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【特集】障害者支援施設の契約解除から6カ月…利用者の今 通所施設も利用し裁判所の判断待つ 高松市

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 高松市にある知的障害者の入所施設が職員の大量退職を理由に利用者9人の契約を解除した問題です。安心できる「居場所」を突然失ってから半年……。利用者の今を取材しました。

約14年半入所していた男性(35)は…

 藤岡あゆみさん(59)と息子の龍史さん(35)。龍史さんは、重度の知的障害があり、3歳で自閉症と診断されました。

 2023年9月、約14年半入所していた知的障害者支援施設の契約が解除。初めの2カ月はあゆみさんの介助のもと自宅で過ごしていましたが、今は通所施設を利用しています。

(藤岡あゆみさん)
「次新たに(入所施設を)探すって言ってもやっぱりいっぱいで、どれほど待てばいいかというのもありますよね。ならば少しでも早くどこか通所、とりあえず通所を受け入れてくれるところがあればという感じになった。少しでもウインドヒルに戻るという希望はあるかなと思っていましたけど……」

 龍史さんが利用していた高松市三谷町の「ウインドヒル」は、親が亡くなった後も自閉症の人たちが安心して暮らせるよう保護者らが寄付金を出し合い、2004年に開設しました。

 2023年9月までは自閉症と診断された重度の知的障害者を中心に47人が利用していました。

 しかし、2023年の6月から7月にかけて職員全体の約3割に当たる11人が退職。職員の配置基準は満たしていましたが、施設は「利用者の安全を確保できない」として利用者9人を指名して契約を解除しました。

利用継続など求め裁判所に「仮処分」申し立て

 契約を解除された9家族は、2023年9月、利用の継続と補償を求めて高松地方裁判所に「仮処分」を申し立てました。仮処分は、緊急性が高い事案について裁判所が暫定的な措置を決める民事上の手続きです。

(記者)
「正当な理由なくサービスの提供を拒むことができない社会福祉法人。職員の大量退職が利用者9人の契約を解除するやむを得ない理由に当たるのかが争点です」

 2月28日。申し立てから約半年が経過しようやく審理が終了しました。

(龍史さんの父/藤岡幸弘さん[60])
「非常に長いという印象しかありません。(Q.今でも、ウインドヒル、入所施設に戻れたらいい?)いろんな選択肢があると思うのでこれから考えていきたいと思いますけど、最終的にはそうは思っています。今も思っています」

(契約解除された家族の代表/岩部雅人さん[70])
「やっぱり親亡き後ということで入所施設を作ったわけですから、どうしても、ウインドヒルに帰りたいという気持ちはみんな強い」

 ウインドヒルの運営法人を指導監督する高松市は、「同意なしに強制退所させることは人権上問題」として当初、業務改善勧告を出すことを検討するとしていましたが……。

(高松市/大西秀人 市長)
「それ以降、状況は訴訟手続きの方に移っている。それを注意深く見守っている。(裁判所の決定の)方向性に応じて市としても適切に対処して参りたい」

契約解除を聞いた法人が通所施設を開設 元利用者・職員を受け入れ

 藤岡龍史さんら契約解除された9人のうち4人は、2023年11月から高松市林町の通所施設「ルシエル」を利用しています。
 この日は、しめ飾りの一部に使われる古代米を穂先をそろえて束ねる作業をしていました。

(ルシエル 支援員/村川文生さん)
「ここに馴染むにも時間がかかりましたけど、ようやく慣れてきてもらっているかなという感じです」

 この施設は、ウインドヒルでの契約解除について聞いた社会福祉法人「創思苑」が開設しました。利用者だけでなく、5人いる職員もウインドヒルに解雇されたり退職したりした人です。

 白井麻美さんはパートとして14年間ウインドヒルで働きましたが、2023年7月に退職しました。

(ルシエル 支援員/白井麻美さん)
「利用者さんと一緒に支援して働くというのは苦じゃなかったんですけど、(人が辞めて)作業量が増える、した仕事に対して正当な評価がない。言ったら、何しても怒られるみたいな感じだとやっぱりしんどくなります。自分を守るために退職を決めた」

 村川さんも、常勤職員として12年半勤めていましたが、2023年3月に解雇されました。以前から関わっていた龍史さんの「顔を洗いすぎてしまう」というこだわりを少しでも軽減しようと努めています。

(ルシエル 支援員/村川文生さん)
「洗っちゃうと肌が荒れるからダメだと言うと、余計に洗いたくなるので、そのこだわりも受け入れて『時間決めて洗おうね』ということで今落ち着いてきてます」

 利用者・職員を受け入れた法人は――。

(社会福祉法人 創思苑/植田 弘さん)
「ニュースで初めて知った時からひどい話だなというのが真っ先な感想で、お住まいを提供するということは難しかったけれど、本人も家族も家でつぶれるんやったら、うちにできることはしようということで」

 また、植田さんはこれをきっかけに入所施設以外の選択肢として、より地域と関わる機会が多い通所施設での支援についても考えてほしいと話します。

(社会福祉法人 創思苑/植田 弘さん)
「(仮処分の)結果がどうなるか分からないですけど、このままぜひうちに残ってほしいですし、どんなに重度の障害があっても地域で暮らしていけるということを理解していただいて、通所施設とグループホームで過ごすという形でこれが広がっていったらいいなと考えています」

 契約解除から半年……。9人の保護者のほとんどが60代と70代です。

 保護者は裁判所の判断を待ちながら子どもたちが安心して暮らせる「居場所」について考えています。

(藤岡あゆみさん)
「龍史の道筋をちゃんとつけてあげたいなというのはすごく思っています。この子の幸せが一番の願いなので」

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