農家、取り組む方が多かったというのが大きな要因ですね」
三木町の歴史をまとめた「三木町史」を見てみると、イチゴ栽培が始まったのは約60年前、昭和35年ごろです。1996年には当時のJA三木町と香川大学などが、「らくちん」栽培と呼ばれる栽培方法を共同開発。
これ以降、三木町のイチゴの出荷量が伸び、1995年度は427tだったものが2020年度には591tになりました。JA香川県によるとその後、「らくちん」栽培は県内全域に広がり、現在はイチゴ農家の9割ほどが取り入れているということです。
2019年にイチゴ農家になった河野さん。朝5時半からの収穫作業が落ち着くと、スタッフと一緒に朝ごはんです。
(農場のパートは―)
「河野さんがJAのインターンで実習生で来た時から知っているけど、こう見えて緻密にイチゴの成長を2カ月・3カ月先まで見越して計算高くやっている」
(イチゴ農家/河野大輔さん)
「みなさんからパック詰めとかを教わってた関係性だったんですけど、まあ独立したら逆転しますよね」(一同笑い)
朝ごはんのあとは、収穫したイチゴを手作業でパックに詰めていきます。この日は贈答用も含めて約300パックを詰め、出荷しました。
河野さんはハウスで苗の手入れなどしていつも午後3時ごろに全ての作業を終えます。それを毎日、1年間ほぼ休みなしで作業しています。
(イチゴ農家/河野大輔さん)
「三木町は、先輩方とかJAの販売担当さんとか含めて、すごい歴史があるので、先輩方の努力のおかげもあって、切磋琢磨しているというか、みんな声には出さないですけど、うちも負けてられないなというか、ちょっと刺激をしあっているところがあって」
三木町は今、「イチゴ」を軸にして町の魅力を発信しようとしています。
小学校跡を利用した、夏にイチゴを収穫する試みも行われていて、町は「1年中イチゴが食べられる町」を目指すとしています。
そんな地域の中で河野さんが抱く夢は――。
(イチゴ農家/河野大輔さん)
「みんなで盛り上げるときに、ちゃんと真ん中に中心人物にいれるようになりたい。できたら、三木町役場の横に銅像立ててほしいですよね……全然しまらんやん(笑)」