「四国新幹線」について考えます。四国新幹線は文字通り「四国と本州を結ぶ新幹線」で四国4県などが国に整備を求めています。しかし、1973年に基本計画が策定されましたが、その後50年経っても工事などは始まっていません。四国新幹線は本当に実現するのでしょうか?
動き出した?四国新幹線
6月6日、愛媛県で開かれた四国知事会議で「四国新幹線」が議題に上がりました。
(徳島県/後藤田正純 知事)
「徳島駅で四国新幹線の夢が一時停止していたような気がします。四国4県が一つになって現実的な夢に改めてスタートしたい」
四国4県が実現を求めてきた「四国新幹線」。
しかし、四国と本州をつなぐルートについてはこれまで香川・愛媛・高知の3県が瀬戸大橋を渡る「岡山ルート」を、徳島県は大鳴門橋を渡る「淡路島ルート」での実現を求めるなど必ずしも足並みはそろっていませんでした。そんな中、徳島県の後藤田正純知事が「淡路島ルート」の撤回を表明、四国4県がまとまって「岡山ルート」での実現を国に求める考えを示しました。
(香川県/池田豊人 知事)
「法定調査の実施をこの機に一緒に強くはたらきかけていきたい」
四国知事会議で4県は2007年を最後に中断している法定調査の再開を国に求める緊急提言を採択しました。
四国4県がまとまったことについて、四国新幹線の運行を担う可能性が高いJR四国の西牧社長は……。
(JR四国/西牧世博 社長)
「岡山ルートの方が建設費も安くつくので、そういう意味ではハードルは下がる」
四国新幹線が実現すれば高松と松山の間が今より100分短い「42分」で、四国4県の県庁所在地と新大阪は1時間半前後で結ばれると想定されています。
(JR四国/西牧世博 社長)
「鉄道の高速化というのは、鉄道事業者にとって最大の武器。歓迎する事業であります」
四国4県と経済団体などでつくる「四国新幹線整備促進期成会」の佐伯勇人会長が期待を寄せるのは、新幹線整備による「経済的な波及効果」です。
(四国新幹線整備促進期成会/佐伯勇人 会長)
「観光振興でたくさんお客さんがお見えになるようになった。いわゆる誘客力が非常に向上したといったようなこともある。時間的距離が短くなることで、ビジネスの展開・環境も非常に向上していくというメリットが出てくると」
現在、日本の地方で新幹線が通っていないのは「四国」だけです。
四国新幹線については、1973年に策定された「基本計画」で止まっています。今、期成会などが目指しているのは、着工を前提とする「整備計画への格上げ」です。
(記者リポート)
「四国新幹線の整備に必要なのは地域全体の盛り上がりですが、市民からは懐疑的な声も上がっていて、温度差があるようにも感じます」
(市民は―)
「実現できると思いません。莫大なお金を使ってね、赤字でしょ、新幹線造って、(経営が)回っていかなくなったら」
「ないよりはあった方がいいんじゃないかなと。(Q.実現できると思いますか?)お金があったらいけるんじゃないですか?」
「今はそこじゃないかもしれん。県民とかはそこまで望んでないかなという印象」
期成会が行ったアンケートでも「整備について不安な点はありますか?」という問いに対し、半数が「赤字になる」、3割が「費用は大丈夫?」と答えました。
2014年、四国4県と経済界などは四国新幹線の費用対効果を試算。
新幹線事業の収益や観光客の増加などに加えて、移動時間の短縮や乗り換え回数の減少など利便性の向上も金額に換算しました。
その結果、費用対効果は「1.03」。効果が費用をわずかに上回り「採算がとれる」という結果を公表しました。
四国新幹線「財務面」は?
この調査によりますと、四国に新幹線ができた場合の年間の経済効果は169億円と試算されています。
一方、事業費は約1兆5700億円と試算されています。このうち建設費は国が3分の2、沿線の自治体が3分の1を負担することになっています。
さらに国から交付税の支援を受けられるため、建設費の負担額は全ての地方自治体を合わせて2000億円から3000億円ほどになると見込まれています。
また、この「建設費」をまかなえたとしても財務面での懸念は残ります。
地域の公共交通に詳しい青山学院大学の福井義高教授が指摘するのは「維持・管理費」です。
(青山学院大学/福井義高 教授)
「最初、政治力で造ることができても、その後の維持更新については予算が手当てされないわけです」
新幹線が整備された地域では、JRが独立行政法人「鉄道・運輸機構」から新幹線の車両や線路を借りて運行する形をとっています。
これに対して、JRは維持管理など運行にかかる費用を負担するほか「貸付料」を支払います。
この「貸付料」は新幹線を整備した場合に想定される収支改善効果を基に決められます。そのため、新幹線単体で利益をあげたとしても貸付料の金額によっては結果としてJR四国の負担が増えることが懸念されています。
(青山学院大学/福井義高 教授)
「いずれはギブアップせざるを得なくなると、すると、維持するために税金を入れようかっていう話になって、本当にそんな話が将来通るのかどうか、あるいはそんなお金の使い方が有効であるかどうか」
2022年9月に佐賀県武雄市と長崎市の約66kmの区間で開通した西九州新幹線は6200億円かけた費用の半分しか、便益が得られないと評価されています。
(青山学院大学/福井義高 教授)
「今の西九州新幹線がランニングコストも賄えていません。維持更新なんかも全く駄目。要は日々運行するのすら賄えないレベルの客しかいないんですけど、四国新幹線も恐らくそのレベルになりますから。むしろ、僕は四国はですね、九州や北海道と違って『新幹線がないことはメリット』と感じてほしい」
JR四国の鉄道事業は、1987年に発足して以降ずっと赤字で、厳しい経営が続いています。
四国は今後も人口減少が想定されていますが、期成会は「新幹線が地方創生のための投資」だと必要性を訴えています。
(四国新幹線整備促進期成会/佐伯勇人 会長)
「人口は減るんでしょうけれど、最近はやりのDXであったり、IT関係、AIもどこまで発達するかも分からない。経済・社会環境が大きく変わってくると、どういうまちづくりをしたいのかが先にあって、四国新幹線というのを『どう位置付けどう使っていくのか』というのを合わせ技で考えていく、こういう視点がこれからは重要ではないか」