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【特集】苦境続く『赤字路線』JR芸備線の今後は 専門家「便利じゃないと…」 存続危ぶむ声も 岡山

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 岡山県新見市や広島県の北部などを走るJR芸備線は、利用者が少なく厳しい経営状況が続いています。存続を危ぶむ声も上がる中、JRと自治体との間で「今後」についての議論が続いています。

 JR芸備線は、新見市の新見駅から広島県北部を通って広島駅まで走る路線です。JR西日本の調査によると、新見市と、隣接する広島県庄原市では、利用者の9割近くが「通学」目的でした。

(高校生は―)
「ほぼ毎日使っている」
「通学が車になったりしたら親に迷惑が掛かる。いろんな人に利用してもらって、長く続いてほしい」

 今、芸備線を巡っては存続を危ぶむ声が上がっています。

 2022年4月、JR西日本は、特に利用が少ない17路線30区間の経営状況を初めて公表しました。岡山県では3路線5区間が対象で、芸備線の新見市から庄原市の区間も含まれています。

 JR西日本は、経費をどれだけ運賃でまかなえているかを示す「収支率」を公表。新見市の備中神代駅と庄原市の東城駅の間は、2017年度から2019年度の平均で2.4%でした。また、東城駅と庄原市の備後落合駅の間は、さらに低い0.4%でした。

(JR西日本岡山支社/須々木淳 副支社長)
「利用促進ということにとどまらず、地域の実情を踏まえて、特定の前提を置かないうえで、将来の地域公共交通の姿についても速やかに議論を開始させていただきたい」

 JR西日本は2021年から、岡山県や新見市など沿線の自治体と一緒に芸備線の今後を考える検討会を開いています。2022年5月の会合でJRは、「存続・廃線も含めて公共交通の在り方を検討したい」と呼び掛けました。

(JR西日本岡山支社/須々木淳 副支社長)
「全ての前提を無くした上で、将来の公共交通の姿について話し合いをしていけたらと思います」

 JR西日本の主張について、公共交通政策に詳しい名古屋大学の加藤博和教授は……。

(名古屋大学/加藤博和 教授)
「収入の100倍以上もつぎ込んでいる路線を運営していることが、当たり前なんでしょうかと。あなたはそれをやりますかと、自分が経営していたら、やらないんじゃないかなと。もっと少ないお金で、同じことや、もっと良いことができるのであれば、そうするのが普通ですよねと。それを問題提起している」

 2月には岡山県と広島県が合同でJR西日本にヒアリングする場が設けられました。しかし……。

(岡山県県民生活部/池永亘 部長)
「今回のヒアリングにつきましては、以前からJR西日本が開催を求めている、芸備線の在り方についての議論の場ではございません。あくまで芸備線の『維持・利用促進』に向けた今後の取り組みの参考にするために詳しいお話をお聞かせいただきたい」

 岡山県などは現時点で、廃線も含めた「在り方」自体の議論には応じていません。

 これについて岡山県は、JRの細かい経営状況が見えないことや、国の方で地域公共交通の再構築や財政支援に向けた動きがあることなどを理由に挙げています。

(岡山県県民生活部/池永亘 部長)
「いくらかは、我々の考えていることやJRの実態が聞けた。こういった場で直接聞くことができたので、そういう意味では有意義なヒアリングだった」

(新見市交通対策課/古家孝之 課長)
「県・国を交えて、どうしたらいいのかっていうのを、全国的な話でもあると思うので、その辺を大きな話として考えていただければと思うし、我々もJRと一緒になった利用促進をやっていかないといけないと思う」

 新見市は、鉄道をテーマにしたフォトコンテストを開いたり、最寄りの駅までの乗り合いタクシーを運行したりして利用者を増やそうと取り組んでいます。

 しかし、人口減少が進む中、利用者を増やすことは簡単ではありません。新見市の人口は2018年1月時点で3万人あまりでしたが、そこからの5年間で3000人以上減りました。芸備線を多く利用している10代以下の世代も800人近く減りました。

(名古屋大学/加藤博和 教授)
「『鉄道に乗ってください』と言ったときに、不便だったら高校生はそこにもう住みたくなくなりますよね。そういう先輩を見ていたら、後輩は『ここから高校に通うのは嫌だから下宿する』ってなるでしょうきっと。それってますます人口減少を加速させますよね」
「公共交通の大事なところは『便利じゃないとだめ』ということ。どうして残さないといけないのかが、明確じゃないといけない。沿線の皆さんが乗ることで協力するか、イベント列車とかの企画に協力するか、そういうことでないと難しい」

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