香川県が解体を決めている旧県立体育館について民間の団体が公費を使わずに再生させることを提案しています。設計を手掛けた故・丹下健三さんの長男で建築家の丹下憲孝さんが民間の提案への「期待」を表明しました。
(丹下健三氏の長男・建築家/丹下憲孝さん)
「この建物が新たな命を受けるということになれば、これは素晴らしいことだと思います」
世界的な建築家、丹下健三さんの長男で、TANGE建築都市設計の会長を務める丹下憲孝さん(67)です。
丹下健三さんの代表作の一つ、旧香川県立体育館について、憲孝さんは「当時の最先端の技術と建築美を融合させた画期的な建物」だと語ります。
しかし、耐震性に問題があるとして2014年に閉館し、香川県が約10億円かけて解体することを決めています。
(丹下健三氏の長男・建築家/丹下憲孝さん)
「(香川県は)本当に再活用する道はないのかということで、いろいろ検討してくださった。しかしながら、その当時は再利用の道が見つからなかったということで、当時、私も非常に悲しく思っておりました」
香川県の方針に対し、建築家らで作る「旧香川県立体育館再生委員会」が7月、県から建物と敷地を買い取るなどし、全額自己資金で耐震補強を行ってホテルなどに再生する案を発表しました。香川県と県教委に協議を申し入れています。
ニュースでこの提案を知った丹下憲孝さんは8月1日、再生委員会に感謝を伝え、協力する考えのメッセージを送りました。
憲孝さんは、全国で近代建築の解体が相次ぐ中、「行政と民間が手を取り合って再生が実現すれば全国的なモデルケースになる」と話します。
(丹下健三氏の長男・建築家/丹下憲孝さん)
「経済的にもメリットがあって、建築的にもメリットがあって、残すことに対する皆さんの気持ちが一つになって、そういう形になれば、こんな幸せなことはないと思います」
再生委員会では香川県と県教委に対し、解体工事の入札に向けた手続きをいったん止め、協議に応じるよう求めて署名活動を行っています。3日はJR高松駅前などでチラシを配って署名を呼び掛けました。
(香川県民はーー)
「なかなかあそこまでの建築物って、これからも建てられないし、残ってもらわないとという感じですね」
「うまく活用できる用途を少し時間をかけて探すのはいいと思う。そのための時間はいいと思うけど」
「行政がみんなを動かすんじゃなくてみんなも行政に動きをかけていくというのは、バランスも取れてるしいいと思います」
署名は3日だけで約700人分が集まったほか、オンラインでも募っています。
(旧香川県立体育館再生委員会/永島武昌さん)
「香川県だけではなくて県外であったり海外だったりと、著名人の方からも声をあげていただいていて、予想以上で僕もびっくりしました。(県、県教委と)協議の場というのが生まれるというのが一番の目的、一番望むところです」