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【解説】事故やトラブルにもつながる「放置艇」…全国2番目に多い岡山県が対策強化へ 放置艇所有者「泊める所がないから…」

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 岡山県は、許可なく泊められた船、いわゆる「放置艇」の対策を強化することを決めました。この放置艇は思わぬトラブルにつながる可能性があります。

「放置艇」の現状と課題

 岡山市東区の港にはたくさんの船が泊まっていました。

(記者リポート)
「こちらの岸壁につながれているのは漁船です。そして、あの向こう、防波堤につながれているのは放置されたプレジャーボートです」

 これらの許可なく泊められた船は「放置艇」と呼ばれています。

 さらに、船をつなぐための設備や足場を管理者の許可を得ずに取り付けたものも多く見られました。

 これら「放置艇」は、すぐに所有者が分からないことが多く、トラブルにつながることもあるそうです。

(九蟠漁協/藤原誠 組合長)
「誰も管理していないような船が台風の時に沈んで油が漏れることが(よく)あり、昨年もここで船が沈み油が漏れて対応しました。雨が降って川が増水したときに、ノリ養殖の網にひっかかって迷惑したことがあります。網が破れたり収穫できなくなったり、その船を沖から、こちらまで引っ張って帰らないといけない。大変です」

 旭川の下流、岡山市南区のこの場所にも放置艇がつながれていました。沈没した船もあります。

 このほか、無許可で造られた桟橋の中には崩れかかっているものもあります。

(岡山河川事務所/岩川宜嗣さん)
「このような状態での放置は非常に危ないと考えています。放置された船舶や壊れた桟橋などが流された場合には、橋そのものが傷ついて壊れてしまう。コンクリート護岸や石の護岸、堤防といったものを傷つけ、そこから堤防の破堤などしますと、多くの人命が失われるような大洪水、洪水被害を引き起こすということにつながりかねない」

 「放置艇」は洪水での2次災害や漁業・環境への悪影響以外にも、犯罪に使われたり、子どもが遊んでいて事故に遭ったりするリスクもはらんでいます。

 放置艇の調査は全国的に4年に1度行われています。岡山県によると、2022年度は岡山県で6373隻が確認されました。4年前の調査より1000隻以上増えています。

 県は船の所有者に対し、民間のマリーナや自治体などが運営する係留施設を使うよう呼び掛けています。

 県が管理する倉敷市玉島乙島の施設を利用する場合、1年間の費用は1隻あたり4万円から7万5000円ほどです。

 一方、「放置艇」の所有者からはこんな声も……。

(放置艇の所有者)
「(船を)泊める所がないからや。ある程度泊めるところをつくってもらいたいという気もある。そりゃまあ、すぐできるものじゃないけどな」

 2022年度の岡山県の調査によると、県内では放置艇を含めて1万752隻の船がありましたが、正規に船を泊められる場所は約4000隻分しかないということです。

収容できない…「放置艇」

 もともとプレジャーボートなどの船は、車の「車庫証明」のような保管場所の登録が義務付けられていません。そのため、保管場所がなくても購入することができ、収容能力以上の船が存在することになってしまいます。

 2018年度の調査では、全国で7万隻あまりの「放置艇」が確認されました。最も多かったのは広島県、2番目が岡山県でした。(広島県 1万687隻、岡山県 5217隻、香川県 1593隻)

 この状況を打開するため、岡山県は国や自治体、警察などとも連携した新たな対策に乗り出しました。

「放置艇対策」本格化

(岡山県港湾課/和田英樹 参事)
「これまで『放置艇対策』に関しましては、30年40年というスパンでずっと問題にはなっておりました。今、機運が高まった状態ですので、この機運を逃さずに対策を積極的に進めていきたいと考えております」

 岡山県や国、関係する自治体、警察などで作る「岡山県プレジャーボート対策推進会議」は2022年3月、今後の対策の基本方針をまとめました。

 対策の柱の一つが、罰則付きの「放置等禁止区域」の指定です。

 「禁止区域」は県内全域の沿岸部や一部河川の下流域が対象となります。このほか、農業用水やため池の一部も対象に含まれます。

 推進会議は「禁止区域」を2025年度から適用することを目指しています。

(岡山県港湾課/和田英樹 参事)
「港湾で締め出しをする。そうすると河川であるとか漁港であるとかに放置艇が逃げて行ってしまって、そちら側にご迷惑をおかけする。一斉に管理者が放置艇等禁止区域をかけることによって効果を上げる狙いがあります」

 禁止区域に許可なく泊めるなどした場合、港湾法・河川法などに基づいて罰金や懲役などの罰則が適用されます。

 港湾の場合は1年以下の懲役、または50万円以下の罰金となります。岡山県で罰則付きの対策がとられるのは初めてです。

 対策のもう一つの柱が収容能力の拡大です。

 正規に船を泊められる場所は2022年度時点で約4000隻分でしたが、岡山県などは禁止区域の適用までに約1万1000隻分の確保を目指しています。

(岡山県港湾課/和田英樹 参事)
「(船の)収容能力の拡大と規制の強化、この両輪で(対策を)進めていくことが有効だと考えております」

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